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[クリニックインタビュー] 2012/09/21[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第140回
医療法人社団慶新会 菊池皮膚科医院
菊池 新理事長

日進月歩し、未知の領域が多い「免疫」の世界へ

 医師になろうと最初に考えたのは、週刊少年チャンピオンを読んでいた小学生のころ。手塚治虫の「ブラック・ジャック」を読み、「カッコイイ医者」になりたくて医師を目指しました。大人になって、さすがに無免許の外科医にはなりませんでしたが(笑)、アトピー・アレルギーなど免疫を専門とする皮膚科医になりました。
 皮膚科、なかでも免疫を専門に選んだ理由は主に2つ。1つは、内科や外科に比べまだまだ未知の領域だったから。とくに免疫ってすごくおもしろいと思うのです。2012年発表の論文を見る限りでも、アトピー性皮膚炎を慢性化させる原因蛋白が発見されたり、アレルギーを起こす免疫細胞の活性化のしくみが解明されたりと、日々進化し、新たな知見が次々出てくるところがとても面白い。
 もう1つの魅力とは、皮膚科では患者さんの皮膚を見た瞬間の感性が、医師にとって最も重要だということ。つまり皮膚科学は「診断学」が中心で、診断をつけるまでが非常に重要、かつ難しい分野といわれています。豊富な知識と経験を持つ皮膚科医は、患者さんの皮膚症状を一見しただけで、それが何の病気なのかすぐにピンときます。多くの症例を診てきた医師の頭の中には、これまで診た多くの皮膚病の画像がインプットされています。患者さんの皮膚を見て、同様のものがかつてになかったかどうかを瞬時に判断し、「これは○○病だ」と診断するわけです。もちろん、いくつかの皮膚病を合併している症例や診断を確認する目的で検査が必要なことはありますが、多くの症例では一目見ただけで瞬時に診断できる。それも、皮膚科に惹かれた理由の1つです。

クリニックは「患者さんにとっていちばん」を叶えるチーム

 現在、クリニックにはご近所の方から九州や北海道など日本各地の方、さらには海外の方、果てはモーリシャスまで、1日に150人を超える患者さんがいらっしゃいます。そういった患者さんを前にしたとき、まず、この患者さんは何を求めてわざわざ私のところにみえたのか、と考えます。遠路はるばる来院されたからには、それなりの理由があるはず。その理由を尋ね、患者さんがどのくらい今の状態を苦痛に思っているのか、何を最も改善したいのか、つまり患者さんにとって何がいちばんの問題で、何を望まれているのか、それを可能な限り探ります。
 例えばアトピー性皮膚炎という同じ診断の下で、同様の症状であっても、苦痛の感じ方や求める治療法は患者さん一人ひとりで異なります。どの患者さんにも一律に同じ治療をすればいいわけではなく、それぞれの患者さんが何をいちばん必要としているかを見極めるのが私の仕事だと思っています。時間をかけてじっくり話を聞き、表情や目つき、態度、しぐさから、親子関係や生活背景までも観察します。
 その上で、検査をして治療法を綿密に検討したり、じっくり時間をかけて病気について説明したり、患者さんの抱える疑問や不安をひとつひとつ解消、納得してもらったりしています。反対にそれほど重い症状ではなく、「時間がないから薬だけ欲しい」という方には、なるべく簡潔にその病気の原因や正しい薬の使い方を説明し、薬を処方することだってあります。相手が欲しているものを素早く見抜き、いちばん求めている医療を提供する。それが私たちの仕事であり、クリニックの基本方針でもあります。
 ですから、患者さんとのコミュニケーションの大切さ、患者さんに対する気持ちや言葉使いなどはスタッフにも徹底的に教育しています。また、クリニックに必要なのはスタンドプレーではなくチームプレー。協調性をもっとも重視し、面接では学生時代のクラブ活動の内容やこれまでのボランティア活動などを聞くこともあります。現在、約10人のスタッフがいますが、それぞれ適材適所で各自の能力を生かし、責任持って各々の仕事をこなしてくれていますし、ベストなチームワークで患者さんの診療体制ができていると思います。

