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[医療人] 2011/04/08[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第110回
大道内科・呼吸器科クリニック
大道光秀先生

元気になれば、医師になりたい

呼吸器疾患では北海道トップレベルの大道先生。難病サルコイドーシスの患者も今までに1600人近く診療している

 私は1歳くらいの時に難病のネフローゼ症候群になったので、小学3年生ぐらいまでは学校の思い出よりは病院の思い出しかありません。体のむくみがひどく安静を強いられていたので他の子どもと遊ぶこともできず、ひどい時は病院で入院か、それ以外は家で静養している生活でした。当時は治療法もなく、プレドニンという薬がありましたが今の値段でいえば1~5万円ぐらいだったでしょうか。そんなものは買えませんから家でじっとしているしかない。当時のお医者さんも「生きるか死ぬか、なるようにしかならないだろう」と言っていたそうです。その頃から「元気になれば、医師になりたい」、そんな気持ちが小さな私の中に芽生えたと思います。周りで接するものは医療の世界だけでしたから。
 幸いなことに、小学高学年ぐらいから病状は少しずつ快方に向かいました。それでもまだ虚弱体質で、野球や勉強といった普通の子どもと同じことがしたくてたまらなかったですね。家族からは「勉強もするな、寝ていろ」と言われていましたから、逆に学校でみんなと勉強をするのが楽しかったぐらいです。
 大学はやはり医学部に行きたかったのですが、学力的にも現役で国公立の医学部に合格するのは厳しそうでした。それに、家庭は貧乏だったので「卒業に6年もかかる医学部はやめてくれ」と親からも言われていましたしね。そこで、早く卒業して働こうと北海道大学の理類に現役で進みました。
 入学後のキャンパスライフは楽しかったですよ。それでも、夏休みになって時間ができると“やはり違う”と自分で考えたんですね。親に言われて入った理類だけれども、本来なりたかったのは医師であって、このままでは後できっと後悔するだろうと。そこで、夏休み後に父親を説得し退学を決めました。その後は1年半、自宅浪人です。札幌で知り合いの家に住みながら受験勉強をしましたが1度は不合格、釧路の実家に戻りさらに猛勉強して翌春には札幌医科大学に合格することができました。

内服ステロイドの副作用で苦しむ患者に光明を

窓からは赤レンガの旧道庁の眺めが。診察室は3つあり更衣室やマッサージチェア(点滴終了後の患者さん用)のある部屋も用意されている

 私は、ある程度までは何でも診られる内科医を目指したいと思いました。そのためには、どこの病院にもある胸部レントゲンや心電図をきちんと診断できる技術を身につけたかったのです。私が入った札幌医大第3内科は呼吸器が専門でしたが、そんな私の希望を当時の鈴木明教授に伝えたところ、専門外の胸部外科や外部機関の循環器内科、消化器科、病理などで1年間研修をさせてもらうことができました。これが後々にも役に立っています。
 卒業後は、各地の病院を経て1987年、札幌鉄道病院(現JR札幌病院)の呼吸器科に副医長として勤めました。ところが、当時の病院では上司である院長の治療方針で、気管支ぜんそくの患者さんに筋肉注射や内服などの全身性ステロイドを使うことが主流だったのです。これらは、最初のうちこそかなりの効果を発揮するのですが、次第に効果も落ちていってぜんそく発作を繰り返す、さらに骨がもろくなる、精神症状が出るなどの強い副作用が出てきます。また咳をしただけで肋骨が折れるような患者さんもいました。私はそんな患者さんのケアを任されて非常につらい思いをしたのを覚えています。
 ちょうどそのころ良い吸入ステロイドが出て、海外でも内服に代わって使われるようになったことを知り、私はさっそく吸入ステロイド主体での治療を始めました。20数年前のことですが、札幌でも先駆的だったと思います。この吸入ステロイドは、内服や注射に比べ効果が出るのは遅いのですが、副作用もほぼ気にすることがなく症状を改善することができます。
 最初は吸入ステロイドを「すぐ効かない」と嫌がっていた患者さんたちですが、私が何度も説得して継続してもらったところ、次第にその効果と副作用に対する安全性を実感してくれるようになりました。内服ステロイド漬けになってしまった患者さんも、そこから脱することができてたいへん感謝していただけました。この経験が、独立開業するきっかけのひとつになりました。

