[クリニックインタビュー] 2010/10/22[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第90回
吉祥寺グリーンクリニック
菅野淳子院長

一番尊敬するのは、仕事に真摯だった父

 当院の専門は内科、消化器科、そして肛門科です。医師になって最初に選んだのが消化器科だったのですが、理由は「内科にして体のなかを覗くことができる唯一の科」だから。体のなかに通る消化器管をカメラで見ながら回復の度合いを確認できる、そんなところに魅力を感じたんです。また、私がお腹を壊しやすく、胃が痛くなりやすかったことも理由のひとつです(笑)。
 開業にあたって内科・消化器科の他に肛門科を選択したのは、「女性患者さんのお役に立てるかもしれない」と思ったからです。お尻の病気を持つ方は「できれば見られたくない」と恥ずかしさを覚え、病院に行くのを先延ばししてしまうケースが多く見られます。でも医師が女性なら、そんな女性患者さんにも安心して治療を受けてもらえるかもしれない――そう考えて新たに肛門科を学びなおし、数年後に開業しました。
 医師として尊敬する先生もたくさんいますが、一番尊敬しているのは父です。私が医師になったのも、父の勧めがきっかけなんです。頑固でうるさい父だったので、反発したこともあります。だけど一方で、子供をとても可愛がってくれる子煩悩な父でもありました。
 父は昔かたぎの商売人だったので、仕事に関してとても厳しく、子供の頃はそれが嫌でした。だけど今、私も仕事を持つようになってからは、父の仕事に対する真摯な姿勢を見習うようにしています。すでに亡くなってしまったので叶いませんが、できれば父ともっと仕事の話をしたかったですね。きっと怒られるだけでしょうけれど(笑)。

ちょっとした心がけで、痔の悪化は防ぐことができる

 痔は生活習慣病なので、男性はもちろん、女性にも身近な病気です。特にかかりやすいのは、便秘などお通じのトラブルがある方。便が出にくい方には必ず何らかの原因がありますので、食生活を見直すなどの対策が必要になります。自分だけでお通じをコントロールするのが難しい方は、一度病院でご相談されるとよいでしょう。
 また女性の場合、妊娠・出産でも痔になりやすいですね。妊娠中の痔の原因には、ホルモンの関係で便秘になりやすいこと、お腹が大きくなってお尻が圧迫されること、お産のときにいきむことなどがあります。特に便秘やお産でいきむのは、お尻に大きな負担がかかります。これらのことは妊娠した以上避けることができないので、仕方ない部分もあります。それでも普段から気をつけていれば、痔の悪化を防ぐことは可能です。
 その他、ずっと同じ姿勢でいることもお尻によくないですね。女性の場合、デスクワークで一日中座りっぱなしの方もたくさんいます。でも、せめて1時間に1度は立ちあがって体を動かしてほしいと思います。あとは、「冷え」。特に若い方はシャワーだけで過ごしてしまいがちですが、湯船にはきちんと入りましょう。
 またお年を召した方に多いのですが、お尻の筋肉が弛緩し、ゆるくなってしまうことがあります。その結果、ちょっとしたことで失禁したり、腸が脱してしまうことも。これを防ぐため、お尻の筋肉をきゅっと締める運動をお勧めしています。年配になるとお尻がゆるむのは珍しいことではなくなりますが、対策を知り、早いうちから行うことで、将来の体は大きく変わってくるのです。
 以上のように、普段のちょっとした心がけで痔になること、痔が悪化することは回避できるので、ぜひ覚えておいて頂きたいですね。

治療には、患者さんと医師の信頼関係が大切

 痔がひどく悪化してしまった患者さんには、手術のお話をさせて頂くこともあります。でも初めて手術される方にとっては、とても怖いですよね。そのため、手術の際はいろんな角度からお話をさせて頂き、患者さんにちゃんと理解し、納得して頂くことを重視しています。
 どの病気にも言えることですが、治療には早い段階での診察が大事です。できれば「何かあったらすぐに頼れる先生」を一人見つけておくといいですね。病気の悪化を防ぐ意味もありますが、「いざ手術」となったときにも、患者さんと医師との信頼関係がとても大切になるからです。
 痔に関して言えば、肛門の内側にできた痔は一度できるとなくなることはありません。でも、生活習慣の改善やお薬などで症状を抑え、上手に付き合って行くことは可能です。皆さん痔に関してあまり知らなかったり、勘違いしてしまうことも多いのですが、正しい知識や情報を私からお伝えできればいいなと思っています。「何か変だな」と思ったら、悩んでいないでお気軽にご相談頂きたいですね。「女医さんは怖い」イメージがあるかもしれませんが、私はこんな感じなので(笑)、ご安心くださいね。

家族がいるから、仕事ができる

 趣味は、野球観戦です。土日に家族で巨人戦へ出かけるのが、もっぱらの楽しみ。勝ったり負けたり、一喜一憂しています。小学2年生の子供が野球に興味深々で、「将来は野球選手になる」なんて言っています。親としては「頑張ってね」と言うしかありません(笑)。
 そんな息子と、家事・育児をいっしょにやっていく夫。私にとって「家族が第一」、家族がいるから仕事ができる。だから、できるだけ一緒にいたいですね。いつかちゃんと子離れできるか、心配です(笑)。

取材・文/瀬尾ゆかり(せお・ゆかり)
フリーライター・編集者。編集プロダクション勤務を経て独立。医学雑誌や書籍、サイトの編集・記事執筆を多数手掛ける。ほかに著名人・文化人へのインタビューや、映画・音楽・歴史に関する記事執筆など、ライターとして幅広く活動している。

吉祥寺グリーンクリニック

医院ホームページ:http://www.kichijoji-green-clinic.com/index.html

医師・スタッフはすべて女性で、雰囲気の院内はいつも明るい。子連れの患者さんが受診しているときは、スタッフが子供の面倒を見てくれる。
吉祥寺駅より徒歩3分。詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

内科、消化器科、肛門科

菅野淳子院長略歴
菅野淳子院長
1993年 帝京大学大学院第2内科
1999年 豊見城中央病院内科
2000年 板橋中央総合病院消化器科
2002年 さくら病院内科
2004年 武蔵野病院内科
2006年 吉祥寺グリーンクリニック開業


■所属学会
日本内科学会、日本大腸肛門病学会、日本消化器病学会、日本内視鏡学会


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