[統合失調症の患者調査] 2018/03/27[火]

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 幻覚や妄想が起こって、周囲の人とのコミュニケーションが難しくなってしまう「統合失調症」は、およそ100人に1人弱が発症する精神疾患です。特に都市部では統合失調症の治療を行うクリニックも多く、入院ではなく通院して治療をしながら日常生活を送る患者さんも増えてきました。服薬を中断すると、症状が再発・再燃する確率が5倍高くなるともいわれており1)、治療薬の服用を継続することが大切です。しかし、毎日忘れずに服薬することは、患者さんにとって大きな負担にもなっているのです。

 服薬の負担は、統合失調症患者さんの自立や社会復帰にどのような影響を与えているのでしょうか。そこでQLifeでは、市ヶ谷ひもろぎクリニックなどを擁するひもろぎグループ理事長の渡部芳徳先生監修のもと、統合失調症患者さんを対象に、生活や社会参加、服薬、2~4週に1度投与する注射薬の認知度に関する調査を実施しました。調査対象は、現在薬物療法中の統合失調症患者さん200例。2018年2月7日~12日にかけて、インターネット調査で実施しました。回答者の内訳は、男性139例、女性61例と男性が多く、年代では20代10例、30代48例、40代81例、50代52例、60代9例と、40~50代が多くなりました。統合失調症と診断されてから10年以上経過している患者さんが129例と最も多く、7~10年未満24例、3~7年未満34例、1~3年未満12例、1年未満は1例でした。

「働いている」患者は4割、仕事をしていない患者が多数派

 就労状況は、「働いていない」が最も多く41.0%、次いで「障がい者枠以外で働いている」(26.0%)、「障がい者枠で働いている」(14.0%)でした。「我々が行った調査2)では、障がい者枠就労が8%、就学・就労が22%という結果。インターネット調査という特性上、比較的症状のコントロールができている患者さんの回答が多いことを考えると、同等の結果といえます」(渡部先生)

あなたは現在、働いていますか。あてはまるものを教えてください。

働いていない 41.0%、働いてはいないが、デイケアに通っている 3.5%、就職・復職を目指して、就労移行支援事業を利用している 7.5%、自宅での家事手伝い 2.5%、専業主婦・主夫(家事全般を一人で担当している) 5.5%、働いている(障がい者枠) 14.0%、働いている(障がい者枠以外) 26.0%、学校に通っている 0.0%、その他 0.0%

 統合失調症患者さんの状態を表す指標「機能の全体的評定(GAF)」について、患者さんに自己判断で10段階から選んでもらったところ、仕事や家事ができる目安となる50点以上が75.5%を占めました。仕事に就く準備ができる目安となる40点台は8.5%、デイケアを利用するなど外出が可能な目安となる30点台は2.5%でした。働いたり、何か活動したりすることが難しくなる30点未満は13.5%。家族と同居し、働いていない患者さんが多いにも関わらず、自己判断のGAFの点数では、仕事も家事も可能な状態の患者さんが多いという結果に。「統合失調症患者さんの特性や、就業状況もふまえると、担当医が判断する実際のGAFはもう少し低いのではないでしょうか。とはいえ、自身の状態をよいと感じられるのは、服薬や生活の管理ができているということですから、好ましいことだといえます」(渡部先生)

約5割が毎日の服薬に負担感。「飲み忘れるのではと不安」

 症状悪化を防ぐために、継続的な服薬が必要になる統合失調症。治療薬を飲み忘れた経験があるかをきいたところ、なんと66.5%もの患者さんが「ある」と回答しました。なかでも「時々ある」が36.5%と最も多く、「2~3回ある」の19.0%を大きく上回る結果でした。「頻繁にある」と答えた患者さんも5%いました。薬を飲み忘れると、統合失調症の自覚症状はどのように変化するのでしょう。飲み忘れたときの症状の変化については、「悪化したかどうかわからない」(34.6%)と答えた患者さんが最も多く、「悪化したことがある」(26.3%)と「悪化しなかった」(26.3%)は同数でした。少数ですが、「必ず悪化する」(9.8%)と答えた患者さんもいました。「きちんと服薬しなければ症状が悪化することがわかっている患者さんは、服薬もしっかりするし、状態も安定します。そのことが、こうした結果にも表れています」(渡部先生)

