[頭痛外来の先生を訪問しました「1人で悩まないで、慢性頭痛」] 2009/06/15[月]

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河野義久先生

【プロフィール】
専門:脳卒中全般、
MRI臨床研究他 医学博士
1988年  大分医科大学付属病院脳神経外科勤務
1988年  大分市医師会立アルメイダ病院脳神経外科勤務
1989年  永冨脳神経外科病院勤務
1990年  日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医認定
1990年  三愛病院勤務 脳神経外科部長
1994年  三愛病院勤務 副院長
1995年  河野脳神経外科(診察所)開業
2002年  河野脳神経外科病院(40床)開院

 

QLife:脳神経外科病院ということで、頭痛でお悩みの方も多く来られると思います。日々診察なさっていて、印象としては、どんな患者さんが多いでしょうか。

河野先生(以下先生):そうですね、当院の場合、まずは緊張型頭痛でお悩みの女性が多いですね。年齢層は20〜50代までと幅広いのですが、お仕事を持っておられる場合が多いです。診察して話をお訊きしていると、大抵は仕事のストレスが原因になっているようです。「後頭部がずっと痛い」とか、「朝から鈍痛があって夕方になるとひどくなって…」などと訴えられる方が多いです。
 片頭痛の方も多くいらっしゃいますよ。こちらもさまざまな年代にわたっています。当院のケースではお子さんが親御さん同伴でいらっしゃることも珍しくありません。

河野義久先生

QLife:どういう流れで診察なさっていますか。その際に心がけている指針などありましたら、教えてください。

先生:当院は脳神経外科病院ですので、まずはその頭痛が「慢性頭痛」なのか、それとも「脳卒中やくも膜下出血などの症状」なのかを、しっかり見極めることを意識しています。確率としてはレアケースですが、後者を見逃してしまうと大変なことになりますから。診察の前に、チェックシートをお渡しして、本人に書いていただくことにしています。どこがどのように痛むのか、どれくらい続いているのか、以前もこういう痛みがあったのか、などをできるだけ詳しく教えてもらいます。

QLife:確かに「脳に何か危険な病気があるのではないか」という不安を抱く患者さんもいるでしょうね。こういうタイプの痛み方だと危ない、と分かるような特徴はあるのでしょうか。

先生:くも膜下出血は、一般的には「殴られたような激しい頭痛」と言われます。ただ、確かにそう表現できるときもありますが、実感としては、風邪による頭痛と区別がつきにくい場合もあります。頭痛が起きるたびにだんだん痛みがひどくなっている場合は、重篤なケースを疑っていいと思います。
それから、患者さん自身が「これはいつもと違う、ただならぬ痛み」と危機感、切迫感を感じられている場合には、それが当たっていることもあります。

河野義久先生

QLife:では、診察後はどういった指針で治療に入っていきますか。

先生:頭痛の場合、とにかく患者さん自身が不安を持っていますので…その人の症状の説明はもちろん、頭痛の全般的な説明をしっかりします。薬の処方についても、できるだけ、処方可能な薬それぞれについて説明してから投与を決めるようにしています。「この薬はこういう薬でこういう時に使う、こちらの薬はこういう効き方をする。あなたの場合はこちらの方がいい。」とかね。なぜそうしているかと言うと、実は私自身も片頭痛持ちなんですよ。患者としての経験もあるので…

QLife:え、そうなんですか。いつ頃から片頭痛に?

先生:中学生の時からかな。例の「閃輝暗点」(せんきあんてん:多くはないが、片頭痛の前兆で現れることがある現象で、目の前に黒い点がキラキラ見えて広がる)が出てね。その後に痛みが来まして。ものすごくびっくりしたし、激痛だし、目は見えないし、自分はこのまま失明するんじゃないか?と思ったくらいで。後日自分で調べて、経験したのは典型的な片頭痛の症状だったと分かるまでは、本当に不安でした。だから患者さんの気持ちは、とてもよく分かっているつもりです。
 よくここ(診察室)でね、ネット上にある情報を患者さんに見せながら説明するのです。いつも使ってるページに「あなたはこのページの○○番目の訪問者です」って出るんですが、その数が300万とかなんですよね。患者さんはそれを見ると、ああそうなんだ、みんな悩んでるんだと、ある意味ホッとする。不安がなくなって、自分の頭痛に前向きに取り組めるようになる。

QLife:症状が劇的なだけに、自分は何か大変なことになってしまったんじゃないか…と不安になるのでしょうね。

先生:そうした不安を取り除くためにも、患者さんご自身でネットなどを見て、頭痛の知識を持つことは大切です。一番患者さんに知っていただきたいのは、頭痛の原因はストレスだったり、体質的な問題だったりと一様ではないですから、単にその時の痛みが治まったら大丈夫、その後絶対起きません、というものではないということ。場合によっては長年付き合っていかなければならないこともある。私の場合も、今では頭痛はほとんど消えたものの、閃輝暗点はまだ出ますから。

QLife:ええ!そうなんですか。

先生:でも他の病気と違い、「闘病生活」というような重苦しいことにはならない。自分の頭痛との付き合い方を覚えれば、頭痛の頻度を減らすことだって十分に可能ですし、日常生活にほとんど支障はなくなります。その証拠が私ですから(笑)。「私だってこうして普通に生活できていますから、大丈夫ですよ」と、よく言ってます。
 大切なのは、痛みではなく、痛みの原因に向き合うこと。痛いのが治ればいいと思って、安易に市販薬だけに頼ってしまう方が結構、多い。それが進むと、「薬物乱用頭痛」になるケースがあります。知識があれば対処の仕方も変わるはずなので、患者さんにもぜひ勉強をしていただきたいです。

QLife:ご自身の経験を交えてのお話、とても説得力があります。ありがとうございました。最後に、この記事をご覧になっている方にメッセージをお願いします。

先生:ひとつ知っていただきたいのは、検査の必要性です。頭が痛いというので検査してみたら、脳腫瘍や脳卒中だった…というケースが、年に数回ですが当院でも実際にあります。ですので、頭痛に悩まれている方は、まずは専門医の検査を受けてみることをお奨めします。それから、私自身の片頭痛患者としての実感も含めて申し上げると、最近片頭痛に関しては良い薬が出てきて、状況が変わってきました。その意味でも、あまり思い悩まずに専門医のところへ相談に行っていただきたいですね。

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