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[クリニックインタビュー] 2010/11/19[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第94回
丸山耳鼻咽喉科医院
丸山晋院長

医師は世の中のボトムを押し上げられる仕事

丸山院長
一人の人間として一人の人間である患者さんと向き合う丸山院長

 まだ幼いころ、ぼんやりと思っていたのは、悲惨、苦痛、不安、悲しみなど、世の中の悪いところやいけないところ、流される涙を少しでもなくすための仕事がしたいなぁということでした。世の中のトップを押し上げる仕事ではなく、できれば世の中のボトムを押し上げることで人の世の役に立ちたかったのです。
 もちろん、そういう仕事はたくさんあります。けれど、数あるボトムを押し上げる仕事の中から医師を選んだのは、生まれた環境の影響が大きかったかもしれません。丸山家の医家としての始まりは定かではありませんが、耳鼻科としての歴史は、明治に日本で耳鼻科というものができたころに、京都で和辻先生とともに活躍した曽祖父の丸山忍に始まります。今でもなくてはならない手術器具のひとつに丸山式と名のつくものがあります。母方も古くからの医家で、こちらも祖父は耳鼻科医でした。叔父や叔母にも医師が多く、医師になることが私にとって一番自然な流れであったことは確かです。とはいえ、だからこそ高校のころには迷い悩み、一時は自分の進路から医師への道を外していたこともありました。けれど結局、医師になることを選択していたのは、先祖たちに対する敬意と憧れであったのだと思います。

大手術をこなす勤務医から地元の開業医へ

 私が医師になることを決めたとき、父はまだ勤務医でしたから、親の跡を継ぐというような発想はありませんでした。そのため専門も自由に選べたわけですが、耳鼻咽喉科であれば、外科系の頭頸部外科と、緻密な思考が必要とされる領域との両方を含みます。それで『耳鼻咽喉科・頭頸部外科』の教室に入局しました。入局して耳鼻咽喉科・頭頸部外科を広く全般に学んだのですが、はじめはめまいの研究班に参加しました。が、後に頭頸部外科のダイナミックな世界に惹かれて腫瘍の研究班のメンバーとなり、腫瘍が専門となりました。勤務医のころには、12時間以上もかかる大掛かりなものも含め、数多くの手術をおこなっていました。
 けれど、開業していた父が体調を壊したのを機に、勤務医をやめて父の医院を手伝うことにしました。子どものころには、忙しくて家族と過ごす時間も少なかった父に対し不満もありましたが、自分が医師になってから、同業医師たちや患者さんたちから聞かせていただいた話で、父がいかに無欲で勤勉で真面目で誠実で温厚で患者さんに慕われる優しさをもった医師であったか、さらには診断・治療能力も立派なものであったか、を知りました。そんな尊敬する父の跡を継ぐことができて、良かったと思っています。

患者さんの思いを受けとめ共感できる医師に

丸山医院受付

 勤務医から開業医になって最初に思ったことは、開業医は患者さんの生活の傍にいなくてはならないということでした。勤務医のころにも、患者さんと相対するときは、「病気を治すことを通じてその人の役にたつのだ。病気だけを診ていてはだめで、人をみなくてはならない」と心していたつもりでした。でも開業医に求められるものは、さらに人の暮らしの中に入り込んで、その中で生きる人を見つめる目なのだということを知りました。
 治療とは、「患者さんの苦痛を取り除くために行われるべきもの」と私は考えます。幸せに一歩でも近づく、あるいは少しでも不幸から遠ざかるためのものです。ですから医師は、医術の専門家であるだけでは駄目。一人の人間として、一人の人間である患者さんの前に立ち、専門の技術と知識を使って、人の幸福に貢献しなくてはなりません。
 訴えはあるものの病気が見つからないという患者さんにも、決して「なんともない」とは言うべきではないし、治しようがないと思われる患者さんに対しても、「どうしようもない」とか「しかたない」とは絶対に言ってはいけないのです。困っているからここに来てくださっているのですから、我々はプロとして、その期待に応える義務があります。
 まずは「一人の人間」として患者さんの想いを受け止め、共感したうえで、医学という専門職能をどう使えばその人の役に立てるかを考えることこそ、医師の務めと思います。もっと言うと、医学・医術は医者のものではなく、それを必要とする患者さんのものなのです。我々医者は、先祖伝来の遺産である医学・医術を、それを必要とする人々に橋渡しする、メッセンジャーだと思っています。