短い診療時間をチームワークでカバー

X線室の壁には木と小鳥が描かれている

 今は札幌駅近くのビルにクリニックを構えていますが、やはり患者さんは大病院並みに多いですね。私ひとりでは診る患者さんの数も時間も限られますので、スタッフとの連携を生かしています。
 診察室では私の隣に情報を入力する事務スタッフがいます。患者さんをしっかりと見ながら診察することは大切なので、私がパソコン画面ばかりに向かわないようにするためです。1人当たりにかける時間は5分程度ですが、その後で看護師がより分かりやすい説明をするなどのフォローをしています。病気を説明することの大切さは私にも身にしみています。子どものころ「安静、安静」とだけ言われ続けて“自分の病気についてもっと知りたいのに”と思ったことをよく覚えていますから。
 診察の後で、患者さんが看護師に「先生は愛想が悪いよね」と言われることもあるようですが(笑)、私はどうしても短い時間の中で、きちんと説明して良くなってもらいたいという思いが強いので……つい、笑顔でというところまではいかないんですよね。それに「1回ですぐに良くしてもらおう」と思う患者さんや、こちらの言ったことをきちんと守らずに、生活の改善や努力もしないで来られるような患者さんには冷たいかもしれません。実際に怒るときもありますよ。それは、特にぜんそくやアレルギーの方は持って生まれた体質に環境因子が加わっていますので、患者さん自身が生活環境面での見直しを実行しなければ症状の改善にはつながらないからです。

コツコツ作業するのが名医の条件

 私は「患者さんをパッと診て分かる」のが名医だとは思っていません。本当の名医とは、患者さんの話をよく聞き出したうえで必要な検査を的確に選び出し、そこから得た情報を総合して個々に合った治療方針と生活の改善方法を見出していく。そういったことをコツコツやって病気を良くしていく作業をする者が名医だと思っています。
 研究の道を考えたこともありましたが、私は臨床医で良かったと心から思っています。この職業の良いところは、地道にコツコツとやっていけば必ず報われるということです。10年ほど前に、吠えるような咳をしていた子どもさんが来診された時は、普段どこへ行くにも大きな吸入器を入れたリュックサックを背負っていたそうです。親御さんは「ステロイド」という言葉に難色を示していましたが、安全性を説得して子どもさんに吸入ステロイドを続けたところ、やがてリュックを持つこともなく普通の暮らしを送ることができるようになりました。
 私自身、身体の管理には苦労してきました。身体に良いと思われることは何でも試しました。ヨガや断食療法などを行ってみたこともあります。自宅では基本的には玄米菜食です。東洋医学も少し勉強しまして、西洋医学とともに良い面と悪い面があると感じています。また人間にとって体を動かすことは重要なので、忙しい今でも朝のストレッチと可能なかぎり週2~3回のジム通いは欠かしません。さらに、限られた時間の中ですが、人生について考えられるような読書もしています。
 患者さんには病名を知ることだけで納得してしまうのではなく、病態を理解してほしいと常に意識して伝えています。つまり、今の病気ではどんなことが体で起こっているのかを患者さん自身が知り、正常にするためには生活や環境面でどのようにしていけばよいかを理解して実践していただきたい。それを知ることで治療の効果がまったく違ってきます。さらに言えば、普通に過ごせることのありがたさを知ればこそ、皆さんには何らかの生きがいを持って楽しく過ごしてほしいですね。そのための生活管理をお手伝いすることが私の仕事と思っています。

取材・文/高橋明子(たかはし・あきこ)
東京の業界紙や編集プロダクション勤務を経て、札幌移住を機にフリー。各種雑誌やウェブサイトで地域情報や人物、住宅などの取材を行う。

医療法人社団 大空会 大道内科・呼吸器科クリニック

医院ホームページ:http://www.ohmichi.or.jp/

写真左:札幌駅や大通駅から交通至便なビル内にありサラリーマンから親子連れまで多くの人が訪れる。基本は予約制。
写真中央:初めてでも入りやすい雰囲気の待合ロビーはシンプルでくつろげる空間だ。急な発作時の迅速な対応もしてくれる。
写真右:CTは最新のマルチスライス装置。患者さんに少しでもリラックスしてもらえるよう壁は青空に塗った。
地下鉄札幌駅10番出口より徒歩1分、JR札幌駅より徒歩5分。駅前通りを大通方面に向かった右側、日本生命札幌ビル3階。
詳しい道案内は、医院ホームページから。

診療科目

呼吸器科、アレルギー科、内科

大道光秀(おおみち・みつひで)院長略歴
1981年 札幌医科大学卒業
同年 札幌医科大学第三内科入局
市立函館病院、南一条病院、道立北見病院、札幌鉄道病院(現JR札幌病院)呼吸器科主任医長を経て
2001年 大道内科・呼吸器科クリニック開院
2006年 現在地に移転


■所属学会
日本内科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本感染症学会、日本肺癌学会、日本化学療法学会、日本アレルギー学会、日本サルコイドーシス学会、国際胸部医学会、ヨーロッパ呼吸器病学会


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