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[クリニックインタビュー] 2010/07/23[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第76回
ミツイ眼科医院
高橋秀雄院長

眼科医は、職人に似ていると思う

 医師になろうと思ったきっかけはいくつかありますが、ひとつは、祖父が医師だったことでしょうか。祖父は医師なのに、その息子たち(私の父たち)は誰も医師にならなかったので、孫の代で一人なってもいいかな(笑)、と思ったのもひとつのきっかけでした。
 眼科を選んだのにもいくつか理由がありますが、ひとつは、早く一人前になりたかったこと。内科や外科などのメジャーで大きな科は、やはり一人前になるまでに時間がかかると思っていたので。また、大学を卒業するころは鍼灸・漢方などの東洋医学に関心があり、その後も勉強を続けたいと思っていました。その場合、西洋医学と見解が対立しない眼科のほうが勉強しやすいのではないかと密かに(笑)考えたことと、当時、漢方の権威だった先生が眼科の先生だったこと、なども理由でしたね。
 卒業後は、そのまま大学の眼科に入局したのですが、その時最初についた教授、渡邉郁緒先生が私にとって最大で唯一の恩師でした。眼科医として必要なこと、ほとんどすべてを渡邉先生から教えていただきましたから。眼科は、卒業して最初の1年で習うことが、その後の診療に必要なすべてといっていいと思います。職人技のような技術が必要な分野なので、道具だけがあってもダメなのです。たとえば、眼底を見る技術でも、顕微鏡を使った手術でも、教科書やビデオでいくら見ても実感としてはわからない。実際に手をとって「こうやるんだよ」と教えてもらって初めてわかるようになるのです。そういう意味では、医師というより大工さんの仕事のほうが似ているかもしれませんね。その、職人としての技術を、文字通り手取り足取り全部教えてくださったのが、渡邉先生でした。

家庭医としての任務は「振り分け」「診断」「情報提供」

 その後、開業してすでに20年以上が経ちましたが、日々、診療をおこなう中で心がけていることは、主に3つあります。そして、それは当院の基本方針とも通じています。
 まず1つ目は、すべての市民に対し「眼科の家庭医」としての機能を完全に果たしたいということ。私の診療所では、眼科におけるすべての疾患を扱うことはせず、「振り分けること」を第一の目的としています。眼科は、内科や外科などと比べると病気の知識があまり広まっていないため、「病気なのか、病気じゃないのか、わからなくて不安」と受診される患者さんも多くいらっしゃいます。ですから、第一次医療機関として、「様子を見ていい症状」「治療が必要な症状」「上級病院で扱うべき症状」のいずれかを判定し、二次、三次の患者さんは専門の医療機関へ紹介するようにしています。
 2つめは、慢性疾患の初期徴候を早期発見、診断すること。眼科の疾患は、残念ながら治らないものが多いのが現状です。ただ、診断はこまかくすることができますし、病気をきちんと見つけることができれば、今の痛みを取ることはもちろん、今後の心がまえをすることもできます。そしてそれが、予防の可能性を広げることにもつながると考えています。
 3つめは、患者さんにとって日常的に必要な、基本的な知識をきちんと伝えること。ともすると、最先端の医療にばかり目がいきがちになりますが、私は先進医療にはノータッチです。それよりも、街の病院に来る一般の患者さんに必要なのは、眼鏡をどうするか、ものもらいができたらどうすればいいかなど、もっと日常に根づいた情報だと思うのです。そして、必要な情報がまだまだ正しく行き渡っていない、つまり、誤解や無知識がとても多いと感じます。ですから、眼科としての基本的な知識と情報を患者さんに提供することこそが、医師として何より大切な仕事だと思っています。

