[患者さんの相談事例] 2014/03/14[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

希望する他院の医師宛ての紹介状を書いてもらったのに、担当医も執刀医も別の医師。術後の経過も思わしくなく、不安でいっぱいです。(73歳・女性)

 私は以前から膝が悪く、変形性膝関節症と診断されています。かかっていた整形外科クリニックで「そろそろ人工膝関節を入れる手術を受けたほうがいい」と言われてから2年近く経っていたのですが、手術となるとなかなか決心がつかず、悩んでいました。
 そんなとき、市民公開講座で変形性膝関節症に関する講演会があると知り、勉強して手術を受けるかどうかを決めようと思い、参加してみました。講演は市民病院の整形外科の部長で、とてもわかりやすく、現在の人工膝関節の手術についてよく理解できました。それに、人柄にも好感を持てました。そこで私はぜひこの先生に手術をしてもらいたいと考え、整形外科クリニックのドクターに市民病院の整形外科部長宛の紹介状を書いてもらいました。
 早速、紹介状を持って市民病院を受診したのですが、担当になったのは部長ではありませんでした。外来の看護師さんに「部長宛の紹介状を持ってきたので、部長の先生に診てもらいたいのですが…」と相談してみました。すると「あなたの担当になった先生は、部長より上の先生で、副院長なんですよ。副院長に診てほしいと望む患者さんはたくさんいらっしゃるので、むしろよかったですね」と言われてしまい、それ以上お願いすることができなくなってしまいました。
 そのまま市民病院で手術を受けることになり入院したのですが、手術前日に提出を求められた同意書には、執刀医として更に別のドクターの名前が記載されていたのです。看護師さんに「執刀はこのドクターではなく、外来で担当してもらった副院長か、本当はできれば部長になってもらいたい」とお願いしました。すると、2年目の研修医だという若いドクターが病室にやってきて、「もう前日です。頼むからサインしてください」と懇願されたのです。そこまで言われると、仕方なく同意せざるを得ませんでした。
 後から、手術は副院長も部長も同席したと聞かされましたが、麻酔がかかっていた私には確認する術はありません。ただ、術後は手術した部分が変色するほどに腫れあがって痛みがひどく、1年経ったいまも痛みが治まりません。私は経験のないドクターがおこなった手術の失敗だと思っています。だから何を聞いても言い訳されるだけだと思って、私からは何も質問していません。でも、今後のことを考えると、歩けなくなるのではないかと不安でいっぱいです。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 せっかく部長の講演を聴き、「このドクターに診てもらおう」と思って紹介状を持参したのに、目的がかなわなくてがっかりされたことでしょう。外来と入院後では担当するドクターが異なったり、紹介状を持参しても別のドクターになったりと、病院のシステムで希望がかなわない場合もありますので、難しいところだと思います。
 また、手術は執刀医一人でおこなうものではなく、チーム医療です。経験の浅いドクターが執刀する場合は、指導的立場のドクターが一緒に手術をすることが多いようです。また、長時間にわたる手術であれば、スタッフが途中で交代することもあります。
 ただ、術後の腫れや痛みについては、もう少し詳しい説明を求められたほうがいいのではないでしょうか。ドクターたちがいまも続く痛みの原因をどのように考えているのか、人工関節の状態はどうなのか、今後痛みが続くようならどんな対処方法があるのかなど、具体的な説明を求めることがまずは大切ではないかと思います。

より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 担当医や執刀医などは、どのように決まるシステムなのか。手術のときはどのようなメンバーがどのような役割分担でおこなっているのか。そのような事情がわからないと、「きっとこうに違いない」と疑心暗鬼に陥ってしまう患者さんは少なからずいらっしゃいます。
それに、研修医は同意書にサインしてもらうことが至上命令だったのでしょうけれど、“懇願”では患者の納得にはつながらないと思います。もう少し患者の気持ちに寄り添い、納得できる説明が必要ではないでしょうか。
 また術後の状態が思わしくない患者に対しては、考えられる原因や対処方法、今後の見通しなどについて積極的に伝える姿勢が求められると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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