[患者さんの相談事例] 2014/06/06[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

整骨院にかかっていますが改善しません。20回分の回数券を購入しており、払い戻してもらいたいのですが。
(47歳・男性)

 半年ぐらい前から右肩と右腕に痛みが生じ、日を追うごとに痛みがひどくなってきました。仕事は会社で経理に携わっているのですが、パソコンに長く向き合うことも苦痛で、仕事の能率が落ちて困っていました。そこで1か月前、近くの整形外科クリニックで診てもらったのですが、X線写真を撮って「異常はありません。四十肩でしょう」と言われ、痛み止めの湿布が出されただけでした。
 湿布を貼ると、多少痛みがマシになりますが、改善にまでは至りません。どうしようかと思っていたところ、自宅のポストに整骨院のチラシが入っていました。どうやら新しくできた整骨院らしく、からだに痛みや歪みがある場合の無料体験施術が受けられると書いてあったので、「試しに」と思って行ってみたのです。施術を受けたところ、肩と腕の痛みが和らいだので、「これなら続ければよくなるんじゃないか」と思いました。そこで、整骨院で勧められるままに費用が30%引きになる20回分の回数券を購入し、通い始めました。
 ところが、2回目に行った際、歪みを取る整体を受けたあと、肩の痛みがひどくなってしまったのです。翌日、更に症状が悪化したため、不安になって、整骨院に行き「昨日整体を受けた後から痛みが出て困っています。この先、施術を受けるのはやめるので、残っている回数券18回分の払い戻しをお願いします」と言いました。すると、「痛みは一時的なものだと思いますから、安心してください。この施術は20回継続してはじめて効果が表れるものなんです。だから20回分の回数券にしています。少し痛みが増したぐらいでやめずに、通い続けてください」と払い戻しに応じてくれませんでした。
 納得いかず、消費者センターで相談したのですが、「払い戻しを求めるのは難しい」と言われてしまいました。また、整骨院の人が言うように、継続すれば効果があがるものなのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 整骨院で施術を受ける場合、骨折、脱臼、打撲、捻挫は保険の対象になり、柔道整復師が患者に代わって残りの費用を保険者に請求する「受領委任」という方法が認められています。しかし、肩こりや筋肉疲労などは保険適用にはなりません。あなたの場合も四十肩なので保険適用ではなく、全額自己負担だったのでしょう。
 通常、回数券とは、まとめて複数回分を購入することで割安になるサービスなので、途中まで使って残りを払い戻すことはできないと思います。
 整骨院でおこなわれることは施術であって、“治療”とは異なり、効果も個人差があると思います。治療であっても不確実性と限界が伴い、“必ず”治る病気のほうが少ないのが現状です。20回分の回数券を購入する段階で、冷静な判断が求められると思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 全額自費ということであれば、それぞれの施設で決めた費用の請求ができるのは当然だと思います。ただ、回数券というサービスの発想が整骨院でもなされていることに、私としては少々違和感を覚えましたが・・・。
 治療行為ではないとはいえ、直接、身体に影響を与える施術です。「乱暴に整体をされて、症状が悪化した」という相談も少なくありません。20回継続すれば効果が出るというのも、その根拠をきちんと説明することが大切だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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