患者相談事例-171「母のいる特養のスタッフとコミュニケーションが取れず困っています」
[患者さんの相談事例] 2016/10/07[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので 、実際にはもっと実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
母のいる特養のスタッフとコミュニケーションが取れず困っています。(55歳・女性)
85歳の母は、70歳代後半から認知症が進み、身体機能も低下してきました。私(娘)たち夫婦と同居していたのですが、共働きで十分な介護ができないため、特別養護老人ホーム(以下、特養)の入所を希望しました。かなり待機期間が長かったのですが、3年前にようやく入所することができました。
入所した当時は、おぼつかない足取りながら、まだ自分で歩くことができていました。ところが、入所して間もなく、夜トイレに立ったときに転倒したことをきっかけに足を痛めて歩けなくなり、同時にオムツ状態になってしまったのです。
最近では歯茎がやせてきたのか、入れ歯が合わなくなり、食事は刻み食になりました。先日、肺炎を起こしたと連絡があり、特養に行ったところ、スタッフから「誤嚥性肺炎ではないかとドクターから聞いています」と言われました。そこで、非常勤の特養のドクターがいる時間帯を聞いて再び特養を訪ね、「刻み食が誤嚥性肺炎の原因なのだとしたら、とろみ食に代えていただけませんか?」と頼んでみたのです。すると、「誰が誤嚥性肺炎なんて言ったんですか? お母さんは気管支炎ですよ。とろみ食は栄養価が低いから、ダメ」と言われました。肺炎ではなく気管支炎と言われたことは初耳だったので、さらに質問をしようとしたところ、「どうしてもとろみ食を希望するなら、うちでは対応できないから、気に入らないなら別の特養に移って」といきなり地域の特養のリストを渡されました。
どの特養も待機期間が長くて、そう簡単に移ることはできません。この特養の管理職の人たちも、コミュニケーションが取れず困っています。このまま母が衰えていくのを黙って見るしかないのでしょうか。

確かに、希望してもすぐに入ることのできる施設はほぼありませんから、かわれと言われて簡単に別の施設に移動することは難しいと思います。それだけに解決方法は難しいですが、やはり根気強く特養と話し合いを続け、希望を伝えるしかないと思います。ただ、単に希望ばかりを主張するではなく、特養側の言い分にも耳を傾けて、お互いに譲れる部分は譲りながら折り合いをつけていく姿勢が大切だと思います。

最近、このような施設についてのご相談も増えてきています。特養はどこも空きがなく、希望してから入所まで時間がかかることが多いので、いったん入所して納得がいかない対応をされても、簡単に移動できないのが現状だと思います。だからといって、施設側もその状況に胡坐をかいた対応をしていいかというと、そうではないと思います。やはり利用者や家族の思いや希望に耳を傾け、できないとすればその理由や根拠をきちんと提示したうえで丁寧に対応する姿勢が求められると思います。
この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・

認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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