[患者さんの相談事例] 2016/04/01[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

肺に小さなカゲが見つかり、経過観察に。不安の余り、別の医院をいくつか受診したのですが…。(67歳・男性)

 3か月前、咳が止まらないのでかかりつけ医を受診し、そこからCT検査のできる病院を紹介してもらって検査を受けました。その結果、小さなカゲがあって、腫瘍マーカーの値もやや高いけれど、肺がんと診断するには小さすぎるので経過観察と言われました。私は不安で、もう少し大きな規模の病院を受診してみたのですが、まったく同じことを言われました。
 つぎの受診は3か月先と言われ、私は心配でならないので、かなり遠方だったのですが、肺がんの権威で、現在は開業しているドクターを訪ね、サードオピニオンを受けてみました。すると「前がん状態かもしれないけれど、両方の病院で言われたように、いまは様子を見るしかないですよ。定期的に検査を受けることが大切です」と丁寧に説明してくださいました。そして、食事療養についてもアドバイスしてくれたのです。私はこのドクターが不安な患者の気持ちに寄り添ってくれて、とても丁寧な対応をしてくれたことに満足し、遠くまで来た甲斐があるとホッとして、不安も軽減しました。
 ただ、その後、どうしても3か月が待てず、今度は近くで評判がいいと聞いた内科クリニックを受診し、腫瘍マーカーを調べてもらうことにしました。その際、食事療養の効果も知りたかったので、コレステロールと中性脂肪についても調べてほしいと頼みました。するとドクターが突然怒り出し、「それらの検査がなぜ必要なのか、説明してみなさい。がんと診断されたわけじゃないのに、騒ぎすぎなんですよ。ちょっとかじったぐらいの医学知識を振りかざすんじゃない!あなたのような患者を愚かな患者と言うんだ!」と罵倒されてしまいました。私は頭に来て、それから数日経ちますが、いまだに怒りが収まりません。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 不安な気持ちを抱え、何とか現状を知りたいと望む患者さんに、いきなり怒り出して罵倒するというのは、ドクターの対応として大人げないと思います。
 恐らくこれまでの経過をお伝えになったのだとしたら、経過観察が必要と言われているのに、それを待てずドクターショッピングしている患者、自分の安心のために検査内容を指示する患者と受け止められてしまったのかもしれません。確かに、同じ症状で何か所も受診するというのは、保険診療上も問題視されますので、ある程度1か所に絞って受診されたほうがいいと思います。ただ、それらについても、本来は冷静に患者に説明すべきであることは間違いありませんから、ドクターの暴言は許されるべきではないと思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 ドクターから見れば、何か所も医療機関をショッピングし、経過観察が待てない患者と映ったのでしょうか。確かに、1つの症状で何か所も受診するというのは、問題があると思います。ただ、たとえそうであっても、頭ごなしに怒鳴るという行為はいかがなものでしょうか。患者のなかには、不安で3か月という期間が待てない方もやはりいます。それだけに、同じことを伝えるにも、やはり冷静に、患者が理解できるようなアプローチが大切ではないかと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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