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[クリニックインタビュー] 2010/03/04[木]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第57回
なかお眼科医院
中尾秀樹先生

父の姿を見て、眼科医を目指した

nakao_eye_clinic01.jpg 僕は物心ついた頃から、眼科医である父の姿を見ていました。そのため将来を考えるときはいつも「眼科医」が候補のなかにありましたね。父から「眼科医になりなさい」と強く言われたことはありません。何も言われなくても、真面目に働く父の姿はかっこよく、いつも誇りに思っていたんです。
 手塚治虫の「ブラックジャック」にも影響を受けました。医師になった人で、「ブラックジャック」を読んだことのない人はいないんじゃないかな。僕は医師を目指すようになってから読んだのですが、やはり「医者はいいな」と憧れましたね。
 大学卒業後、僕は国家試験に落ちてしまい、一年浪人生活をすることになったのですが、そのとき出会った岡庭 豊先生には、医師のあり方として非常に影響を受けました。岡庭先生はもともと昭和医科大学の麻酔科医で、今は臨床をはなれて「メディックメディア」という会社の代表として、医学専門誌を作っておられます。先日30周年記念のパーティがあり、僕も参加させて頂きました。岡庭先生の、情報を的確に伝え、医療世界の発展を目指すひたむきな姿は昔と変わっていません。先生の医療にかける姿勢をお手本に、僕は「地域に情報を発信しながら治療していく、開かれた医院」を目指し、開業に至ったのです。

納得のいく診断と、確かな手術を提供したい


院長自ら手がけた内装。かわいい魚の水槽に癒される。

 僕の専門は、サーフィンとシュノーケリング。といっても、目の玉を海に例えたときの話です。目の表面は、まるで地球が海に覆われているように、膜で覆われています。一番表面の角膜部分を治療するのが、サーフィンです。そしてもう少し深い部分、水晶体などを扱うのがシュノーケリングですね。白内障などの手術が、この段階に入ります。開業医は、ほとんどの場合、シュノーケリングまでをマスターしています。
 さらに、目のもっと奥の方や硝子体まで疾患がある場合は、スキューバ・ダイビングすることになります。ボンベを背負って、深く潜る。とても専門的な治療になってくるので、大学病院などの大病院で行われます。
 当院では、サーフィン・シュノーケリング段階までの治療を行いますが、症状によってダイビングが必要となれば、日赤病院や東大病院など、専門治療を行う医療施設へご案内しています。大病院ならどこでも良いわけではなく、それぞれ得意・不得意分野があるので、症状に応じてご紹介することになります。
 例えば、オリンピア眼科病院は「甲状腺の異常にともなう目の病気」を治療するのが得意です。甲状腺の病気になると、緑内障にかかる場合があります。眼球がふくらんで眼球に圧力がかかり、視神経を圧迫してしまうんですね。当院で紹介する病院では、目の後ろの骨を削って、圧を逃す手術をします。しかしこの手術を行っている病院はあまり多くありません。それどころか医師のなかにも、甲状腺異常の症状で、目だけが悪化するケースを知る人は少ない。患者さんの症状にあわせた高度な治療法・施設をご案内するのも、重要な仕事なんです。
 しかしこれは特殊なケース。ほとんどの場合、まず地域の眼科に行けば病気の原因が分かります。僕は診察の際、患者さんの症状を画像で見ながら、できるだけ分かりやすく、納得のいく説明をするよう心がけています。眼球はシンプルなようで分かりづらいので、時には眼球の模型を使い、シュノーケルやダイビングなどの例えを用いて、一人ひとりに症状をご理解頂くようにしています。

