[患者さんの相談事例] 2013/05/31[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

母は帯状疱疹の処置が悪かったせいで神経痛が残り、ほぼ寝たきりに。別のクリニックに行っていればと悔しくてなりません。(53歳・女性)

 3年前、当時79歳の母の右胸に帯状疱疹が出て痛がったので、同居していた娘の私は、近くの皮膚科クリニックに母を連れていきました。クリニックでは塗り薬だけが処方されたのですが、言われたとおりに薬を塗っても、なかなかよくなりませんでした。
 それから1ヵ月半後、あまりに症状が改善しないので、大きな病院の皮膚科を受診したところ、新たに別の飲み薬が処方されて、帯状疱疹自体はようやく治まりました。しかし、チクチク刺すような神経痛は残ったままで、3年近く経ったいまも母は苦痛を訴えます。その痛みに対して出された薬を飲むと、副作用なのか、めまいが生じたり、呼吸が苦しくなったりするらしく、薬を飲むことも怖がっています。そのため、ほとんど寝たきりの状態で一日を過ごすようになりました。
 2番目に受診した、大きな病院の皮膚科医は「帯状疱疹の場合、通常は飲み薬と塗り薬を出すんですけれどね…。ご高齢なので、飲み薬はきついと思って避けたのでしょうか」とつぶやくように言っていました。もし、最初にかかったクリニックが飲み薬を出してくれていれば、早くに症状が改善し、いまのような神経痛も生じなかったのではないかと思います。皮膚科を標榜しているクリニックだからだいじょうぶと思って母を連れて行ったのに、悔しくてなりません。最初のクリニックに判断の誤りを問うことはできないのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 1ヵ月半が経過してからでも、飲み薬で帯状疱疹が改善したとすれば、「なぜ最初から飲み薬を出してくれなかったのだろう」と疑問に思われるのは当然だと思います。痛みと、薬への恐怖で寝たきりになってしまったお母さんの姿を見れば、その悔しさもなおさらでしょう。
 大きな病院に転院されたのは発症から1ヵ月半後とのことですが、それまで最初のクリニックには何度受診されたのでしょうか。そのときのクリニックのドクターの対応や判断はどうだったのでしょう? 手をこまねいて何もしなかったのか、努力はしたけれど効果が出なかったのか、それらによっても問題を指摘できるかどうかに違いが出てくるように思います。
 ともかく、何かアプローチをお考えだとすれば、まずは皮膚科クリニックのドクターにその後の経過を伝え、なぜ最初に飲み薬を処方しなかったのか、1ヵ月半の経過のなかでどう判断していたのかなど、確認されてはいかがでしょうか。その結果次第で、クリニックのドクターの非を問うかどうかを考えても遅くはないように思います。

より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 帯状疱疹でかかっていた1ヵ月半の間、症状の改善が見られず、患者側の判断で大きな病院に転院されていました。相談者の話を聞いていると、クリニックのドクターの治療方針が患者側にまったく伝わっていませんでした。説明があったか否かはわかりませんが、なぜ塗り薬の処方のみだったのか、症状の改善がみられないことをどう判断していたのか、不明なままでした。
 電話相談をお聞きしていると、医療者の“当たり前”が患者側には非日常で、前提となる情報や知識に大きな開きがあり、それがコミュニケーションギャップを引き起こしていることが多々あると感じています。判断した“結論”だけではなく、そこに至った“理由”や“根拠”も伝えることが大切だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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