患者相談事例-148「カルテ開示請求に応じない歯科医院。弁護士以外で働きかけてくれるところはないの?」
[患者さんの相談事例] 2015/11/13[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
カルテ開示請求に応じない歯科医院。弁護士以外で働きかけてくれるところはないの?(37歳・男性)
私は歯並びがガタガタしている“乱ぐい歯”と言われ、矯正歯科医院で治療を受けていました。そこの歯科医院は5人ぐらいの歯科医が勤務しているのですが、治療を受けて約1年が経った頃、突然、担当していた歯科医が医院を辞めてしまいました。
そこで、別の歯科医が担当になったのですが、治療を受けているうちに噛み合わせに不具合が生じるようになったのです。何度か症状を伝えても、歯科医は「そんなはずはないのですが・・・」「今は治療の途中なので、まだ変化しますから・・・」などと煮え切らない返事しか返ってきません。
そこで、あるとき「このままでは食事をするにも、話をするにも支障を来すので、きちんと治してください」と申し出ました。すると、歯科医は奥に引き込んだかと思うと、代わりにオーナーと称する人が出てきて「治療が気に入らなくて訴えたいなら、どうぞ裁判でも何でも訴えてください。こちらには弁護士がついていますから、いつでも受けて立ちますよ」と言われたのです。いきなりそのような対応をされて、腹が立って、席を蹴って帰ろうかと思いましたが、高い治療費を前払いしています。それを思い出して、寸でのところで思いとどまり、その場は黙って引き下がりました。そして、途中から担当してくれている歯科医に「できる限りの治療をしてほしい」と頼んで治療を継続しました。
結局、歯並びが十分整わないまま、「あなたの場合、顎の大きさの関係で、これ以上の治療は無理です」と言われ、治療完了の書類にサインを求められました。私は「もうこれ以上の治療は無理なんだ」と受け止め、サインをしました。
ところが、その後、歯に痛みが生じたため、これまでの治療歴を考えて複雑な治療をおこなっている大学病院がいいと思って受診したところ、「この歯並びは矯正可能で、きちんと治せますよ」と明確に言われたのです。
そこで、これまでの治療の経緯を大学病院のドクターに見てもらおうと思い、以前通っていた矯正歯科医院にカルテ開示請求をしました。しかし、カルテ開示には応じてくれず、電話するとすぐに切られてしまい、手紙を出しても「なしのつぶて」です。弁護士をお願いするだけの費用もないので、誰か代わりに直接歯科矯正医院に働きかけをしてくれる人を探しているのですが・・・。

最後まで矯正することは不可能と諦めていた歯並びが、まだ矯正可能と言われれば、なぜ前の歯科医院と見解が異なるのかと確認したくなるのは当然と思います。最近では、医科においてカルテ開示請求に応じてくれないという苦情はほとんど聞かれなくなりましたが、歯科ではまだ同様の相談が届きます。個人情報保護法に則って開示を要望することはできますが、応じない場合の法的な罰則は現在のところないのです。
しかし、誰かが代理で交渉するとなると、やはりそれができるのは弁護士ぐらいになります。第三者的に代わりに交渉する機関というのはないのが現状なのです。どこまで費用やエネルギーを割いて問題にするかを考え、方法を選ぶことが大切です。

治療による不具合を伝えて治してほしいと希望する患者に、いきなり弁護士がついているから、裁判に訴えろと喧嘩腰の対応をするのはいかがなものかと思います。それまでにコミュニケーションギャップやトラブルがあったとしても、やはり冷静に患者と向き合うことが基本だと思います。
また、カルテ開示にしても、拒否すれば関係性は悪化する一方です。やはり透明性を担保し、真摯に向き合う姿勢が医療機関には求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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