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[クリニックインタビュー] 2011/11/11[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第126回
井上歯科医院
井上宏一院長

歯科医ビジョンが一変した、基礎から学び直す研修

 私はここ藤沢で育ったのですが3歳までは札幌に住んでいました。そこで叔父が歯医者をやっていまして、小さい頃から「あんな風になりたいな」と思っていました。患者さんの喜ぶ顔を見て、これはいい仕事だなと。進路を考える時にはそれ以外の職業は考えていませんでした。歯医者でなかったら・・・そうですね、料理人になっていたかもしれません。(笑)
 歯科医師免許を取ってから大学に3年残り、その後3年間は複数の歯科医院で修行、ところが「自分が目指す歯科医師像」がなかなか見えてこなくてモヤモヤしていました。回転がはやい医院に勤めたので多くの症例をこなせて技術は上達したのですが、何か一本筋が通らないというか。
 そこで、習得した技術や知識を再構成することで自分の血肉にしようと、1年間の研修会に参加することにしたのです。この1年間が私の人生を変えました。座学と実習を繰り返して、本当に基礎から学び直したのですが、そこで恩師となる鈴木真名先生に出会いました。勉強会では、何度も怒られ、歯科医療に対する価値観をタタキ込まれました。「患者さんにはもっと優しく!」「治療にもっと本気でやれ!」・・・私だって患者さんに冷たく接していたつもりはありませんが今、思えば確かにもっと「優しく」する余地はあったと思いますし、もっと「本気に」なったら違うやり方が見つかったりもします。努力に限界はないんだ、と知りましたね。
 例えば「優しく」の一つに、麻酔の仕方があります。回転重視の先生だと(患者さんが急いでくれという場合もあって一概には言えませんが)麻酔を素早くやりがち。でも薬はゆっくりゆっくり、優しい気持ちで注射する方が当然痛みは少ないのです。今は専用の機械もあるくらいで、スムースにじんわり注射をする技術は簡単ではありません。
 「本気」の例を言うと、常に上を目指して学び続ける姿勢ですね。歯科医は数年修行をすれば一応の治療はできるようになりますが、「センセイ、センセイ」と言われていい気になっていると進歩は止まり、技術は自己流になっていきます。鈴木先生は世界的にも有名な人ですが非常に謙虚で生活も華美でなく、貪欲に上を目指しています。そんな先生の近くで学んだおかげで、常に世界スタンダードを念頭に置いて一生勉強をしていく覚悟を持つようになりました。

治療計画書、クリニカルコーディネーター、顕微鏡治療

 診療スタイルも鈴木先生から影響を受けましたね。まずは、「治療計画書」。患者さんに自身の口腔内の状況を理解していただくため、診査、レントゲン写真、歯周病検査(歯ぐき)などの結果を一枚の用紙に落とし、治療開始前にこれからどんな風に治療を進めていくか丁寧に説明します。
 それをやるのは、「クリニカルコーディネーター」という専門のスタッフ。ドクター相手だと直接質問しにくいようなことでも気軽に聞いていただき、患者さんの想いや歯科医師の想いを双方に的確に伝えていく役割を担っています。
 そして「顕微鏡治療」も当院の特徴です。顕微鏡治療を行っている歯医者は2009年時点で全国の3%程度と聞いていますが、治療部分が大きく見えると、より丁寧で確実な診療ができるようになります。口腔内は狭いので、どうしても経験とカンで治療を行う部分があります。例えば根管治療(歯の神経の治療)は通常、レントゲン写真を見ながら患者さんの歯の内部をイメージして、手探りで根の奥を治療するのです。ところが根の形状は誰でも同じではなく、曲がっている人も多いのです。そのため見えないところは見えるまで歯を削りとってしまったり、逆に悪いところを残した状態で詰め物をしてしまう可能性があります。ところが、顕微鏡を用いて高倍率で見ながらですと、精度の高い治療が行えます。高額な機材なので普通の歯医者さんは導入するのに躊躇しますが、私の場合は、鈴木先生のもとで使っていたのでごく自然に迷うことなく導入しました。

患者さんは、質問する勇気を持って

 残念ながら、医療者のなかには治療の選択肢を与えずに病院のペースで治療を進めている人もまだまだいるようです。そうした話を聞くたび、同じ医療者として憤りを感じますし、責任も感じます。
 だから患者さんには、「自分の身体なんだから、勇気を持って」と言いたいですね。少しでも話がおかしいな、説明のツジツマがあわないな、と思ったら勇気を出して質問しましょう。安易に歯を抜こうとしたりインプラントを強引に勧められたと感じたら、一旦返事を保留して、他医にセカンドオピニオンを求めましょう。もし質問したことで「信頼できないのか」と怒られたり、雑な扱いを受けるようだったら、それは仕方ありません、思い切って医療機関を変えましょう。
 歯科医院経営の内情をお話しすると・・・実は「歯周病」の治療は一生懸命にやっても儲からないのです。むしろ一生懸命にやるほど儲からない面さえある。だから、歯周病の診療を丁寧にやってくれる歯医者さんは、きっと患者さん想いですよ。
 休みの日は、ジムに行きます。リフレッシュを兼ねて週に1回は身体を動かすようにしています。歯科医はかがむことが多いので、姿勢が悪くなりがち。いわゆる五十肩というんですか、左手が上がらなくなってしまったことがあって、驚きました。以来、身体が資本だと健康には気を付けています。患者さんへの責任もありますしね。

取材・文/QLife

井上歯科医院

医院ホームページ:http://www.inodent.com/

院内は南国の別荘をイメージさせる癒しの空間。
診療は全て個室型で、患者さんが椅子に座ると多い時には3つのモニター画面が目の前に出る。小田急線の藤沢駅から徒歩5分。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科

井上宏一(いのうえ・こういち)院長略歴
1994年 鶴見大学歯学部歯学科卒業、同大学歯学部第二補綴入局
1997年 複数の歯科医院に勤務
2002年 井上歯科医院開設


■所属学会
東京SJCD


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