[インフルエンザ調査] 2012/11/19[月]

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 インフルエンザの予防ワクチン接種は、原則として自費負担で、全国の地域によって多少の差があるが、おおむね大人一回で3,000~3,500円の価格帯になっていることが多いようです。(公的助成ない場合。詳細はこちらから)。家族が複数だと1万円を超えてしまい、何かと入り用な年末に近くなると接種を躊躇する人もいるかもしれません。
 予防接種の効果は、接種した本人だけにとどまりません。もちろん本人の「かからないようにする」効果、「かかっても重症化しないようにする」効果が主な狙いですが、それらに加えて「集団感染(流行)を防ぐ」効果が社会全体では大きなものとなっています。昨今の長引く景気低迷や経済格差の拡大で、予防接種を受ける人が減ると、この3番目の効果が薄れるため、接種メリットが減ることが危惧されています。
 このような集団感染リスクは、予防だけでなく治療についても言えます。仕事や学校、行事などで外出せざるを得ない事情がある人は1日でも早く治癒しないと、本人が辛いだけでなく、他人にいつまでもウイルスをまき散らすことになってしまいます。そのため、費用負担が理由で医療機関受診を控える人が多い地域は、「インフルエンザに感染しやすい地域」となってしまう可能性があります。一方、インフルエンザは自宅安静・自然治癒にまかせるべきであえて積極投薬治療をする必要はないと考える意見や、自然に一定割合の人が毎年かかる方が免疫がついてパンデミック(爆発的な流行)になりにくく地域社会は中期的に安定すると考える意見もあります。
 そこでQLifeでは、世帯年収(所得)別に、一般生活者1000人を対象に、インフルエンザの予防接種や治療法について、意識や知識の違いがどの程度あるのかを調査しました。その結果概要をお伝えします。

「既にした」「するつもり」は過半数に届かず。所得別でも意欲に差が

 2012~2013年シーズンのインフルエンザ予防接種の意向・実施について、調査を行った11月初旬の時点で「既にした」と回答したのは11.4%にとどまった。これに「するつもり」を加えても46.2%と過半数に届いていない。「時間が無い」「在庫が無かった」などの理由で、実際の接種率はもっと低くなると予想される。また世帯所得別で接種意欲に差があり、「既にした」「するつもり」と回答した401~600万円世帯が41.6%であるのに対し、1001万円以上世帯では51.4%と10ポイント近い差がついた。

インフルエンザ予防接種に半数以上が「高い」と感じている

 予防接種の値段については、全体の60.2%が「高い」と回答。特に、401~600万円世帯では67.2%が「高い」と感じており、「適正」と考える割合に比べダブルスコアとなった。世帯所得レンジの上昇に伴い、「高い」が減少し「適正」が増加。1001万円以上世帯では、「高い」と「適正」がほぼ同じ割合となった。

「高い」と思う理由

  • 受験などの特段の理由がなければ受けるのをためらう。
  • 国民の健康を守る観点であれば、千円台が妥当かと。
  • お年寄りから子どもまで皆が受けるべきものにしては高すぎる。
  • 社会に多大な影響を与える流行性疾患なのでもっと安価にすべき。
  • 値段が違うのが変。

「適正」だと思う理由

  • 適正価格はわからないが、払えない金額ではないから。
  • 薬剤料と手数料を考えるとこれくらいだと仕方ないかと思う。
  • 安過ぎても、人が沢山殺到しそうなのでこれくらいが妥当だと思う。
  • 予防接種は何をうつにしてもこれぐらいの値段はするものなので。
  • 昔はもっと高かった気がする。

「安い」と思う理由

  • 副作用が無くて予防になるなら安い。
  • 1週間仕事を休むより安い。

治療知識については世帯所得間の格差は見られない

 一方、治療についてはどうだろうか?インフルエンザの治療フェーズで注意すべき点として代表的な「解熱剤の使用」について聞いた。インフルエンザで熱が出た場合、解熱剤としては、特定の薬以外は使わない方が一般的に良いとされている(具体的にはアセトアミノフェン、特に小児においては)が、このことを「知っていた」と回答したのは全体の40.3%。認知割合に世帯所得別での傾向はみられなかった。
※そのため、知人からもらった解熱剤は使わない方が良い。

治療薬の認知率や使用傾向も所得差傾向ない

 インフルエンザ治療薬の認知度ならびに使用経験を例に調査をしたところ、「タミフル」「リレンザ」について、半数以上が「聞いたことがある」「使ったことがある」と回答した。特にタミフルについては、97.6%が「聞いた」「使った」と回答。次いで「イナビル」「ラピアクタ」「シンメトレル」の順となった。そして、この認知や使用経験割合に所得差による傾向は見られなかった。

病気の「予防格差」が生じはじめている可能性

 「予防接種」は、世帯所得の多寡によって接種意欲やその理由に差が見られたが、「治療」は、薬剤に関する知識度合いや使用経験の面で、世帯所得差による傾向は特に見られなかった。自費診療の「予防」で顕著な差が見られるのに、保険診療の「治療」で差が見られないのは、国民皆保険制度の恩恵と言えるだろう。
 だが、「経済格差」が広がっている(ジニ係数の推移など)という現実をふまえると、病気の「予防」格差が生まれ始めていると考えられ、特にインフルエンザのような感染症においては個人レベルだけでなく集団レベルでの格差が始まっている可能性がある。

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