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[クリニックインタビュー] 2011/01/21[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第100回
手稲あけぼのレディースクリニック
玉川晶子先生

二人体制で出産も扱える医院を開設

ざっくばらんな言葉がポンポン飛び出す玉川先生。患者さんの話では目を潤ませる一面も

 私が福江先生とペアを組んでこのクリニックを開院したのが約5年前。その前は札幌鉄道病院(現JR札幌病院)で福江先生は医長、私は主任医長を務めていました。
 産婦人科は体力勝負ですから、札幌市内でも先生方の高齢化などで分娩を扱う医院が減りましたし、新規開業でもお産を扱わないケースが多いです。私は女性の一生に付き合える産婦人科が好きでこの道に入ったのですが、クリニック開設に当たって生涯の中でも大切な“お産”を抜くわけにはいかないと思いました。そこで、当時から息ピッタリのパートナーだった福江先生を誘ったところ幸いにもイエスと言ってくれて、今はお産の当直や外来の産科・婦人科担当を交代制で務めています。
 うちの医院は24時間体制だし、土日も対応しています。だって、働いているお母さんが平日に受診するのは難しいでしょう?私なんて、忙しいから妊娠中は自分で妊婦検診をしていたもの(笑)。そういったことをはじめ、患者さんである女性が気軽に安心して来られるようなクリニックであるよう心がけています。

「もう来ない!」と言った患者さんがまた診察に

 私はサバサバとした体育会系のタイプ。おしゃべりでシャレも飛ばすし、言うべきことはちゃんと言う。超音波映像を見ながら妊婦さんに「胎児がちっちゃいのに、この体重は食べすぎだよ。もっと気をつけないとお産は取り上げないよ」なんてね。向こうも「すみませーん」って笑ってます。
 もちろん、相手によって言葉は選びますよ。特に初診では、その人の表情を見ながら対応を判断します。何を求めてここに来たか、何を期待されているのか。こちらはだまって話を聞くだけのほうがいいときもあれば、ハッパをかけたほうがいいときもある。治療の選択肢は患者さんに選んでもらっているけれど、逆にこの方法しかないという時はしっかりと説明します。時には細かい駆け引きも必要で、患者さんをつき放すときもありますよ。もうこちらのクリニックには来ないかもしれないような言い方をして。もちろん、こちらはいつでも受け入れる気持ちは伝えます。実際に「もう二度と来ません!」と、捨てゼリフを言って帰った患者さんもいました。でも、やはり後になってまた診察に来ていたんですよね。「あれ?」って、お互いに笑って。
 外来の患者さんは、福江先生か私か、好みで選んでいる方もいるようです。福江先生は乙女チックなタイプで、お産や子どものことが大好き。私はどちらかといえば、婦人科や外科的なことが好きかな。医師になるきっかけは手塚治虫の『ブラック・ジャック』でした。病気を治すことの素晴らしさはもちろん、医術以上に人間としての資質が求められるこの職業に強く惹かれたんです。今も本当に人間性が問われる仕事だと思っていますよ。

患者さんに成長させてもらっている

ロビーにはインテリアコーディネーターによる季節ごとの飾りつけが。「患者さんだけでなく私の楽しみでもあるんです」と玉川先生

 この1週間も、半分は当直でここに泊まり込んでいました。多いときは週に7日というときもあります。もう、このクリニックが自分の家みたいなものです。ひと晩に3人、4人とお産が続くときはさすがに辛いですね、食事や睡眠どころじゃなくて。それでも出産に立ち会う喜びはありますし、「よくがんばったね」と泣けるようなお産も見てきました。
 うちには更年期外来もあるのですが、身体症状だけでなく心の悩みを持つ方が割と多いんです。女性は家庭のさまざまなことを抱えていたりしますからね。最初は漢方薬などを処方しますが、体との相性をみるためにもう一度来てもらう。そのうちに、向こうから悩みを話してくれたりします。私も「あなたは必ず良くなるよ、底からあとは上がるだけだよ」って、自分の経験も含めて励ましたりして。「つらいことは自分の肥やしにしていこうよ」とも言いますね。
 私が感動するのは、多少の薬を使いながらも患者さん自身が症状や悩みを話していくうちに、みずから自分のいろんなことを発見して、そして精神的に強くなっていく過程です。表情も、最初に来た時と2回目、3回目の時ではまったく変わってくる。その立ち直っていく姿を見せてもらうことは、私も医師として、また人間として学ばせてもらっています。患者さんが良くなって「先生、ありがとう」なんて言われると「こちらのほうこそありがとう!」と言いたくなっちゃう。
 患者さんたちの生きざまを見せてもらうことは、もう自分の頭というか、体にしっかりと焼きつくんですよね。独立する前の病院時代から、新米だった私に「先生、ありがとうございました」と感謝してくれた患者さん、がんでありながらも周りへの気配りを絶やさなかった患者さんと、いろいろな方から自分の糧となる大切なものをもらってきました。それを、これからの患者さんに返さなきゃいけないと思っているし、また今だって患者さんにもらい続けているんですよ。

