患者相談事例-116「子どもの同級生の母親から、教えたはずのない夫の病気について尋かれました。夫が通う病院の看護師なのだそうですが…」
[患者さんの相談事例] 2014/06/20[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
子どもの同級生の母親から、教えたはずのない夫の病気について尋かれました。夫が通う病院の看護師なのだそうですが…。(43歳・女性)
45歳の夫は、数年前から乾癬という慢性の皮膚の病気で、ある病院の皮膚科に通院しています。あるとき、子どもの同級生の母親から、「最近、ご主人の症状はどう?」と話しかけられました。その人に夫の病気のことなど言ったことがないので、何を聞かれているのかわかりませんでした。ただ、その人が看護師をしていると聞いたことはあったので、「夫が通院していることをご存知なんですか?」と聞くと、夫が通っている病院に看護師として勤務しているという返事でした。私は驚いて、「たしかに夫はその病院の皮膚科にかかっていますが、皮膚科外来の看護師さんなんですか?」と聞くと、「私は外科病棟に勤めているんだけど、患者さんを皮膚科に連れて行ったときに外来カルテでご主人の名前を見つけたから、診察室をのぞいてみたことがあるのよ。あのときは症状が悪化していたから、その後だいじょうぶかしらと気になっていたの」と言われました。
その人は親切心のつもりかもしれませんが、何やら土足で家の中まで入りこまれたようで、私はとても不快でした。夫が通っている病院で働いているなんてまったく知らなかったので、病気という非常にプライベートなことを軽く話しかけられたこと自体、驚きました。その病院に勤務しているからといって、知っている人の名前を見つけたときに、興味本位でカルテを読むことが許されるのでしょうか。そのうえ、診察室をこっそりのぞいて、どんな症状なのか確認するなんて、どういう神経をしているのかと疑いました。
それに、夫はプライドが高い人なので、カルテや診察室をのぞかれていたことがわかったら、とても傷つくと思います。この先、夫が受診しているときにまた会う機会があるのではと思うと不安で仕方ありません。また、あの調子だと、他人にも噂話のように話しているのではと疑心暗鬼になっています。

おっしゃるように、これは看護師の倫理的な姿勢が問われる問題だと思います。突然、話しかけられたときのお気持ちを思うと、ほんとうに不快だったこととお察しします。子どもさんの同級生の母親ということで、今後のおつきあいの関係性もあって難しいと思いますが、もし今後も同じようなことを話しかけられるようであれば、「このことは、あまり触れてほしくない」と意思表示されてはどうでしょうか。あるいは「夫は他人に知られたくない症状と言っているので、そっとしておいてもらえますか」と伝えることも必要かと思います。

知り合いの名前を見つけたからとカルテや診察室をのぞくというのは言語道断です。医療者としての基本的な倫理感が問われる問題ではないでしょうか。例えば、皮膚科外来でも、外科病棟の看護師がカルテを勝手に見て、診察室をのぞくようなことがあれば、何のためかを確認し、場合によってはただす必要のあることではないかと思います。これからますますプライバシーや個人情報について厳しい目が向けられる時代になると思います。どのようなことが律しないといけないことなのか、改めて医療現場での見直しが求められるのではないでしょうか。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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