通常の皮膚科治療だけでは治せない患者さんも増加しています

 最近、診療のなかで大変だと感じるのは、うつ病などの心の病気と皮膚の病気を併発している患者さんが増えていること。実は、心の病気と皮膚の病気には密接なつながりがあるのです。過度なストレスは確実にアレルギー症状の悪化につながります。また、うつの症状が強くなると、いくら私が原因除去の指導をしても耳に入ってこないとか、患者さん自身に治そうという気が起きないということも。例えば、ハウスダストやダニにアレルギーがあるから布団を抗ダニ仕様のものに替えましょうといっても面倒くさいからいいやとか、金属アレルギーがあるから歯の治療が必要だとアドバイスしても、歯科治療に恐怖心が生じるということもありうるのです。その結果、皮膚の症状が悪化したり、治らなくなったりする。そういった患者さんが、私が医師になった25年前と比べると圧倒的に増えたと感じます。
 アレルギー疾患の治療には、アレルギーの原因となるものを除去し、生活を改善することが不可欠です。心の病気が重く、自分の殻に閉じこもってしまったり、やる気が起こらなくなってしまったりすると、原因がわかっていても治療ができなくなってしまいます。このような場合は心療内科や精神科の先生への紹介状を書き、受診をすすめることもしばしばあります。
 皮膚科医としてできる限りのことはしたいと思っていますが、皮膚科の範疇だけではどうにも治すことができない患者さんが増えていることが、最近悩みの種ですね。

最新医療をいかに目の前の患者さんに応用できるか

 最近は仕事が忙しくて、ほとんど「無趣味」の状態です。ただ、休日には必ずスポーツジムに行き、ジョギングや筋トレ、ストレッチなどのトレーニングを欠かさないようにしています。ふだん、診察室でずっと同じ姿勢で座っているので、体を動かしたり、ストレッチをしてもらったりすると体が疲れにくくなるし、体調もいいのです。医師が不健康では患者さんを治せませんから、健康維持のためにも定期的なトレーニングは欠かせないと思います。
 また、最近では「ひとり静かにものを考える時間」を意識して持とうと心がけています。例えば仕事の行き帰りなどのほんの短い時間でもいいし、考える内容も、「今度の休みは何をしようか」とか「週末は何を食べようか」なんてことでもいいのです。一人になって、忙しさに追い回されている自分に「ちょっと待て、他にもしなきゃいけないことがあるんじゃないか?」と自問して何か忘れていることに気づこうとしてみるなど、ちょっと自分を見つめ直す時間を作ろうとしているのが最近の私です。今年で50才になるので、残りの人生を大切に過ごすためにも、今後何を目指して生きて行くかをしっかり考えながら前に進まないと、と日々考えています。
 仕事のことで言えば、前にも述べたように最先端の医療情報は溢れんばかりですが、それを実際の臨床にいかに結びつけられるかが今後の課題。免疫の分野は日々進化していて、その面白さに留学していたころは「医者をやめて研究者になろうか」と考えたこともあったほど。今でも、新しいことを知りたい、研究したいという欲求は衰えていないので、時間があれば留学先だったアメリカまで、学会や講義を聞きに行っています。そこで吸収した最先端の知識や情報をクリニックの患者さんの治療につなげること。それが、研究者ではなくクリニシャン(clinician:臨床医)の道を選択した私の仕事であり、これからの課題でもあると考えています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

医療法人社団慶新会 菊池皮膚科医院

医院ホームページ:http://www.kikuchi-dermatology.com/

JR・京成線「日暮里」駅東口を出てすぐの不二家ビル3階にあります。
待合室、診察室ともに広々した作りで、スタッフの丁寧な対応が安心感を与えてくれるクリニックです。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

皮膚科

菊池新(きくち・あらた)理事長略歴
1987年 慶應義塾大学医学部卒業 同大学病院研修医
1995年 慶應義塾大学医学部皮膚科学教室医局長、研修担当主任、皮膚科診療科医長
1996年 アメリカ国立衛生研究所(NIH)へ留学
1998年 帰国後、菊池皮膚科医院開設
2009年 医療法人社団慶新会設立


■所属・資格他
日本皮膚科学会認定専門医・指導医、日本医師会・日本医学会認定医、医学博士


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