産科医療の火を灯し続けたい

 クリニックのHPには「なんでも掲示板」というコーナーがあります。例えば、性交渉で避妊を失敗してしまった女性が、この掲示板への書き込みでアフターピルの存在を知ったらどんなに気が楽になるか。そんなふうに悩んでいる人たちが、有益な情報を知るためのちょっとしたきっかけになればと思っています。夜中の2時や3時でも、割とこまめに返信していますよ。私の趣味でもありますね、いや、ライフワークかな?
 プライベートでは、とにかく体を動かすことが好きです。学生時代からバレーボール、バドミントンと続けてきて、昔はアスリートか体育の先生になろうと思ったぐらい。でも、相手がいるスポーツだと今は時間的に無理なので、独りでよくランニングをしています。
 だいたい1回走るのに1時間、距離は10キロぐらいかな。汗をかくのが気持ちいいし、走りながらいろいろと考えていることもある。夜中はさすがに危ないので、近所のフィットネスクラブに行きます。ランニングマシーンに乗って、自分がネズミになった気分で走っていますね。もちろん、携帯が鳴ればクリニックにとんぼ返りです。
 実は、私もこの秋に手術を受けて1週間入院していました。本当は病院で2週間ぐらいゆっくりする予定だったけど、気づいたらこのクリニックで診察をしてました(笑)。本当に自分をバカだと思うぐらい、この仕事が好きなんですよ。
 一生続けていきたいけれど、体力勝負の現場なので年齢的な限界もあります。良きパートナーである福江先生もそう。私たちの学生時代は、男性優位だった産婦人科の世界で、今は引退された堀千鶴子先生や時計台記念病院の藤井美穂先生など女性の先輩たちが頑張って道を切り開いてくれました。うちのクリニックでも新しい女性医師を育てていきたいので、この建物に居住スペースを増築して、子育てをしながら勤務できるようなプランを着々と進めているところです。

取材・文/高橋明子(たかはし・あきこ)
東京の業界紙や編集プロダクション勤務を経て、札幌移住を機にフリー。各種雑誌やウェブサイトで地域情報や人物、住宅などの取材を行う。

医療法人社団 手稲あけぼのレディースクリニック

医院ホームページ:http://www.teine-alc.jp/

写真左:札幌市の西側、小樽市とのほぼ境にある。車で数時間かけて通う患者さんもいるとか。
写真中央:明るく開放的な待合ホールには幅広い世代の患者さんが訪れる。
写真右:ベッドわきのいすに家族が座ってお腹にいる赤ちゃんの超音波映像を見ることもできる。
JR函館本線・手稲駅北口よりJRバス【循環手40】循環線、または【手41】手稲山口団地行きに乗り「曙(あけぼの)6条2丁目」下車、徒歩1分。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

産科・婦人科、子宮内膜症専門外来、更年期外来、思春期外来など

玉川晶子(たまかわ・あきこ)院長略歴
1985年 札幌医科大学卒業
同年 札幌医科大学産婦人科講座入局
斗南(となん)病院産婦人科勤務、自治医科大学研修、札幌鉄道病院(現JR札幌病院)勤務を経て
2001年 札幌鉄道病院産婦人科主任医長
2005年 手稲あけぼのレディースクリニック開設


■所属学会
日本産婦人科学会、日本東洋医学会、日本不妊症学会、日本感染症学会


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