[患者さんの相談事例] 2015/07/17[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

白内障手術で希望と違うレンズを入れられてしまいました。費用は全額返金すると言われましたが…。(67歳・男性)

 白内障と診断され、1年前から手術を勧められていたのですが、なかなか決心がつきませんでした。しかし、知人から「手術を受けるなら少しでも若いうちのほうがいいよ」と言われて、それもそうだと思い、ようやく手術を受ける決心をしました。現役時代は、休みの日にしかできなかったカメラ撮影の趣味を、定年退職を機に本格的に始めた直後にわかった白内障なので、カメラ撮影に影響を及ぼさない状態にしたいとドクターに希望を伝えました。すると、「保険は効きませんが、眼鏡で言うと遠近両用にあたる多焦点レンズというのを入れることができます」と言われ、眼鏡をかけずに遠くも近くも見えたら便利なので、多焦点レンズを入れてもらうことにしました。
 先日、まずは右目の日帰り手術を受けました。その日は他にも白内障の手術を受ける患者さんがいて、待合室で話をしていたのですが、私以外は単焦点レンズの方ばかりでした。「私1人が多焦点レンズだということ、把握してもらっているだろうか」とふと不安がよぎったのですが、ドクターに確認するのは失礼な気がして、結局、確認しないままに手術を受けました。
 しかし、手術後初めての受診の際に、誤って単焦点レンズを入れてしまったことが判明したのです。ドクターは「誠に申し訳ない。レンズを入れ換えることは可能ですが、傷を大きくしないといけないのです。現在、視力が1.5も出ているので、リスクを考えるといまのままにしておくほうが無難です」と言われました。確かに私も、リスクを負っての再手術はできれば避けたいと思いました。でも、すぐに返事ができないでいると、「もちろん、いただいた費用はすべて返金致します。レンズ代だけではなく、手術代もお返ししますから、お得ですよ」と言うのです。私は「お得ですよ」の一言が引っかかり、逆に腹が立ってきました。息子に話すと、「手術代を返金するだけでお茶を濁そうなんて、とんでもない。慰謝料も請求すべきではないか」と言います。そこまで請求して構わないのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 レンズを選ぶように言われて、明確に意思表示されたわけですから、手術前にドクターから確認があるのが当然だと思います。明らかな間違いなので、ドクターから費用の返還がおこなわれるのは当然ではないかと思いました。
 ただ、慰謝料については、「必ず請求すべき」とも「請求すれば支払うのが当然」とも言えるものではありません。もし患者さん側が希望するなら、その想いをドクターに伝え交渉する必要が出てきます。示談交渉はお互いの了解で成立するものですので、まずはご自身がどうしたいのかじっくり考えてみられてはいかがでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 謝罪するしかない明確なミスだと思います。非を認めて謝罪し、費用の返還を申し出たまでは良かったのだと思いますが、「お得ですよ」は患者さんの気持ちを逆撫でする以外の何ものでもない発言だと思います。ミスをされたのに「結果費用がかからず1.5の視力が得られたんだから、ラッキーじゃないか」という開き直りにも聞こえます。このようなときの一言は逆に不信感を煽ることにもなりかねないので、相手の気持ちを考えながら言葉に気をつける必要があると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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