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[クリニックインタビュー] 2010/10/29[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第91回
川口あおぞら眼科
清水潔院長

「一貫してできる」と眼科医に

 私の場合、父が内科医だったのですが、実は「父の背中を見て医師を志した」というわけではありません(笑)。高校生のころ、「将来何になろう」と考えたとき、「嘘をつかない職業がいい」と思ったのです。嘘をつかないで、一人で生きて行けて、あとは、人に使われたくないという思いがあったので、自分の意思でやりたいことができる仕事と考えて、医師を選びました。真剣に勉強し始めたのは、高校2年の終りころです。遅いですね・・・(笑)。
 眼科を選んだのは大学の6年生、臨床実習が全部終わった後で、最後までどこに行くか決めていませんでした。薬を使って治すより、切って治す外科系に興味があったのですが、いわゆるメジャーの外科、消化器外科や心臓外科などは、チームプレーが必要で僕はそれが苦手(笑)。
 自分は学生時代テニスをやっていて、テニスにはシングルスとダブルスしかないから、2人までなら一緒にできるかな、と思っていて、眼科は術者と助手で手術をするのでダブルスだけど、助手は助手で、術者になればほとんど自分が重要なポジションになれるからいいかな、と。また、内科は治療して手術が必要だと思うと外科などに患者さんを送りますし、外科も内科から引き受けた患者さんを手術して、また戻すというシステムですが、眼科は一人の患者さんに終始一貫して、診断から治療、手術、術後ケアまですべてひとりでできるということも魅力でした。さらに、医学部でも大学によってそれぞれ得意分野があって、私の出身大学は眼科が全国的に有名だったのです。

 大学病院時代にお世話になった現教授とは、よく意見が異なり夜中までディスカッションもしましたが、医師として大切なことを教わりました。ひとつめは、「医療の正義は何か」ということ。「医療の正義とは、医師の正義でもなければ、病院の正義でもなく、患者さんの正義が医療の正義だ。」と教えられました。また、前教授からは、「あなたは患者さんのために何ができますか? それを全部やりなさい」という言葉も印象的でした。その教えは今も、いつでも心の中にあります。


患者さんに伝えるのは「結論」が先

 当院の基本方針、そして私が日々、患者さんの治療をするときに心がけていることは、まず、専門用語を使わず、なるべくやさしい言葉でわかりやすく説明すること。わからない方には、来院されるたびに何度でも話します。患者さんの立場になって、自分が診てもらう立場だったら何を言って欲しいかを考えたら、何より安心感を与えることこそ大切だと思ったのです。言ってみれば患者さんは、安心したいからお金を払って病院に来るのでしょうから。来てよかった、と安心して帰ってもらいたいと思っています。
 患者さんにとって大事なのは、難しい理論より、今何をしたらいいか。けがをした患者さんでも、白内障の手術を受ける患者さんでも、いちばん知りたいのは「治るのか、治らないのか」「見えるようになるのか、ならないのか」だと思うのです。だから私はまず、最初に結論をお伝えするようにしています。「大丈夫、治りますよ」「手術をすれば見えるようになります」と言って、安心してもらってから病気の原因や、治療の説明などをします。自分がもともとせっかちなところがあるので、自分の知りたいことがわからないまま長々と説明されたら患者さんはイライラしてしまうと思うからです。「だから、結論は何ですか?」って。
 大学の若い先生に多いのですが、白内障の手術前の説明でも、よく「ここをこう切開して水晶体を超音波で砕いて」など、手術の方法や理論を長々と説明しがちです。しかし、患者さんが知りたいのはそういうことより、白内障手術後何日めで見えるようになるのか、顔を洗えるのはいつか、いつから車の運転やスポーツがいつからができるのか、手元は見えるようになるのか、眼鏡は必要か、ということですよね。ですから、そういう説明こそ懇切丁寧にするようにしています。

「反省」はしても、「後悔」はしない

 すべての患者さんに「治ります」「見えるようになります」と言えればいいのですが、残念ながらそう言えないこともあります。来院したときには、かなり悪い状態になっている患者さんもいますが、そういうときに「もっと早く来ていたらよかったのに」とは絶対に言ってはいけないと思うのです。それを今言っても、どうにもできないのですから。それより「病院に来た今、ここから、できることを考えましょう」と言うようにしています。
 やっぱり世の中、うまくいかないこともあって当たり前です。僕も「もっと患者さんのためにこういうふうにすればよかった」と思うことは今でもあります。でも、過ぎたことを悔やんでも何も生まれません。ですから、失敗は次に成功するためのものと考え、反省はしても後悔はしないことに決めています。とにかくいつでも超ポジティブに、「ダメならダメで、またそこから考えよう」と思っています。また、そう考えることが今まで診察させて頂いた患者さんに対する恩返しだと思っています。
 そして、いつでも粋に、格好いい医者でいたいのです。野暮なことは苦手で、だからよく「顔で笑って心で泣いて、何はなくてもやせ我慢」などと言っています。実は、僕には手術をするときの、自分にとっての理想の形があるのです。僕がこの仕事をしていて最もやりがいを感じるのは、例えば白内障の患者さんの手術をしたときに、患者さんの「こう見えたい」という希望に、結果がピッタリはまったとき。患者さんによって、どう見えたいかという要望はさまざまで、いかにその人の希望に合わせられるかがテクニックを要するところなのですが、誰もが同じような結果が出せるとは限らないし、同じような人でも、全例同じ結果になるとも限らない。ですから、確実にうまくいくように日々努力し、いつでも新しい成功を追い求めていたい。時間があるときはいつも手術について考えていて、それは僕にとって、もう趣味のようになっています。
 野球で例えるなら、簡単な球を難しく取ってファインプレーにするより、難しい球をいとも簡単という顔で取って知らんふりする、そっちのほうが絶対格好いいと思うのです。ですから自分も、難しい手術をサラッとやりたい。そのためには確かな技術と、新しいことへの勉強が必要です。しかし「患者さんのために一生懸命」などと野暮なことは言わずに、何気なくやっているように見せて、あとから見たらよくなっていた、というのが理想ですね。やっぱり粋に、カッコよく。これからもずっと、そういう医者を目指したいと思っています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

川口あおぞら眼科

医院ホームページ:http://www.aozoraganka.co.jp/

平日は夜7時まで、土・日曜日も午前中は診療しています。JR川口駅より徒歩3分、川口駅前医療モール内。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

眼科

清水潔(しみず・きよし)院長略歴
清水潔院長
1987年 昭和大学医学部卒業後、同大学眼科学教室入局
1991年 横浜逓信病院眼科
1992年 比嘉眼科病院(沖縄県)
1993年 昭和大学病院眼科助手
1995年 富士吉田市立病院眼科医長
1997年 昭和大学病院眼科講師(医局長を兼務)
2005年 川口あおぞら眼科開設


■所属学会
日本眼科学会認定眼科専門医、昭和大学眼科兼任講師、日本眼科手術学会、日本網膜硝子体学会、日本眼内レンズ屈折手術学会(JSCRS)、アメリカ眼内レンズ屈折手術学会(ASCRS)、日本コンタクトレンズ学会、他


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