[患者さんの相談事例] 2013/07/26[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

不妊の治療で『高額療養費制度の対象で自己負担は8万円』と言われたのに、何故か支払いが15万円に。納得できません。(33歳・女性)

 私は半年前から婦人科クリニックで不妊治療を受けています。不妊の原因について、さまざまな検査を受けた結果、卵管が狭まっていることが原因の一つと指摘されました。そこで、卵管を拡張する手術を受けることになったのですが、「不妊治療は自費で支払っていただくことが多いのですが、あなたの場合は病気として認められる状態なので、保険適用になります。保険適用だと高額療養費制度の対象になるので、自己負担金は約8万円で済みますよ」と言われ、それならと手術を受けることに同意しました。
 言われたとおり、高額療養費制度の上限額しか請求されない認定証を提出して手術を受けたのですが、結果的に15万円以上の請求をされました。私が「自己負担金は8万円程度と聞いていたのに、おかしいではありませんか?」と言うと、「あなたは上位所得者なので」と一方的に早口で専門的な説明をされました。何だか騙されたような気分になり、「8万円と言って手術を受けさせて、後から倍近い請求をするなんて、詐欺まがいの行為ではないですか」と言ったところ、クリニックの院長が出てきて、「こちらは何一つ間違ったことをしていません、 『詐欺まがいの行為』だなんて失礼なことを受付で声高に言うなら、名誉棄損で訴えますよ!」と返されてしまいました。クリニックの対応に、納得できない気持ちと、許せない気持ちでいっぱいです。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 確かに、「自己負担は約8万円です」と聞かされていて、実際の請求の段階で倍近い請求となれば、不信感を抱かれるのは当然です。ただこれは、クリニックの事前の説明が不十分だったことは否めませんが、クリニックが詐欺まがいなのではなく、高額療養費制度のしくみなのです。
 高額療養費制度における上限額は3種類あり、所得によって「上位所得者」「一般」「非課税世帯」に分けられ、それぞれ限度額が異なっています。「一般」は約8万円(医療費の総額によって加算されますので一定額ではありません)、「上位所得者」は約15万円なのです。さらに、1年間で4回目に高額療養費制度を利用するときは、減額されます。事前にそのような説明があれば、認定証を請求される際に確認できたと思いますので、それがほんとうに残念に思いました。

より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 確かに間違った対応をしているわけではありませんが、少なくとも事前の説明は十分だとは言えないはずです。そうであれば、説明不足を認めたうえで、誠実に対応することが望まれます。正当性ばかりを主張すれば、患者も感情的になり、理解・納得は得られません。
 また、患者のコスト意識も高まってきていることを考えると、医療費の事前の説明も適切におこなう必要性が生じてきています。もう一度、医療機関内で説明のあり方について確認が必要ではないでしょうか。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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