[患者さんの相談事例] 2013/11/29[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

歯列矯正の詳しい施術内容を教えてくれない上に、治療が原因と思われる症状を訴えてもとりあってくれません。
(31歳・女性)

 30歳になったのを機に、以前から気になっていた歯の矯正治療を受けることに。歯列の状態を診察した歯科医から「この状態では年齢を考えると、力を入れて矯正しないといけないですよ」と言われて、治療が始まりました。
 治療中は麻酔がかかっているので、どのような施術がおこなわれているのかわかりません。時折「いまどのような治療の段階なのですか?」と尋ねたのですが、「矯正治療は難しくて、そもそも歯科医だったら誰でもおこなえるというものでもないのです。そんな難しい説明をして、理解できますか?」と言われてしまい、それ以上聞けないまま日が過ぎて行きました。
 矯正治療が始まって1年ぐらい経ったころから、唾液や涙が出にくくなり、顎が歪んできたように感じました。それを歯科医に伝えると、「矯正治療と関係ないでしょう」で済まされました。けれども、どんどん症状が悪化し、自律神経障害も出始めたので、「矯正治療が進むにつれて症状が悪化しています。どんな矯正治療なのか、きちんと説明してください」と意を決して頼みました。すると、「そんなに私の治療にケチをつけたいのなら、やめればいいじゃないか。二度と来ないでほしい」と怒鳴られてしまいました。
 私はどうしても納得がいかなくて、別の矯正歯科医を訪ねました。すると、そこで初めて“インプラントアンカー”という矯正治療をされていたことがわかったのです。インプラントアンカーとは、人工歯根であるインプラントを埋め込んで根を固定させ、歯を動かすという矯正方法なんだそうです。そんな大がかりな治療になっていたとは知らず、驚いてしまいました。一度埋め込んだものを外すのも難しいらしく、私はどうすればいいのかわかりません。ともかく、いま出ている症状を少しでも軽減させることを転院先の歯科医にお願いしています。前払いで50万円ほど払った医療費も、戻ってこないのかと思うと、悔しくてなりません。こんなことになってしまい、私はこれからどうすればいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 人工的な歯根であるインプラントを埋め込むのに、それすら説明がなかったというのは、あまりにも説明不足が過ぎると思います。専門家から高圧的に言われると、それ以上反論できなくて、ズルズルと治療が1年以上にわたって進められてしまったのですね。
 ともかく、いまは辛い症状を少しでも改善することが先決です。別の歯科医にかかっておられるということですが、今回は一つひとつの治療に対して説明を求め、納得のうえで治療を受けるようにしてください。また、ある程度治療が一段落した段階で、前の矯正歯科医に何を求めるのか、冷静に考えてはどうでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 難しく、人工物を埋め込むという大がかりな治療方法だからこそ、きちんと患者が理解、納得できるまで説明が必要なのではないでしょうか。ほかの歯科医に診てもらって、初めて人工歯根が埋め込んであったとわかったなんて、いまの時代では考えられないことです。
 治療が進むに伴って生じた症状について、治療との関係を問われて感情的になったのかもしれませんが、せめて患者が今後話し合いを求めてきたときには、冷静に誠実に向き合ってもらいたいと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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