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[注目疾患!] 2019/08/07[水]

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中川 匠先生
帝京大学医学部附属病院整形外科教授
スポーツ外傷・関節鏡センター長
中川 匠先生

膝に痛みが現れ、重症化すると変形し歩くことが難しくなってしまう「変形性膝関節症」。その多くは加齢に伴うもので、日本では2000~2500万人が変形性膝関節症と推定されており1)、男性よりも女性に多くみられることが特徴のひとつです。高齢化に伴い、患者さんの数は増加傾向で、要介護や要支援になる原因のひとつでもあることから、社会的な問題となっています。今回は、変形性膝関節症について、帝京大学医学部附属病院整形外科教授、スポーツ外傷・関節鏡センター長の中川匠先生にお話を伺いました。


――変形性膝関節症はどのような病気ですか?

図1

(左)正常な膝関節
(右)変形性膝関節症の膝関節(内側の軟骨がすり減っている)

レントゲン写真提供:中川 匠先生

変形性膝関節症は、衝撃を和らげる役割を担う膝関節の軟骨がすり減ってしまうことで関節が変形し、痛みなどの症状が現れる病気です(図1)。最初は膝のちょっとした“違和感”から始まり、気付かぬうちにゆっくりと症状が進行していきます。例えば、湿布を貼れば我慢できていた痛みが、気付くと、近所に買い物に行くのが難しくなったり、階段の上り下りが難しくなったりするような痛みに進行します。変形性膝関節症には初期・中期・末期の大きく3つの段階がありますが、膝に違和感があるな、痛いな、と感じる状況が続く場合には、早めに整形外科の先生に診てもらい、適切な治療を受けることが大切です。変形性膝関節症の治療は、筋力を強化するための運動による治療が基本で、痛み止めなどの薬による治療も併せて行います。多くの人がこれらの治療で症状を改善していますが、症状の改善がみられず、日常生活にも支障をきたすほど症状が進行してしまった末期の患者さんでは、手術療法を検討します。

「変形性膝関節症の症状」2)

  • 初期の症状:立ち上がり、歩きはじめなど、動作の開始時のみに痛みが現れる
  • 中期の症状:正座や階段の上り下りが難しくなる
  • 末期の症状:安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が難しくなる

――受診時には、医師にどのようなことを伝えたら良いですか?

受診の際には、「症状はいつから現れているのか」「症状はどのように悪くなっているのか」を、しっかり医師に伝えることが大切です。例えば、「半年ほど前から痛みが出ていて、以前は家から駅まで問題なく歩けていたのに、今では杖無しでは歩けなくなってしまった」というように、具体的に症状を話せるように準備しておきましょう。うまく話せるか不安であれば事前に紙などにまとめて医師に見せたり、家族の方が同席して説明したりするなどして、症状を的確に医師に伝えるようにすると良いです。

――変形性膝関節症になりやすい人の特徴には、どのようなものがありますか?

女性、スポーツなどによるけが(半月板損傷など)の経験がある人、肥満の人、運動不足で筋力が低下している人は変形性膝関節症のリスクが高くなることがわかっています。そのため、日頃から体重が増え過ぎないように注意し、膝まわりの筋力を維持することが大切です。

――運動習慣のない人でも簡単にできる、体操やストレッチを教えてください

おすすめは、椅子に座った状態で脚を上げ下げする体操や、太ももの裏側の筋肉を伸ばすストレッチです。入浴後に体が温まった状態で、膝を曲げたり伸ばしたりすることも良いでしょう。

椅子に座った状態で脚を上げ下げする体操
  1. 椅子に腰をかける
  2. 足首を立てた状態で、片方の脚を水平に伸ばす
  3. 呼吸をしながら、5秒程度そのままの状態を維持する
  4. ゆっくり脚を下す
膝1
太ももの裏側の筋肉を伸ばすストレッチ
  1. 平らな場所に、脚を伸ばして座る
  2. 上半身を前へ倒し、5~15秒程度太ももの裏側の筋肉を伸ばす
  3. ゆっくり元の姿勢に戻る
膝2

――最後に、患者さんへのメッセージをお願いいたします

ぜひ、自分にあった運動習慣を持ってください。膝だけでなく、全ての運動器の健康を長く維持するためにも、出来れば若いうちから運動習慣を持って欲しいですね。若いうちは、筋力の“貯金”があり筋力の衰えに気付きにくいのですが、運動習慣のない人は年齢とともに筋力が確実に落ちていき、あるとき急にガクッと筋力が衰えたことに気づきます。これまで運動習慣のない人でも再び運動習慣を持つと、もう一度“貯金”をつくることができますので、運動が苦手という方も、まずは無理のない範囲で始めてみてください。そして、膝の違和感や痛みが気になる場合には、早めに整形外科を受診しましょう。(QLife編集部)

1)中村伸一郎:理学療法学. 2019;46(1)65-69
2)日本整形外科学会 ウェブサイト(2019年7月4日閲覧)

【中川 匠先生プロフィール 】

帝京大学医学部附属病院 整形外科教授 スポーツ外傷・関節鏡センター長

専門分野は、膝関節外科、スポーツ整形外科。

日本整形外科学会専門医、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)評議員、日本臨床バイオメカニクス学会評議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員。

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