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[クリニックインタビュー] 2011/06/10[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第115回
医療法人済世会 薬院河野クリニック
河野正美理事長

医師の仕事は勉強し続けること

 「病院は兄弟が継ぐだろう。まさか末っ子の私が――」
 大学進学前は、そんな風に考えていました。ところがある日突然、兄弟が父親とは違う道を歩むことを決めたのです。正直とても驚きました。それまでの私は、末っ子でしたし、医師になるという考えもなかった。迷いもありました。しかし、父が理念をもって創立した病院を、多くのスタッフと支えて行くことが私の使命かもしれないと思ったのです。それは地域住民の方にとって、よりよい医療につながりますから。
 そう決心してはじめた大学受験対策もなかなか大変だったと記憶していますが、入学後の勉強や現場に出てから必要になった知識量に比べると、今思えば大した壁ではなかったように思います。私の在学当時は必修が19科目もあったので。さらに、専門である精神科とひと口に言っても、小児から老人までの患者さんを診る幅広い分野です。先達の医師のみなさんから頂いた多くのアドバイスがあってこそ、これまでやって来られました。医療に関して学ぶ日々は今なお続いていますし、また、これからも一生、続けていきたいと思っています。

精神科をとりまく環境の変化

 かつて「精神病者監護法」という法律のもと、精神科の患者さんが私宅監置を公認されている時代がありました。もちろん現在では私宅監置は廃止されていますが…。そんな不遇の時代の反省点として、患者さんの人権保護は大きな課題のひとつとされています。しかし人権保護に重点を置くばかりでは、患者さんとの距離ができてしまう。私が学生の頃は患者さんとお茶を飲んだり、おしゃべりをしたり、医師という職業の垣根を越えてコミュニケーションを楽しんでいたように思います。治療の基本は対話ですから。
 法律の改定や時代の流れにより、患者さんだけではなく、そのご家族や環境を重視する方向へと変化しています。私は精神科医療のスペシャリストとして、患者さんとの対話を忘れないこと、頼りたいときに頼れる場所であることを、日々の診療を通して患者さんやそのご家族に伝えていきたいのです。

うつ病を克服し、社会に復帰するまで

 法人本部のある篠栗町は福岡県の郊外にあるのどかな町です。その篠栗町でうつ病の患者さんが急増し、休職者が多く出たことがありました。それは、「こんなのどかな町でうつ病の患者さんが増えるなんて」という考えがきっかけでした。そこで何か力になれないものかと試行錯誤し、3~4ヵ月かけて行う、うつ病克服のプログラムを開始しました。例えば、職場に通うようにネクタイを締めて、電車に乗り、このクリニックまで足を運んでいただくことです。うつ病を克服したからといって、すぐに全力疾走できるわけではありません。このプログラムを助走として使っていただけたらと思います。

患者さんの喜怒哀楽を引き出すために

院長の小山央医師

 当法人の基本理念に“困っていればどんな患者さんも助けなさい”という言葉があります。その第一歩として医院に関わるスタッフの教育は欠かすことができません。基本理念を理解し、目の前の患者さんときちんと対話できること。精神保健のスペシャリストとして、女性のソーシャルワーカーも2名、在籍しています。
 精神科にかかる患者さんの特徴のひとつに“喜怒哀楽を上手に表現できない”ことが挙げられます。それはとても辛く苦しいことです。そんな患者さんを迎え入れる私達が、暗い顔で話を聞いていても、そこから生まれるものなんてあるのでしょうか。私達にできることは、患者さんを笑顔で迎え、笑顔で帰っていただくことです。そのため具体的に、私が薦めてスタッフに指導するのは、患者さんに寄り添う心を持つことです。「院内ではとにかく笑顔!」。この考えを徹底しています。そしてその積み重ねが「ここに来ると安心するわね」いう患者さんからのお言葉です。
 雨の中歩いて来た人を、優しく迎える雨宿りのための場所、それが当院のあるべき姿です。雨が上がり、空を見上げると、美しい虹がかかっている――。この「にじいろプロジェクト」を軸に、外来と入院、環境と個人、医師と患者さん、様々なバランスを保ち、よりよい診療を心がけていきたいと考えています。

子どもの頃からの宝物

 私の趣味のひとつに、ミニチュアカー収集があります。小さい頃から車が大好きで、道行く車の名前を当てては周囲を驚かせていたのだとか。小学校低学年になると、福岡にいる両親と離れて東京の祖母のもとで暮らすようになりました。幼心に寂しい気持ちはありましたが、月に一度、母が会いに上京するのが楽しみで。日曜日には新宿の百貨店に連れて行ってもらい、ミニカーを1台買ってもらう。母との記憶と一緒に、私のミニカーも増えていきました。
 中学校進学とともにその熱は落ち着いたように思いますが、時は流れて20年後、私の娘が復刻版のトミカに興味を示したことから、収集癖が復活。今ではその数は3,000台を超えています。中でも私のこだわりは、高級スポーツカーではなく、身近に感じられる車が中心であることです。家族や知人が乗っていたり、コマーシャルで馴染みがあるものであったり。ミニカーを通じて温かな記憶を思い起こすことが、私の心地よい時間の過ごし方なのです。

取材・文/有川由絵(ありかわ・よしえ)
ライター。「CREATIVE OFFICE とらこや」所属。福岡の情報誌を中心に、グルメ、医療、ウエディングの現場取材・原稿執筆を手がける。

医療法人済世会 薬院河野クリニック

医院ホームページ:http://www.kawano-yakuin.com/

地下鉄薬院大通駅より徒歩7分。駐車場を5台完備しており、遠方からのアクセスも安心。
患者さんがリラックスできるよう、観葉植物やアクアリウムを設置するなどの工夫も見られる。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

内科、心療内科

河野正美(かわの・まさみ)理事長略歴
1990年 愛知医科大学医学部医学学科卒業
1992年 九州大学病院精神科勤務
1998年 九州大学大学院医学研究院修了(2001年医学博士)
1998年 医療法人済世会河野病院 院長
2005年 医療法人済世会 理事長


■所属学会
日本精神神経学会(専門医・指導医)、日本老年精神医学会(専門医・指導医)、日本心身医学会、日本うつ病学会、日本総合病院精神医学会


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