患者相談事例-136「有名人も通院中という歯科医にかかったのですが、対応も治療経過も期待したほど良くありません」
[患者さんの相談事例] 2015/05/22[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
有名人も通院中という歯科医にかかったのですが、対応も治療経過も期待したほど良くありません。(46歳・男性)
私は若い頃から歯が弱く、しょっちゅう歯科にかかっていました。なかなか良い歯科医と巡り合えなかったので、遠方でもいいからしっかりと治療してもらえる歯科医院を探そうと思い、1年ぐらい前にインターネットでさまざまな歯科医院のホームページを検索してみました。すると、片道2時間ほどかかるのですが、有名人が数多く通院しているとホームページに紹介されていた歯科医院を見つけ、「顔の印象を決める歯を重要視する有名人がかかっているなら間違いないだろう」と考え、そこにかかることにしました。
その歯科医院は、院内に複数の学会の専門医の認定証が飾られています。歯科でこんな領域があるのかと驚くほど、聞いたことがない領域の専門医であるとわかり、私はすっかり安心してしまいました。
その後の治療を続け、いまは奥歯の1本が部分入れ歯となり、以前差し歯だった前歯は抜歯して仮歯が入っています。しかし、ここまでくるのにとても手間取ったばかりか、噛み合わせが全体的にしっくりこないのです。私がそれを訴えると、歯科医はインプラントの方向に話を進めるばかりで、なぜ順調に治療が進まないかについての説明はしようとしません。何だか騙された気分なのですが。

歯科は医科以上に診療所・病院選びの情報が少なく、難しいという声がCOMLにも届きます。最近ではホームページを開設している歯科医院も多いので、その情報に頼ることが増えてきていると思います。ただ、ホームページのなかには誇大広告をしたり、誘導したりする情報もあるので、注意が必要です。
医療法では、ホームページ上の情報は“広告”と見なしていません。ただ、上記のような問題のホームページも少なくないため、厚生労働省では「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」を2012年にまとめ、発表しています。そのなかに「著名人との関連性を強調する等、国民・患者に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現は、国民・患者を不当に誘引するおそれがあることから、ホームページに掲載すべきでない」と明確に定められているのです。そのため、ガイドラインを逸脱した内容のホームページがある場合は、保健所にまず連絡や相談をしてほしいと厚生労働省では言っています。
さらに、歯科の場合、広告できる専門医は5つに限られていて、「口腔外科専門医」「歯周病専門医」「歯科麻酔専門医」「小児歯科専門医」「歯科放射線専門医」だけです。大小合わせると歯科における学会は100を超えると言われ、それぞれ独自の専門医や認定医を認めている学会もあるようです。しかし、基準がさまざまなので、上記5つしか公的には認められていないのです。

ホームページの情報は医療法上“広告”に該当していないとはいえ、2012年からガイドラインが示されています。また、院内に飾っている専門医・認定医も本来は、認められている5領域に限らなければならないはず。患者への情報提供は適切におこなっていただきたいものです。もちろん、誠実に対応し、丁寧に説明する姿勢が不可欠なことは言うまでもありません。
※写真はイメージです
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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