「機械いじり」と「健康食品」が好き

 もし、眼科医になっていなかったら、コンピュータ技師になっていたかもしれません。父が電気関係の仕事をしていたこともあり、幼いころから電子部品などが好きだったので、医師にならなかったら、そちらの方向に進んでいた可能性が高そうです。今でも機械いじりが好きで、パソコンは秋葉原で部品を買ってきて、自分で組み立てるのが趣味です。完成したパソコンを操作することは、あまり得意ではありませんが(笑)。
 ほかに好きなのは、健康食品です。なかでも今のマイブームは「水素を飲む」こと。粉末のものをカプセルなどに入れて飲むのですが、飲むと疲れが取れて体がうんと楽になるのです。ですから、今は「疲れたら水素」です(笑)。健康食品は、とにかくありとあらゆるものを試してきましたよ。最初は漢方から始まって、これは開業前に2週間中国に留学して、中国の漢方医の医師免許を取得したほど。今もつねに情報をチェックして、健康食品で目新しいものが出たら、片っ端から試しています(笑)。
 あとは、地元の温泉巡り。休みの日には、車で10~15分ぐらいで行ける近場の温泉に行くのが目下の楽しみです。

知識の普及につとめていきたい

 今後も、基本方針に沿って診療を続けて行きたいと思いますが、これからはさらに、「知識をたくさん広めること」に、より力を注いでいきたいと考えています。
 例えば、最初は医師がひとりで始めた診療所で、余力が生まれて医師を2人、3人と増やすことができた場合、それまで一般診療だけだったのが、手術をするようになり、入院施設を作り、さらに大がかりな手術ができるようになり、診療所が病院になる……、つまり一次医療機関から二次、三次医療機関へと診療の枠を広げていく方向性も一つだと思います。
 一方、医師が2人、3人と増えたなら、交替で勤務して、今まで週5日だった診療日を6日、7日にして、休みなく診療所をあけておく。一次の疾患しか診ないけれど、いつでも開いていて、患者さんに必要な情報をたくさん発信する。そういう広げ方の方向性もあると思うのです。そして、私はそちらを選択したいと考えています。
 つまり、お金と体力が余っているなら、手術の器具を買ったり手術をしたり、ということではなく、診察日を増やしたり雑誌を発行したりして知識を広げたいと思うのです。現在、当院では医師3名が交替で勤務して、土日、祝日も休みなく診療をおこなっています。また、定期的に院内誌「ひとみつうしん」を発行し、眼科にまつわるさまざまな情報を発信しています。

 今後の展望としては、眼科の基本二大疾患といえる「白内障」と「緑内障」の知識普及を徹底させたいと考えています。第一弾として、白内障の解説小冊子を作成し、4月から患者さんに「白内障 養生ガイドブック」と題して配布しています。まず、「健康な状態」と「病気になることによってどんな変化が起こるのか」ということから始まり、「原因」「何%の人がかかるか」「男女どちらが多いか」「診断はどうするか」「治療法はどんなものがあるか」「手術」「薬物療法」「日常生活での注意」「手術の方法」「術後の養生」まで、白内障のすべてを1冊にまとめたものとなっています。
 緑内障も年々増えつつあるので、第二弾として、今は緑内障の教科書も作成中。患者さんにとって必要な情報を、専門用語から分かりやすい言葉に咀嚼し直して、まとめています。やはり、正しい知識を広めることこそが病院の存在目的であり、医師の任務だと思う気持ちは今後も変わらないと思います。将来的には「さいたま市の全世帯、1家に1冊」。それが今後の目標ですね。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

ミツイ眼科医院

医院ホームページ:http://www.hitomi-news.com/

明るい待合室には、自由に持ち帰れるリーフレットや院内誌が置かれている。土日、祝日も開院しているので安心。
JR大宮駅より徒歩5分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

眼科

高橋秀雄(たかはしひでお)院長略歴
高橋秀雄(たかはしひでお)院長
1980年 浜松医科大学医学部医学科卒業
1980年 浜松医科大学医学部眼科学講座入局
1982年 静岡県袋井市立袋井市民病院眼科勤務
1985年 浜松医科大学医学部眼科学講座文部教官助手1987年 ミツイ眼科医院開設


■資格・所属学会他
日本眼科学会会員、日本眼科医会会員



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