患者相談事例-96「子どもの頃から通う娘を担当医は「大人扱い」してくれません。どうすれば自立した患者として接してもらえますか?」
[患者さんの相談事例] 2013/08/23[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
子どもの頃から通う娘を担当医は「大人扱い」してくれません。どうすれば自立した患者として接してもらえますか?
(46歳・女性)
18歳の娘は、4歳のときに膠原病と診断され、以来ずっと同じ病院に通っています。小さいころからステロイドによる治療を受けてきたのですが、その影響でかなり太っていて、ステロイド性の糖尿病も発症しています。膠原病の症状自体は落ち着いているので、できればステロイド剤の量を減らしてほしいのですが、担当医は「そんな賭けみたいなことは、怖くてできません」とまったく応じてくれません。その担当医は、娘を担当するようになって5年ほど経つのですが、前向きな話をしてくれたことがないのです。
糖尿病については、娘も気にしていて、「ステロイド剤が原因だとしても、自分の努力で少しでもよくなるんだったら」と食事制限をがんばっています。その甲斐あって、糖尿病の検査数値が少しよくなったのですが、担当医は娘の努力を認めようとしません。「ステロイドのせいで太ったって言っているけど、こっそりお菓子食べてるんじゃないの?」と娘が傷つくようなことも平気で言うのです。そのため、最近では娘が病院に行くことを嫌がるようになってしまいました。
娘も高校を卒業する年になり、そろそろ患者としても自立してほしいと思っています。娘が自分の思いや希望を担当医に伝えられるようになるために、何かいい方法はないでしょうか。

娘さんの気持ちになれば、努力を認められないばかりか、からかうようなことを言われて傷つくのも当然だと思います。さらにお話を伺うと病院に膠原病の患者会があるとのこと。だとすれば、担当医以外のドクターが勉強会で話をしたり、相談に乗ってくれたりする機会もあるのではないでしょうか。もし、そういう場があれば、担当医と一対一で向き合うよりは本音が言いやすいでしょうし、同じ病気の仲間と思いを分かち合うこともできます。患者会に出席して、娘さん自身が思いを伝えることも自立の第一歩ではないかと思います。

もしかしたらドクターは、5年に及ぶつきあいの親しさから、冗談のつもりでお菓子のことを言ったのかもしれません。しかし、18歳の患者さんにすれば、我慢して食事制限している努力を踏みにじられた気持ちにもなったでしょう。言い返すこともできず、傷ついてしまったことで、受診への前向きな気持ちが削がれてしまったように感じました。
ドクターがほんの軽い気持ちで言ったことでも、患者が傷つくことは少なくありません。相手の気持ちを考え、デリカシーをもって対応することが大切だと思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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