統合失調症の治療薬を飲み忘れた(飲まなかった)経験はありますか。

1度だけある 6.0%、2~3回ある 19.0%、時々ある 36.5%、頻繁にある 5.0%、ない 33.5%

 薬の飲み忘れを防ぐために、「薬の置き場所、飲む手順などを決めている」(58.5%)、「薬剤の管理方法を工夫している」(36.5%)など、患者さんは日頃からさまざまな工夫や注意をしているようです。なかには、「家族に確認してもらうなど協力を仰いでいる」(7.5%)という患者さんも。患者さんの49.5%は、こうした毎日の服薬を負担に感じると回答しています。薬の飲み忘れに対する不安や、旅行や外出先での服薬に負担を感じている人、服薬のときに周りの人の目が気になる人も。また、飲み込みづらさを挙げる声もありました。「服薬が患者さんにとって大きな負担となっていることが、改めて確かめられました。家族と同居している患者さんで、家族が服薬や食事の管理を助けてくれている方は、やはり状態がいいのです。そういうサポーターの存在が、統合失調症の治療ではとても大事になってきます」(渡部先生)

通院のついでに投与できる注射薬、知っているのはわずか3割

 患者さんの通院頻度は、「月に1回程度」が64.0%と最も多くなりました。次いで、2週間に1回程度(16.5%)、2か月に1回程度(12.5%)と続きました。統合失調症には、飲み薬のほかに注射薬があり、投与間隔は2~4週間に1回で、通院したときに投与します。この注射薬の存在を知っているかどうかをきいたところ、「知っている」と答えたのは33.0%と、患者さんの2/3は、注射薬の存在を知らないという結果でした。注射薬の存在を知らなかった患者さんと、知っているが使ったことのない患者さんに、注射薬を使ってみたいかどうかをきいたところ、「使いたい」「どちらともいえない」との答えが50.3%でした。使ってみたい理由としては「服用する薬が減るから」(55.3%)、「飲み忘れの心配がないから」(43.4%)、「通院のついでに投与できるから」(40.8%)が多く挙がりました。「現在の治療で安定していると、医師のほうも、注射薬を提案することをためらいがちです。しかし、注射薬は飲み忘れる心配がなく、患者さん本人の服薬に関する負担を減らせるだけでなく、服薬管理を手伝ってくれている家族の負担も減らせます」(渡部先生)

 一方、注射薬を使いたくない理由では、「現在の治療に不満がない」(48.8%)、「医師から勧められたことがない」(44.0%)、「副作用が心配」(40.0%)とする声が多くありました。

統合失調症の治療薬には、2~4週間に1回投与する注射薬があることを知っていますか。

知っている 33.0%、知らない 67.0%

 実際に使ったことがある患者さん(11例)からは、「注射が痛い」(45.5%)と注射薬ならではの感想があったものの、「服用する薬が減って気が楽になった」(36.4%)、「通院のついでに投与できるので便利」(36.4%)、「飲み忘れる心配から解放された」(27.3%)、「症状が安定した」(27.3%)と、服薬の負担から解放されたとの声が多くありました。

 「注射薬の場合は飲み薬と比べ、服薬を忘れる心配がなく、きちんと治療が続けられます。その結果、状態も安定しますから、通院して注射をしているとき以外は、自分が統合失調症であることを忘れているという患者さんもいます。私たちの診ている患者さんのなかには、働くために注射薬に切り換えた方もいて、仕事をしている方には合っている治療法といえるでしょう。もっと多くの患者さんに、注射薬という選択肢があることを知ってもらいたいですね」(渡部先生)

詳しい調査結果はhttp://www.qlife.co.jp/news/180327qlife_research.pdfからもダウンロードできます。

1)Robinson D et al., Arch Gen Psychiatry:56(3):241-247, 1999
2)渡部芳徳ほか、新薬と臨床:64(11):67-79, 2015

ひもろぎグループ理事長
渡部芳徳(わたなべ よしのり)先生

1989年山梨医科大学(現山梨大学)医学部卒業。
ひもろぎグループ(医療法人社団慈泉会・社会福祉法人真徳会)理事長、東邦大学薬学部客員教授、東京有明医療大学客員教授。専門分野は臨床精神薬理学(うつ病、双極性障害、統合失調症、社交不安障害、パニック障害、ADHD発達障害、てんかん等)。
医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医。

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