症状を改善するのは、少しの工夫と、少しの努力

 当院ではホームページにメールアドレスを掲載し、患者さんからの相談メールを受け付けています。基本的にそこでお答えできるのは、病院選びと、眼についての一般的なアドバイスです。「眼に症状が出ているけど、どうしたら良いか分からない」患者さんには、「まず当院か近隣の眼科で受診して下さい」と返信します。また「今まで違う病院で診てもらっていたけれど、なかなか改善しない。どうしたらいいのか」という方には、専門知識からお答えしたり、違う専門的な病院をご案内することもあります。
 しかし、なかには「まず一度受診して下さい」と連絡したにも関わらずどこにも行かず、同じ相談を送って来られる患者さんがいます。例えば、お子さんの目が充血し、目やにも出ている。「自分で調べたけど分からないから、教えて下さい。こういう病気じゃないかと思うのですが…」とご相談頂いたので、「まずは一度近くの眼科で受診してみて下さい」と返信しました。でも、しばらくすると同じご質問が送られてくる。あくまで、眼科に行かず、自分で解決したいと思われているようなんです。
 確かに、何もしなくても治る場合もあります。しかし眼病の症状は、単純なようで複雑です。痛みにも性質があるし、充血にもタイプがある。まず診察してみなければ原因も処置もできません。「病院に行かず、メールだけで何とかしてほしい」という患者さんが多いのは、ちょっと困ってしまいますね。インターネットにはやはり限界があって、本人が一歩足を踏み出して受診しないと完治はできません。いろいろな事情があるのだろうとは思いますが、気になる症状があればまず受診して頂きたいと思います。
 どんな病気でも、治療には、医師と患者さんの二人三脚が大切です。一度受診して頂ければ、僕は全力で治療に臨みます。患者さんにも「自分で治す」ことを意識して頂き、力をあわせて前進していきたいと思っています。
 そのため、僕はときに「何かをして下さい」または「しないで下さい」とお願いすることがあります。「運動を控え、安静にして下さい」「目薬を日に4回さして下さい」「お酒を控えて下さい」「コンタクトをしばらくしないで下さい」など。日々の習慣を変えるのが大変であることは重々承知していますが、患者さんには「あれをしながら、これもやりたい」のを少しだけ我慢してほしいんです。そうでなければ、患者さん自身がリスクを背負うことになってしまうから。
 例えば、「まつ毛のエクステンション」が流行っていますが、薬剤にアレルギーを起こす人、充血する人がたくさんいます。だから「やめてね」とお願いするのですが、素直にやめてくれる人もいれば、繰り返し同じことで来院する人もいます。おしゃれしたい気持ちは分かるけれど、これから先のことも考えて、賢い選択をしてほしいと思います。
 また、目が乾く「ドライアイ」に悩む人の多くは、パソコンで仕事をしています。「適度に休憩をとって下さい」とは言うものの、それが難しいのは僕もよく分かる。それならば、「パソコン画面の位置を下にしてみては」と提案します。そうすると瞼が下がり、角膜の面積が減るので楽になるんです。眼の病気や悩みは、日々のちょっとした工夫、少しの努力で改善されますので、患者さん一人ひとりに心がけてほしいですね。
 もちろん、症状によっては治療が一進一退を続け、長引くこともあります。時間を要するので、患者さんには負担となりますが、それでも頑張って治療を続けてほしい。途中で放棄してしまうと完治しません。それは、とても残念で悲しいことです。やはり、患者さんに「良くなりました」と言って頂くことが、僕にとっても一番嬉しいことなんです。

睡眠、運動、リラックスが健康の秘訣

 僕が健康のためにしているのは、睡眠をよくとること、そして運動です。ジムに行くわけではないけれど、犬を二匹飼っているので、彼らの散歩が結果として良い運動になっています。二匹ともヨークシャテリアという小さい犬ですが、朝は早くから起こされて散歩、昼休みにも一度家に戻って散歩。先日は雪の積もる高尾山を歩きました。ものすごく元気なので、いつも散歩“させられて”いるんです。
 海でダイビングもします。こちらは治療ではなく、趣味として。オーストラリアのケアンズにダイビング仲間がいるので、先日も行ってきました。仲間とバーベキューをしたり、海亀と泳いだりしましたが、ほとんどは海辺で何も考えず、ぼーっとして過ごしました。基本的に、暖かい場所が好きですね。北海道育ちですが、寒いのは、もういいかな(笑)。

取材・文/瀬尾ゆかり(せお ゆかり)
フリーライター・編集者。編集プロダクション勤務を経て独立。医学雑誌や書籍、サイトの編集・記事執筆を多数手掛ける。ほかに著名人・文化人へのインタビューや、映画・音楽・歴史に関する記事執筆など、ライターとして幅広く活動している。

なかお眼科医院

医院ホームページ:http://www1.tcn-catv.ne.jp/nakao_ganka/
nakao_eye_clinic_b01.jpg nakao_eye_clinic_b02.jpg nakao_eye_clinic_b03.jpg
都会の真ん中にある「め医者さん」。働く人が来られるよう夜7時まで開いており、すぐ隣には薬局がある。
渋谷駅から徒歩7分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

眼科

中尾秀樹(なかお・ひでき)院長略歴
中尾秀樹院長
1991年 杏林大学 医学部卒業、札幌医科大学医学部附属病院 眼科学教室入局
総合病院 旭川厚生病院、苫小牧市立総合病院にて研修、
北海道立 江差病院医局長、眼科医長、札幌医科大学医学部助手を経て
2000年 青山こどもの城近くにて「なかお眼科医院」開業


■資格・所属学会他
日本眼科学会 眼科専門医、東京都眼科医会 代議員、渋谷区医師会、日本神経眼科学会、コンタクトレンズ学会、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、身体障害者認定医(視覚障害)、生活保護指定、都立 青山高校 学校医、区立 神宮前小学校 学校医、区立 千駄谷小学校 学校医、区立 千駄谷幼稚園 学校医



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