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[クリニックインタビュー] 2012/07/13[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第136回
司生堂クリニック
松田弘之院長

「努力が必ず人のためになる」それが医師という職業の魅力

 実家が漢方薬店を営んでいたため、子どものころから祖父や父が多くのお客様(患者さん)と接するのを見ていたことが、医師を目指したきっかけのひとつでした。
 実は、弁護士に憧れたこともあったのですが、あるとき、弁護士は必ずしも正しい人ばかりを助けるわけではない、ということに気付いたのです。こういう言い方が正しいかは分かりませんが、社会的には「悪い人」でも弁護しなければならないこともあり、その結果、本当に正しい人たちが不利益を被る可能性もありますよね。医師という職業ならば、自分が全力で取り組んだことは必ず人のためになる。それが最大の魅力だと思い、医師になる道を選びました。私はわりと優柔不断なところがあり、あれこれ悩んでしまう反面、一つの物事をじっくり考えるタイプなので、内科医ならそれを活かせるのではないか。そう考え内科医を志しました。
 大学卒業後、大学病院ではおもに腎臓病や高血圧、膠原病の治療や研究に携わっていましたが、実家が漢方薬店だったこともあり、学生時代から漢方に関するセミナーや研究会などにも数多く参加していました。そして2000年に、東京・巣鴨で内科・漢方・アレルギー科のクリニックを開業しました。研修医から約17年間、研鑽を積ませていただいた東京慈恵会医科大学の学祖、高木兼寛先生の教えに“病気を診ずして、病人を診よ”という言葉があり、開業してからも医の西洋、東洋を問わず常に自分の信条となっています。

患者さんの話をじっくり聞いて治療法の選択を

 日々の診療において一番思うのは、「患者さんの役に立ちたい」ということ。今は毎日、だいたい30人ぐらいの患者さんを診ています。漢方医学では、患者さんの話をじっくり聞く必要があり、とくに初診の患者さんだと30分~1時間ぐらいかかるため、あまりたくさんの患者さんは診られないのです。
 来院される患者さんは、30~50代の女性が多いのですが、自分の体に入れるものへのこだわりから、「なるべく自然由来のものを」という考えで漢方を求める患者さんもいれば、例えば頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状で、これまで何年も、さまざまな医療機関に行ったけれどよくならず、最後の砦としてまさに「藁をもつかむ思い」で漢方医学に頼る患者さんもいます。
 そういう患者さんを何とかしたい、何かお役に立ちたいと思って診療にあたっていますが、なかには漢方医学について誤った認識をお持ちの患者さんもいらっしゃいます。漢方も万能ではありませんので、例えば「漢方の薬を飲んでいれば、それまでの治療や食事療法をやめて好きに何でも食べてよくなる」とか、「どんな病気にも最も効果的」とは言えません。また、私は漢方医であると同時に内科医でもありますから、患者さんにとって最善の治療法を提供したいと考えております。そのため、漢方よりも西洋医学のほうが適切だと思えば、「例えば名古屋に行くのに、鈍行電車でも下の道路を使っても確かに行くことはできますが、新幹線や東名高速があるなら、それを使ったほうが早いですよね。この病気の場合は、漢方よりも西洋医学のほうがスムーズな治療効果が期待できると思いますよ」などとお話しすることもあります。
 漢方医学では、西洋医学のように「この病気にはこの薬」と決まっているわけではなく、じっくり話を聞いた上で、その方の体質や症状などから治療法を探していきます。つまり、私の能力、医師としての腕がそのまま患者さんに反映されてしまうのです。治療によって患者さんの症状がよくなればいいですが、そうでなければ、それは私の未熟さのせい。毎週、来院するたびに「まだつらい」とおっしゃったり、薬を変えても症状がよくならないということが長く続くと、やはり私自身もつらいですね。反対に、「30年悩んでいた頭痛がすごくよくなった」とか「生活がすごく楽になった」などと言っていただけると本当にうれしい。そんな時にこの仕事の醍醐味を実感します。

