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[ヘルスケアニュース] 2022/11/07[月]

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発達障害を含む脳や神経の違いを「特性」と捉える


日本橋ニューロダイバーシティプロジェクトロゴ
(武田薬品工業株式会社提供)

 「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)」という言葉を聞いたことがありますか? これはNeuro(脳・神経)とDiversity(多様性)の2つを組み合わせた言葉で、発達障害を含む全ての脳や神経には違いがあり、その違いを優劣ではなく多様性として尊重し合う考え方を指します。

 今、このニューロダイバーシティを推進することが、未開拓人材の獲得やイノベーション創出・生産性向上に成果を上げているとして世界で注目を浴びています1)。日本では経済産業省が調査研究を進めているほか2)、武田薬品工業株式会社が2022年10月13日に「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」を発足させ、オンラインプレス発表会を開催しました。

 そもそも発達障害とは、自閉スペクトラム症や学習障害、注意欠如多動症などの脳機能の障害で、下記のような症状が幼少期からみられるとされています3)

 プレス発表会に登壇した臨床心理学等が専門の井上雅彦先生(鳥取大学)は、これらの症状は併存することも多いと指摘します。また、5歳児の自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上とする研究もあり4)、この特性ゆえに生きづらさを感じている人は身近に多くいると考えられます。

 とはいえ本来、発達障害のある人とない人を分ける明確な境界線はありません。発達障害は定型発達の連続線上にあり、発達障害のある人に見られる特性は、強弱こそあるものの、私たち一人ひとりに備わっているものです。

 ニューロダイバーシティは、発達障害による症状を能力の欠如ではなく「人間の1つの特性」と捉える概念でもあるのです1)

環境を変えれば、障害は解消できる

 発達障害の特性が「困りごと(障害)」になるかどうかは、当事者が置かれている環境によって大きく異なります。


(武田薬品工業株式会社提供)

 例えば「場の空気を読まずに発言する」特性について考えてみましょう。この特性が生かされない環境では「場違いな発言をする協調性のない人」という印象になってしまうかもしれません。しかし、この特性が生かされる環境であれば「場の空気に流されず自分の意見を言える人」という強みになるのです。

 一人ひとりの特性を理解し、発想力が豊かな人はユニークなアイデアを生かせる部署に、集中力と分析的思考力がある人には注意力が必要なタスクを時間単位で依頼というように、環境を柔軟に変えることができれば、多くの困りごとは解消します。それどころか工夫次第で、特性を強みに転換して仕事で生かすこともできるのです。

ニューロダイバーシティ推進で企業力アップ

 ニューロダイバーシティは「できること」をきちんと評価して、「できないこと」は協力しながら解決に導くことを大事にしています。この考え方を日々の業務に取り入れることは、発達障害のある人のみならず、周囲の社員の心理的安全性も高め、企業全体の生産性向上やイノベーション創出をもたらします。


(武田薬品工業株式会社提供)

 では、企業はどのような実践をしたらいいでしょうか。求められるのは、それぞれの特性に合う環境やコミュニケーション方法を構築していくことです。具体的には、働く環境や働き方の選択肢を増やすことがあげられます。特性に合った業務を割り振るのはもちろん、音や光の刺激が多い環境が苦手な人には自宅からのリモートワークを可能としたり、耳から聞く情報を覚えるのが苦手な人との会議では文字起こしツールを導入したりといった工夫が考えられます。

 脳の多様性から生じるさまざまな特性を互いに受け入れ尊重する活動は、障害の有無に関わらず、さまざまな特性のある人がそれぞれ得意な部分を活かして働きやすい社会を実現することにつながるのです。

 日本橋ニューロダイバーシティプロジェクトが制作した啓発冊子には、実践のヒントが詳細に記載されています。ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

1)武田薬品工業株式会社.ニューロダイバーシティ実現のための啓発冊子
[https://www.n-neurodiversity.jp/file/n-neurodiversity_book.pdf](10月28日閲覧)
2)経済産業省.ニューロダイバーシティの推進について.
[https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html](10月28日閲覧)
3)発達障害者支援法.
[https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/1376867.html](11月1日閲覧)
4)Saito, M., et al. Molecular autism, 11(35), 2020.

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