患者相談事例-169「検査入院で胃がんが判明したものの、一方的に治療方針を決められ容態が急変。適切な治療を受けていたらと納得できません」
[患者さんの相談事例] 2016/09/09[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので 、実際にはもっと実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
検査入院で胃がんが判明したものの、一方的に治療方針を決められ容態が急変。適切な治療を受けていたらと納得できません。(56歳・男性)
52歳の妹は脳性麻痺で身体障害者の認定を受けていました。約20年前から貧血の症状で、近くのクリニックに通院していて、肺炎を起こしたり、骨折したときには、何度か輸血を受けたこともあります。
その妹が4か月ほど前から食事が喉を通りにくくなり、1回の食事に2時間近く要するようになりました。クリニックを受診すると、「また貧血がひどくなっているのかもしれない。一度、大学病院で詳しい検査を受けたほうがいいと思います」と言われ、紹介状を書いてくださいました。
そこで、大学病院を受診したところ、腹水が溜まっていることがわかり、肝臓や腎臓の数値も悪く、胃カメラ検査で胃がんの疑いがあることもわかりました。そのため、精密検査を受けるために入院となったのです。
その結果、胃がんと肝硬変と診断されました。手術はできないので、中心静脈栄養で栄養補給をすると一方的に言われました。そして、腹水の治療もできないまま、全身がむくみ、2か月前に急変して亡くなってしまったのです。
入院中、担当医からはほとんど説明がなく、中心静脈栄養についても、家族として考えさせてほしいと申し出たにもかかわらず、翌朝早朝にドクターから電話がかかってきて、「今日中に同意書にサインをしてください」と強引に提出を求められました。
検査目的で入院したのに、病気がわかったあとも適切な治療がなされなかったから急変したのではないかと思っています。大学病院の相談室にそのことを伝えたら、先日「詳しい説明をするので来てください」と言われました。ほんとうに、きちんと説明してもらえるものでしょうか。

確かに診断のための検査目的の入院なのに、何の治療も受けないままに亡くなられたというのはご納得いかないことだと思います。検査の結果が出た段階や中心静脈栄養の選択の段階で詳しい説明があってしかるべきだと思いますが、途中での詳しい説明がなかったことも、いまの不信感につながっているように感じます。
その気持ちを相談室でお伝えになったことで、病院側もきちんと説明をしていないことを反省して、このたびの連絡だったのかもしれません。まずは説明を受け、わからないことは率直に質問して、どのようなところに納得がいかない気持ちになったのかをお伝えになってはどうでしょうか。その結果、更に納得いかないことが出てきた場合は、改めてご連絡ください。ご一緒に考えさせていただきます。

忙しい現場のなかで、流れ作業のような対応になってしまったのでしょうか。もし患者さんの状態から考えて、中心静脈栄養がベストだと思ったとしても、きちんと丁寧に説明をおこない、家族の疑問や不安に応えたうえで同意を得ることが大切だと思います。
また、患者さんが亡くなられた後の話し合いについては、病院側から一方的に説明するのではなく、遺族の疑問や想いにしっかりと耳を傾け、真摯に対応することが求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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