[頭痛外来の先生を訪問しました「1人で悩まないで、慢性頭痛」] 2011/03/04[金]

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大山一孝先生

【プロフィール】
専門:脳神経外科、頭痛
1994年 順天堂大学医学部卒業
1994年 順天堂大学病院研修医
1996年 順天堂大学脳神経外科助手
2005年 順天堂大学静岡病院脳神経外科助教授
2009年 沼津大山クリニック開業
2009年 順天堂大学脳神経外科非常勤助教授 兼務

 

QLife:大学病院で長い間、脳神経外科で診察をされてから、クリニックを開院されたとお聞きしていますが、開院されたきっかけを教えてください。

大山先生(以下先生):医局時代から日々診察する中でずっと感じていたのは、頭痛を訴えてこられる患者さんの多さです。「何だか頭が痛い」と訴えるわけです。なかには、脳腫瘍などの大きな病気の方もいますが、ほとんどの方は「頭痛」なのです。ただ、診療科としては脳神経外科なので、手術の必要のないCT等で検査をしても問題が見つからない頭痛を訴える患者さんの治療が十分とは言えませんでした。私はそこをなんとかしたいと思い、大学でも頭痛外来を標榜していたのですが、自分のクリニックを開いてもっと専門的にやりたいと思ったというわけです。

QLife:なるほど。そうした患者さんへの思いからクリニックを開院されたのですね。では、クリニックでの診察の流れを教えてください。

大山一孝先生先生:他の医院でもされていると思いますが、問診を重視しています。お待ちいただいている間に詳しい問診票をお渡ししていて、記入をお願いしています。これは他の症状の患者さんとは違う頭痛専用の問診票です。

QLife:これはかなり詳しい。さらにフリースペースもありますね。

先生:頭痛の履歴、痛み方、生活習慣、家族の頭痛歴などいろいろ書いていただくのですが、どんなことを書いているかを見るだけでも本当にいろいろ分かってくるんですよ。例えばストレスが強いだろうな、という人はフリースペースのところに細かい字でびっしり書いてくださったりとか…。

QLife:なるほど。そうしたことから患者さんの状況が感じ取れたりするわけですね。だからしっかり書いていただくと。ところで訴えとしては、どのような表現が多いでしょうか。それからどんな患者さんが多く来られるのでしょうか。

先生:そうですね、「頭が心臓の鼓動のようにズキズキして耐えられない。伏せってしまう」という訴えが多い。これは片頭痛の典型的な症状です。診断としては、当院では片頭痛が8割といっていいですね。時々、やっかいな薬物乱用頭痛の方もいます。性別としては、明らかに女性の方が多いです。年代は子供から40代くらいが多いですね。

QLife:診断後、治療はどのように進めるのですか?

大山一孝先生先生: 診断後は、薬の処方を考えながらの観察期間に入ります。といっても、どのような処方がもっとも効果的なのかは本当に人それぞれなので、量やタイミング、組み合わせを治療開始当初は探りながら定めていきます。
そのために、患者さんには「頭痛日記」をつけていただきます。頭痛がどんな状況でいつ起こって、どういう痛みで、薬を服用したらどうなったか、どんな効き方をしたのかということから、睡眠時間や、生活の中で気がついたことを書いていただきます。それを書いていく中で患者さん自身が気づくこともあるし、私が日記を見ていろいろと発見することもあります。

QLife:その発見という意味で、先生が患者さんに接していて気がつくところなどありますでしょうか?

先生:そうですね、日頃患者さんを見ていると、実感としては睡眠のリズムと仕事のストレスというのは、頭痛に関係がありそうだと感じますね。眠りが不規則だったりする方は、頭痛で悩むケースが多い。それから年末には仕事が立て込むので、それがストレスになって頭痛がひどくなるというケースもあるようですね。実際、患者さんは多かったです。

QLife:やっぱりそうなのですね。仕事のストレスというのは避けがたいですが、気をつけたいものですね…。患者さんの反応はいかがでしょうか。

先生:治療法や処方した薬が患者さんに合っていれば、1~3カ月程度で自覚症状が改善してくる方が多いようですが、これも患者さんによりけりです。ただ、ひとつ認識していただきたいのは、頭痛はゼロにはならないということ。治療の過程で症状が軽減されたのでそれで良しとしてしまって、途中で来院しなくなる方もいる。以前よりもひどくなって、また来院されるケースも現実にあります。

QLife:そのケースですと、治療は最初からやり直しということになるのでしょうか?

大山一孝先生先生:残念ながらそうそうなってしまいます。最近は患者さんも頭痛についてとてもよく勉強されているので、その辺りも理解していただけるとありがたいですね。また、患者さんの周りの方のご理解も必要です。特に子どもの場合は、痛みで苦しんでいるときと症状が出てないときの落差が激しいものだから、仮病ではないかと誤解されたりもする。実はあまり知られていないことなのですが、腹痛を訴える子が実は片頭痛だったりすることがあります。「腹部片頭痛」といって、片頭痛なのですが痛みがお腹にでてしまうのです。こうした子は成長すると片頭痛を発症しやすくなります。

QLife:そうなんですか?それは初めて聞きました。貴重なお話、ありがとうございます。最後になりますが、頭痛に悩む患者さんにメッセージをお願いします。

先生:お伝えしたいのは、頭痛外来でないと正しく片頭痛と診断されないことがありますよ、ということですね。場合によっては脳神経外科であってさえも、緊張型頭痛と言われて正しい治療を受けられず、こじれてしまうこともあるようです。なので、できるだけお近くの頭痛外来で専門の先生に診断してもらうことをおすすめします。市販の痛み止めが常備薬のようになっている方や、長年悩んでいてだんだんと頭痛の頻度が高まりひどくなっているような方は、迷われる必要はないと思います。ぜひ受診してください。

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