[患者さんの相談事例] 2016/01/08[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

そのつもりはなかったのに保険外の歯科治療を承諾したことに。断るにもキャンセル料が発生するため悩んでいます。(64歳・男性)

 2週間ぐらい前に、上の前歯の詰め物が取れてしまいました。約40年来、かかりつけにしていた歯科医院があったので、5年ぶりぐらいに行きました。すると、半年前に院長が高齢のため閉院していたことがわかったのです。そこで、インターネットで調べて、近くの歯科医院を受診しました。
 診察した歯科医から、「これは詰め直すことはできないので、差し歯を作ることになります。支柱になる材料は保険と保険外の自費のどちらかを選んでいただきます。自費の材料のほうが、からだにはいいですよ」と言われたので、「それはそうなんでしょうね」と返事しました。しかし、歯科医は同時に3人ぐらいの患者を治療しているらしく、その話の途中で歯科衛生士から呼ばれて、隣の治療台に行ってしまったので、話はそこで途切れてしまいました。その後も慌ただしく治療台を行き交う歯科医を見ていると、それ以上説明を求めることができず帰ってきました。
 以前、歯のかぶせに保険と保険外のものがあると聞いたことはありましたが、支柱になるものまで違いがあるとは知りませんでした。そこで帰宅後、知人に相談してみました。知人は「見えないところまで保険外の材料を使うなんて、からだにいいという理由をつけて高い治療を勧めようとしているだけなんじゃないか」と言うので、たしかにそうかもしれないと考え、今回は保険でできる支柱をお願いしようと決心しました。
 2回目の受診のときに希望を伝えようと思っていたのですが、前回以上に歯科医は忙しそうで、言いそびれてしまいました。すると、会計の段階で渡された用紙に、支柱は保険外で22,000円とあり、もしキャンセルすればその50%を請求すると書いてあったのです。キャンセル料のことなんて聞いていないし、まだ希望を伝えていないと受付の人に言うと、奥にいる歯科医に確認に行き、「最初に説明したときに同意されたのでこのような契約にしたそうです」と言われました。私は「からだにいい」という歯科医に対して、「それはそうなんでしょうね」と相槌レベルで返しただけで、決して同意したわけではありません。しかし強く言うこともできず、「せめてかぶせるものは保険でお願いしたい」と言うと、また奥に確認に行った受付の人から「どうしてもとおっしゃるなら保険のかぶせにしますけど、2年でダメになりますよ、とのことです」と言われてしまいました。キャンセル料についても納得がいかないまま、どうしたらいいのか悩んでいるのですが。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 治療を受けているときは口を開けているので会話をしにくいし、それ以外は慌ただしく別の患者の治療に歯科医が渡り歩いているとすれば、質問や確認をしてコミュニケーションを取ることが難しくなると思います。そのために生じてしまった思い違いなのでしょう。
 ただ、まだ具体的に治療が始まったわけではないので、話し合いの余地はある段階だと思います。改めて説明の時間を取ってほしいと歯科医に頼み、最初の説明をどのように受け止め、どうしてほしいと考えたのかを伝えたうえで相談してはどうでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 明らかにコミュニケーション不足による行き違いです。お互いに「こうなんだろう」と思ったことを確認しないままだったために生じたギャップだと感じました。
 歯科の場合、同時に複数の患者の治療をおこなうことはあると思いますが、やはり大切な話はきちんと向き合って、時間を割いておこなう必要があると思います。特に歯科は自費による治療も多く、医療費をめぐってのトラブルが発生しがちです。丁寧な対応が求められると思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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