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[クリニックインタビュー] 2010/07/02[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第72回
安田内科クリニック
安田 公彦院長

学生時代の恩師の影響で内科医を選択

 私は父方、母方ともに祖父が医師で、ほかにも叔父、叔母、いとこなど周囲にたくさん医師がいて、うちの親以外はほとんど親戚が医師という環境だったので、進路に関して少なからず影響はあったと思います。
 また「ブラック・ジャック」や「白い巨塔」にも影響を受けましたね。山本学演じる里見先生に憧れました。子どものころの夢はパイロットだったのですが、視力が悪いとダメと聞いて、目が悪かったので断念しました。
 本格的に進路を決めたのは高校生のとき。医師になって青年海外協力隊で働きたいと思ったのがきっかけでした。内科を選んだのは、大学時代にお世話になった病理の先生の影響でした。学生が好きでよく勉強会などを開いてくれた先生で、本当にお世話になりました。進路選択のとき、内科と小児科で迷ったのですが、その先生に「内科は医学の王道だよ。これからは呼吸器が面白い」と勧められて呼吸器内科に決めました。
 もし内科医になっていなかったら、病理医という選択もあったかもしれません。医師は、誰でもそうだと思いますが、色々な病気のことを勉強したり診断したりする中で「それってどうしてなんだろう?」と考えるようになる。どんどん深いところを突き詰めて考えたくなる。そうすると必ず病理学的なところに行き着きます。そういう意味で病理学も面白いなと思いました。

クオリティ・オブ・ライフを重視した医療を

 日々の診療のなかで心がけていることは、「自分が、そして患者さんが納得できない治療はしない」ということ。そして、鑑別診断の思考過程をなるべく専門用語を使わずわかりやすい言葉で説明するようにしています。あとは患者さんになるべく笑って帰ってもらえるように、ということを心がけています。
 クリニックの基本方針は、「実効性のある医療」「クオリティ・オブ・ライフを考えた医療」をおこなっていくこと。たとえば、治療をするときには、ただ「薬を飲みましょう」「安静にしましょう」と指導するだけではなく、「どうして薬が必要なのか、どんな有効性や副作用のある薬なのか」「どういう状況だからどういう生活が必要なのか」「具体的にどうすればいいのか」などを示していくことが重要です。そうすることで患者さんは納得して治療することができるし、それが病気を治すことにつながると思います。
 また、病気を治すためにたくさんの薬を飲まなければならず、その結果、食事ものどを通らない状態になってしまう、ということがしばしば見られます。病気だけを見て患者さんの生活を見ようとしない治療は、本末転倒と言えるのではないでしょうか。患者さんの病状と生活背景を念頭に置いて治療の必要性をよく考え、患者さんが幸せに生活できるような治療を考えるのが、かかりつけ医の仕事であると思っています。
 患者さんのほうでも、何かあったときにすぐに診てもらえる「かかりつけ医」を見つけておくことは大切だと思います。通いやすいように、なるべく家の近くがいいでしょうね。病院を選ぶとき、近所の評判や口コミは確かに参考になりますが、実際に行ってみないとわからないこともあると思います。やはり人間同士のことなので、医師と患者さんにも相性というものがあるでしょうし。行ってみて「違うな」と感じたら、他の病院に行くなど、安心して通えるところが見つかるまで何件でも探していいと思いますよ。そして、決めたらその医師を信頼しましょう。これは大事です。

