[患者さんの相談事例] 2016/06/17[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので 、実際にはもっと実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

妹と同じ日に手術を受けたく、手術日をずらして欲しいと電話したのですが…。(81歳・女性)

 私は白内障で、昨年左眼の手術を受けました。今回は同じ眼科クリニックで、右眼の日帰り手術を受ける予定になっています。4日後に最終的な検査の予約が入っており、10日後が手術の予定日です。じつは、76歳の妹も白内障で、同じクリニックで手術を受ける予定で、いつも一緒に通院しています。日帰り手術も同じ日に受けようと思っていました。ところが、昨日妹と話をしていて、4日後の検査予約は入っているけれど、手術日がまだ決まっていないことがわかりました。妹は軽い眼底出血があったため、再度検査してから手術日を決めると言われていたようなのです。

 そこで昨日、私は慌てて眼科クリニックに電話をかけ、電話に出た看護師に「妹と同じ日に手術を受けたいのです。私の手術日を遅らせてもいいから、同じ手術日にしてもらえませんか」と頼みました。すると、看護師は明らかに不機嫌な声になり、「そんなこと、無理だと思いますけどね。一応、先生に確認しますけど、いま診察中だから少し待ってもらえますか」と言って長い時間電話を保留されました。そして、再び同じ看護師が電話に出て、「先生は絶対に同じ日にできないと言っています。何なら手術自体、もうやめますか?」と言われたのです。

 まさかそんなことになると思っていなかった私は慌ててしまい、「手術は受けます。そのまま予定通りでお願いします」とだけ言って電話を切りました。あとから、動揺してきちんと謝りもしなかったと気づき、何ということをしてしまったのかと気になって気になって、気分がどんどん落ち込んでいきました。そのせいか、夜には血圧の上が186にまで上昇し、夜中3時まで眠れませんでした。ようやく眠れたと思ったら5時ごろに目が覚めてしまいました。

 じつは、妹は軽い認知症なのか、よく道を間違えて迷子になります。でも本人に認知症なんて言うときっと傷つくので、一度も妹にそのような指摘をしたことがありません。ただ心配なので、一緒に受診して私が付き添っています。眼科クリニックでは、妹が軽い認知症だなどと伝えたことはありませんし、妹に直接言われたら困るので、伝えるつもりもありません。だから、なぜ同じ手術日にしてほしいかの理由は言っていません。

 以前、その眼科クリニックでは両眼の点眼薬を出してもらわないといけなかったのに、片眼分しか出なかったことがあり、私が誤りを指摘しました。そのときは丁寧に謝罪されたのですが、もしかしてそのときのことが先生や看護師の気持ちのなかでくすぶっていて、今回のような対応をされたのでしょうか。私も妹も夫を早くに亡くしていて、娘たちは遠く離れて暮らしているので、姉妹で支え合っていこうとこれまで努力してきました。それなのに、このようなことになり、どうしたらいいのかわからず、戸惑うばかりです。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 同じ手術日にしてほしい理由を伝えなかったことで、もしかしたら電話に出た看護師はあなたの単なるわがままと受け止めてしまったのかもしれません。そのため、「患者さんがこんなわがままな電話をかけてきたんです」というニュアンスでドクターに伝えたとしたら、ドクターもわがままな患者としか受け止めなかったのかもしれません。
 また、クリニックでの日帰り手術なので、手術は短時間でも、その前の準備と、終わってからの患者さんの容態確認などを入れると時間を要するため、1日に1人の手術と限定している可能性もあります。それだけに、なぜ同じ日にできないかの理由を確認することも大切です。
 また、日帰り手術の場合は帰宅してからのセルフケアが大切なので、もし軽い認知症があるのだとしたら、ドクターも説明内容に工夫を凝らす必要が生じるかもしれません。やはり妹さんの軽い認知症のことは眼科クリニックに伝える方がいいように思います。ただ、次回の検査日に伝えることは妹さんの前で話すことになりますから、同じ日にしてほしいと頼んだ理由は、電話であらかじめ伝えてはどうでしょうか。前回のように診察時間内にかけるのではなく、診察が始まる15~20分前に電話をかけ、なぜ同じ手術日にしてほしいと頼んだのか理由を伝え、そのうえで同じ日にできない理由も確認してみましょう。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 いきなり電話で、「妹と同じ日に手術を受けたい」と依頼されれば、「何とわがままな」と受け止めてしまったのかもしれません。まして、忙しい診察時間内ならなおさらでしょう。しかし、やはり何か希望してくるからには、それなりの理由があるものです。
 お互いに結論だけ伝え合って、理由がまったく理解できていないところにコミュニケーションギャップが生じています。このようなことは医療現場で起こりがちです。何か患者が言ってきた場合でも、その思いをまずは受け止め、背景まで視野に入れて確認することが必要です。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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