より良い治療のためにはハードにも工夫を

電子カルテの導入や医療機器の増設など医療設備の充実を図っています。

 勤務医時代から、医師は“ただ治すだけ”でよいというものではないと思って診療をしてきました。我々は、 “ただ治すだけ”ではなく、患者さんに「安心と、心の平和と、満足」を与えなければならない、と。だから、病状の見立ての説明から治療方針、今後の見込みなどについては、なるべく詳しく分かりやすく、小まめに説明するようにしています。
 また、治療のためには、設備や施設などハードの部分も疎かにできません。当院では院内改装をおこなって、診察室のスペースを広げ、入り口の段差をなくし、バリアフリー化しました。また、待合イスを増設し、少しでも多くの患者さんに座って待っていただけるようにしました。靴を脱がず、土足で診療を受けられるようにしたことは、患者さんにとても好評です。さらに、鼻洗・ネブライザー・ノド吸入などの機器を増設し、診療後の吸入などの順番待ち時間の短縮化をはかりました。最新の電子カルテシステムの導入も、診療終了後の領収書や処方箋の発行待ち時間を短縮してくれるものです。これらの工夫や努力の結果、患者さんの医院にいなくてはならない時間は格段に短くなり、待合室はあまり混雑しなくなったものと自負しております。

“めまい”の専門家は耳鼻科です

 実は、少し前に私自身が病にかかり患者の立場を経験しました。私はそれまで、「自分は誰よりも患者さんの立場に立って患者さんのためを思うことができる医者だ」と自惚れていました。が、自分が患者になってみてはじめて、自分の想像力がまだまだお粗末で貧弱で至らないことを思い知りました。そして同時に、「患者として医師に感謝できることのありがたさと幸せ」も知ったのです。私はずっと、患者さんに感謝などされずとも、患者さんが幸せに笑ってくれさえすればそれで十分だと思っていました。人の世話になったことを心の負担にして欲しくなかったのです。が、“人に感謝できる幸せ”を知ってしまった今は「医師として、患者さんに感謝されることを大切にしよう。感謝されるような仕事をしよう。そうして人を満足で幸せにしてあげることができるように努力してゆこう」と思っています。
 最後に一つ、“めまい”に苦しんでいらっしゃる皆さんにお伝えしたいことがあります。“めまい”で悩んでいらっしゃる方の多くが、“めまい”を専門的に扱っているのが耳鼻科だということをご存じなく、何軒もの病院を渡り歩いたのち、やっと耳鼻科に辿りつかれていることがとても多いのが残念でなりません。“めまい”が気になっておられる場合は、是非ともお近くの耳鼻科をお訪ねくださるようお勧めいたします。

丸山耳鼻咽喉科医院

医院ホームページ:http://www.myclinic.ne.jp/maruyama_iin/pc/index.html

詳しい道案内は、医院詳細ページlから。

診療科目

耳鼻咽喉科、気管食道科、頭頸部外科

丸山 晋(まるやま・すすむ)院長略歴
1990年 国立高知医科大学(現高知大学医学部)卒業
1990年 京都府立医科大学・耳鼻咽喉科学教室入局
1994年 京都府立医科大学・耳鼻咽喉科学教室・助手
1997年 近江八幡市立病院・耳鼻咽喉科・医長
2000年 京都府立与謝の海病院・耳鼻咽喉科・部長
2002年 丸山耳鼻咽喉科医院(2006年より同院・院長)


■資格
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本気管食道科学会認定専門医、日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医、身体障害者福祉法認定医(耳鼻咽喉科)

■所属学会
日本耳鼻咽喉科学会、日本気管食道科学会、日本聴覚医学会、日本甲状腺学会、耳鼻咽喉科臨床学会


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