漢方医学の師匠に「医師としての姿勢」を教わる

 当院では漢方薬を取り入れた治療もおこなっています。漢方医学とは、くずれている体のバランスを正しい状態になるべく近く戻すことで、つらい症状をなくしていくことを目的としています。患者さんの病態、体の症状に合わせた薬を使うことで、一般的に西洋医学では病気ととらえられていない不定愁訴や体質の改善に役立つこともあります。
 ただ、漢方が万能というわけではないので、病状や患者さんの体質などを見ながら、漢方医学と西洋医学を使い分け、その患者さんにもっとも適した治療法を選択しています。
 患者さんのなかには「粉薬が飲めないので」と、最初は漢方薬を苦手に感じる方もいらっしゃいますが、「あなたの症状にはいちばんいいと思いますよ」と説明し、患者さんのほうも、飲んで効果が実感できると、次は漢方薬を希望するようになる方もいらっしゃいます。たとえば「○○さんは血のめぐりがあまり良くないことで、生理不順や肩こり、冷え性などの症状が出ているので、血のめぐりをよくする薬を使いましょうね」など、症状や薬の説明をなるべく丁寧にするように心がけています。
 もともと漢方には関心があったのですが、なかなか勉強しに行く機会がありませんでした。開業してから勉強を始めて、漢方の師匠である大野クリニックの大野修嗣先生と出会いました。講演会に行ったときにお話しする機会をいただいて、その場で勉強させてください、とお願いしました(笑)。その後、3年ほど大野クリニックに行って勉強させていただき、専門医を取得しました。
 大野先生には本当にたくさんのことを教えていただきました。漢方の知識はもちろんのこと、内科医としても大変尊敬すべき先生ですが、何より患者さんに対する態度が素晴らしい。大野クリニックはいつもとても混んでいて、毎日たくさんの患者さんを診ているのに、どんなに忙しくても絶対に患者さんの話を途中で切ったりせず、どんなときも急がず、焦らず、いつもニコニコして患者さんを受け入れる。
 漢方医学もそうですが、それ以上に大切な、医師として大事なことを教えていただいたと思っています。本当に、大野先生と出会えたことは自分にとって幸運でした。前述の大学時代の先生もそうですし、呼吸器病理を教えていただいた先生もそうですが、私は先生にはとても恵まれました。

医師を目指したときの夢に、いつかカタをつけたい

 開業して5年、最初はそれほど患者さんの数も多くなかったのですが、最近はありがたいことにたくさんの患者さんに来院していただいています。駅のそばですし、県庁が近い立地のせいか、仕事の合間や仕事帰りに立ち寄られる患者さんが多いので、平日の夕方や土曜日がもっとも混雑します。今は、一年のうちでもっとも病気の少ない季節ですが、冬場の風邪の時期や花粉症の季節は忙しいです。そんなときのリフレッシュ法は、昼休みの「ちょっとだけ昼寝」。30分ぐらい、忙しいときは15分でも、イスに座ったままでもちょっと寝ると、スッキリして楽になります。
 趣味は、サッカー観戦と映画鑑賞です。自宅は都内なのに浦和で開業したのはレッズのサポーターだからです。Jリーグ開幕の時からレッズサポです。シーズンチケットも買っているので、可能な限り観戦していますね。
 映画も好きで、年に40~50本ぐらいは観ています。診療がない時間には、よくひとりで映画館に行きます。洋画も邦画も、どんなジャンルでもみます。最近の映画では「孤高のメス」、お勧めです。忙しい毎日ではありますが、この2つの趣味がリフレッシュになっていると思いますね。
 これからも浦和で日々患者さんの治療をおこなっていくつもりですが、60才ぐらいになったらJICAのシニアボランティアとして海外に行って、より医療を必要としている場所で働いてみたいです。もともと医師になるきっかけとなった夢なので、いつかきちんとカタをつけたいな、という思いはありますね。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

安田内科クリニック

医院ホームページ:http://www.yasuda-clinic.jp/

待合室はきれいであたたかい雰囲気。院内には最新機器を導入し、各種検査を受けることも可能。JR浦和駅より徒歩3分、駅前県庁通り沿い。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、呼吸器科、アレルギー科、東洋医学科(漢方内科)

安田公彦(やすだきみひこ)院長略歴
安田公彦先生
1994年 聖マリアンナ医科大学卒業。
1994年 東京女子医大第一内科勤務
2001年 国立病院機構東京病院勤務
2003年 国立病院機構災害医療センター勤務
2004年 東京都保健医療公社大久保病院勤務
2005年 安田内科クリニック開設


■所属学会
日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会認定専門医、日本東洋医学会認定漢方専門医、日本アレルギー学会会員、日本感染症学会会員



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