今になって「学ぶ」ことの楽しさを知る

 患者さんによりよい治療法を提供するためには、勉強が必要です。とくに漢方をやっていると、整形外科や皮膚科、脳外科など、内科領域以外の患者さんもたくさんいらっしゃいますので、「科が違うからわからない」では申し訳が立ちません。今も、診療後や休みの日にはさまざまな勉強会に参加していますし、東海大の非常勤講師として学生に教える仕事もしており、そこで学べることも多くあります。
 学生のころは勉強が嫌いで、「追試」や「落第」という言葉をしょっちゅう耳にしていましたが、今は勉強が楽しい。今さらですが、学生たちと接するなかで学ぶことの楽しさを実感しています。「勉強が好き」とは言えないけれど、のどが渇いたり、おなかが空いたりするのと同じように、知識を欲している感じ。それはやはり、患者さんの役に立ちたい、一番いい治療法を提供したいという思いのせいだと思います。
 自分の知識、能力、技術をもっともっと高めて、よりスムーズに、より多くの患者さんに、「このクリニックに来てよかった」と喜んでもらえるような治療をしたい。難しいことを考えているわけではなく、ただ、ひとりひとりの患者さんの役に立ちたい、そのためにスキルアップしていきたいという気持ちです。

リラックスと「楽しいことに没頭すること」も大切に

 診療や勉強会、学会などで忙しすぎる日が続くと、やはりストレスからか心身のバランスがとれなくなってくることも。そんなときは、自分の好きなことをして、なるべくリラックスすることを心がけています。最近は読書が楽しくて、とくに司馬遼太郎や池波正太郎の小説が好きです。また、学生のころによく聞いていた懐かしい音楽を聞いて、つかの間タイムトリップするのもリフレッシュになっていますね。
 もともとは体を動かすことが好きで、学生時代は空手部や山岳部に所属し、山登りやサイクリングにもよく行っていました。今は山登りなどはできませんが、休日はなるべく外に出て、あちこち散歩するようにしています。とくに、巣鴨のとげぬき地蔵商店街の中で育ったためか、方々の商店街を歩きまわって、活気を感じたり、美味しそうなものを見つけたりするのが好きですね。歩くときは、仕事や日常のことは考えず、目の前のことに没頭して楽しむ。それが大切だと思います。
 1日のうちのほんの短い時間でもいいので、何か自分が没頭できること、楽しめることをするのはとてもいいことだと思います。患者さんにも、「寝る前の5分でもいいから、やるべきことを全部済ませて寝る準備をして、何か自分の好きなことをする時間を持ってね。普段の日常のことをちょっと忘れて、自分の好きなことや楽しいことだけを考える時間を作って、それから寝てね」とお話しています。
 それと今は、スキューバダイミングにもはまっています。ライセンスもとって、休みには友人と千葉や伊豆に行ったり、長い休みがとれたときはサイパンに行ったりもします。海の中はすごくいいですよ。そんなふうに、やりたいことはなんでもやったほうがいい。やりたいことをやって、人生を楽しむ。それが健康でいる一番の秘訣だし、それによってまた元気に患者さんと向き合うことができているのだと思っています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

司生堂クリニック

医院ホームページ:http://www16.ocn.ne.jp/~shiseido/

JR・都営地下鉄「巣鴨」駅より徒歩4分。
にぎやかな巣鴨地蔵通りの中ほどにありますが、院内は静かで落ち着いた雰囲気のクリニックです。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

内科、アレルギー科、漢方内科

松田弘之(まつだ ひろゆき)院長略歴
1983年 東海大学医学部卒業 東京慈恵会医科大学にて内科研修医
1985年 東京慈恵会医科大学第2内科学教室入局
2000年 司生堂クリニック開設
2006年 東海大学医学部非常勤講師
2010年 日本臨床漢方医会理事


■所属・資格他
医学博士、日本内科学会認定医、日本腎臓学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医、日本医師会産業医、日本医師会認定健康スポーツ医


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