[実践!病院でのコミュニケーションテクニック&秘訣] 2010/01/08[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

いのちを預かるところだから、安全だと信じていたのに…(43歳・男性より)

 72歳の父は15年前に大きな交通事故に遭い、両足とも膝から下を切断しました。そのため、両足が義足の状態です。行動範囲が狭くなったことも関係しているのか、65歳を過ぎたあたりから認知症の症状が出始め、最近では自分が義足をはめていることも十分認識できていないようなのです。
 義足になってから座っていることが増えたためか、5年ぐらい前から痔に悩まされてきました。最近とくに症状が悪化したため、近くの外科医院で手術を受けることにしました。その外科医院は診療所なのですが、ベッドが15床ほどあって、小さな手術ができるのです。
 入院して痔の手術は無事終了したのですが、入院3日目の夕方に医院から電話がかかってきました。父がトイレに行こうとして一人で立ちあがり、転倒したと言うのです。いまはケガがないか検査中と聞き、急いで医院に駆けつけました。
 検査の結果、どこにも骨折はなく、脳内出血などもないとのことで、ホッとしました。しかし、ドクターやナース、事務員などに反省した様子が見られないのです。私が「なぜ父が一人でトイレに行かないように気をつけて看てくれなかったのか」と尋ねると、「ここは有床診療所で、病院ほどには看護スタッフにも余裕はありません。マンツーマンで付きっきりの看護はできないのです」と言います。そこで私が「でも、入院しているのだから、そこでの事故はすべて医院の責任でしょう? それに、医療機関はいのちを預かるところだから、安全だと信じていたんですよ」と訴えると、「事故と言っても、必ずしもこちらに過失があるとは限らないのです」とあくまで責任を回避しようとします。ケガがなかったから良かったものの、こんないい加減なことが許されるのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 COMLにも「病院に入院していたのに、転倒して骨折した。管理ミスではないか」「なぜ施設に預けていたのに、食事中に窒息が起こるのか」という相談が届くことは少なくありません。多くの人が、「医療機関は安全なところ」と漠然とした思いを抱き、期待する気持は当然と言えるでしょう。
 ところが、有床診療所に限らず、病院でも患者一人ひとりに医療スタッフがついて24時間対応しているわけではありません。あらかじめ転倒・転落の可能性がある患者には予防措置が講じられますが、予見できない転倒・転落事故もあります。それに、冷静に考えてみれば、硬い床、スリッパ履き、トイレまでの距離など、自宅以上に医療機関は危険の可能性が高いのです。つまり、”医療事故”と言っても、必ずしも医療者の過失があるとは限らないということです。
 お父さんの場合、両足が義足だったこと、認知症がおありだったことで、どのような予防措置を講じていたのかが問われることは確かです。ただ、医療機関にも限界があるという事実は、冷静に受け止めていく必要があると思います。
解決!医療機関さんこうしてみては・・・?
 何らかの事故が起こったとき、医療機関はどうしても防衛的な対応になりがちです。なかでも、医療者の過失が考えられないような場合、まず非がないことや正当性を強調してしまうのでしょう。しかし、患者側は不信感や不満、不安などを抱えているだけに、その気持ちが落ち着かない状態で正当性を主張されても、なかなか受け入れることができません。できるだけ患者・家族の気持ちに寄り添い、冷静さを取り戻してから説明する態度が求められると思います。
 このような転倒・転落、窒息など、高齢者に起こる可能性が高い事故については、入院時にあらかじめ説明しておく必要があるのではないかと思います。もちろん、責任回避としかとられないような説明の仕方や脅かすような表現になってはいけませんが、医療機関にも危険があることを事前に理解してもらう必要はあるのではないでしょうか。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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