[クリニックインタビュー] 2012/03/30[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第132回
さぎやま泌尿器科クリニック
鷺山和幸院長

目指したきっかけは叔母のひとこと

 医学部を受験しようと思ったのは、高校3年生の頃でした。よく、医師の家族や親戚には同じく医師が多いと言われますが、うちの家系には全くいませんでした。当時、たまたま伯母に「ひとりくらい、うちから医師になってもいいのでは?」と言われて目指すようになったことを覚えています。
 実は高校時代はテニスに明け暮れており、本当に好きでした。医学部は6年間大学に行けるので、あと6年テニスができる・・・と少し思ったくらいです(笑)。毎日部活をしていましたが、なんとか勉強もこなしていました。ちなみに勉強は予習派で、前日に翌日の勉強をして寝て、次の日授業を受けて、それから部活のテニス。帰宅してまた翌日の予習、その繰り返しでした。継続するパワーはあった方なのかも知れませんね。

先見の明ある恩師に導かれて

 大学時代は手術実習が好きだったので、外科に進みました。卒業後、九州大学の第一外科に入局し4年ほど勤務したのですが、その頃に私の恩師である原三信先生と出会い、泌尿器科へ進むことを決めました。原先生と出会ったのは、福岡にある「原三信病院」という病院です。そこで私の従兄が事務長をしており、時々行っているうちに院長である原先生と知り合うこととなりました。
 原先生は泌尿器科の専門医でもあり、とても先見の明のある方でした。当時日本ではまだ少なかった前立腺がんがこれからきっと増えるから、泌尿器科のニーズも確実に増えると常々仰っておられました。原先生は、20年ほど前に「福岡市前立腺がん検診委員会」という前立腺がん検診を行政と共に推進する組織を立ち上げておりますが、それは全国的に見ても早い取り組みでした。
 その後、私自身も原三信病院に勤務することになったのですが、勤務している期間も、原先生は積極的に海外へ手術の勉強に行かせてくれました。前立腺がんの手術はもともとアメリカで開発されたもので、海外の方が進んでいたので、こうした機会を与えていただいたのは、本当にありがたいことでした。
 ちなみに、当院の医療法人名「ビジョナリー」という名前は、原先生の先見の明を訳して名付けました。私にとって、大きな影響を受けた方なので、何かの形で残そうと思いまして。

患者さんが大事にしていることを重視


超音波治療室。診察や検査の部屋はそれぞれ独立している

 当たり前かも知れませんが、患者さんは何かに困って、心配して来院されます。それを解決することが医師の存在意義だと思いますので、何に困って、心配しておられるのかを知るために問診をとても重視しています。予約制にしているのも、時間をゆっくり取るという意味があります。もちろん時々、飛び込みで来られる方もいますが、そこは柔軟に対応しています。
 診断が決まれば、原因とともに、治療方法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを説明します。治療方針を立てる上では、患者さんが大事にしていることは何か?ということをしっかりヒアリングしていくことを心がけています。たとえば前立腺がんの治療にあたっては、いろいろな副作用や合併症を伴うことがありますが、患者さんによっては、尿もれが一番つらい方もいれば、性機能の低下が一番つらいという方もいるように、その方が大事にしていることは本当に人それぞれだと思います。
 当院で治療する病気としては前立腺肥大症、前立腺がんが多く、ホルモン治療や薬物治療を行っています。前立腺がんで手術が必要な場合は原三信病院に入院していただき、私自ら手術を行います。また、放射線治療を希望される場合は実績のある病院を紹介しています。いくつか治療方法があってその結果にあまり差がない場合には、それぞれの方法について丁寧に説明し、その上で患者さんに選んで頂くことで、質の高い治療につながるのかな、と考えています。

性別問わず、早期受診してほしい


明るい陽射しが差し込む待合室。廊下やソファは曲線を描いて、優しい雰囲気を出している

 当院には前立腺の病気で来られる方が多いですが、福岡の中心地にあるからか、患者さんには女性の方も2割ほどいらっしゃいます。泌尿器科の病気の中で女性に多いのは膀胱炎や尿もれですが、病院へ行かずに市販の薬で対処されている方も多いと聞きます。もし市販の薬でなかなか治らないという方は、忙しくてもぜひ一度泌尿器科の受診をおすすめします。処方薬で、数日ですっかり治ったという例もたくさんあります。実際受診された方から「なんだ、もっと早く来ればよかった!」と言われたことも(笑)。当院では他に、5年前からHIVの即日検査を始めており、性感染症の治療も行っています。また、結石の治療や進行した前立腺がんが見つかった場合など、自分の所で対処できない時は、すぐに病状に応じた大学病院等の他の医療機関を紹介するようにしております。どんな病気にも共通することですが、早期発見のためにも、何かおかしいと感じたら、なるべく早めに受診してほしいと思っています。

テニスだけずっと続いている

 休みの日にはなるべく体を動かすようにしています。これまで始めた趣味はいろいろあって、野球、ゴルフ、陶芸、トランペット、ボーカル・・・、けれどなぜかどれもあまり長く続かなくて(笑)、唯一続けているのがテニスです。好きで、もう50年近くやっていますね。土日と、以前は平日も行けるときは行っていました。去年、イギリスのウィンブルドンに1週間行き、毎年全英オープンが行われている会場でテニスをしてきたんです。現地の人たちとプレーをして、アフタヌーンティーも楽しんで英国紳士を満喫した1週間でした。そこで動画もたくさん撮り自分で編集して、今はウィンブルドンの旅記録として残しています。見るたびに、またいつか行こう、なんて思っています。
 試合の日に雨が降るとちょっとつらいですが、体を動かすとリフレッシュにもなるし、多分テニスだけはずっと続けていくと思います。患者さんを元気にするには、自分も元気でいたいですしね。

取材・文/松田はなこ
市場調査会社、広告代理店勤務後、広告プロダクションにて、コピーライター職を経験。その後福岡でフリーペーパー記事やTwitterのbotのツイートライティング等を行う。

医療法人ビジョナリー さぎやま泌尿器科クリニック

医院ホームページ:http://www.sagiyama.net/

福岡市営地下鉄七隈線天神南駅 徒歩1分、西鉄天神大牟田線西鉄福岡駅 徒歩3分、福岡市営地下鉄空港線天神駅 徒歩3分、済生会病院隣、天神121ビル3F。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

泌尿器科

鷺山 和幸(さぎやま・かずゆき)院長略歴
1974年 九州大学医学部卒業、九州大学第一外科入局
1978年 九州大学泌尿器科入局
1983年 九州大学医学部大学院修了 医学博士号取得
1983年 米国カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校へ留学
1984年 原三信病院勤務
1999年 加野病院勤務
2001年 博愛会病院勤務
2003年 さぎやま泌尿器クリニック開業
2009年4月~2012年3月 佐賀大学医学部泌尿器科臨床教授就任


■医学関係資格
医学博士、Best Doctors Japan 2010-2011、日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医

■所属学会及び研究会
日本泌尿器科学会、米国泌尿器科学会、日本がん治療学会、日本性感染症学会代議員、福岡市性感染症研究会会長


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