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[クリニックインタビュー] 2013/08/23[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第154回
四ツ池メディカルヴィレッジ
吉井徹哉院長(チーフオフィサー)

大好きだった伯父が医師への道を開いてくれた

 突然の死でした。私が小学5年生の時です。お土産を片手に時々うちに来ては私と遊んでくれた伯父が、上顎洞癌で亡くなりました。病気が分かった当初は「大したことない」と言っていた医者が、急に「もう手遅れ」と言い始め、慌てて見舞いに行った直後に悲報を聞きました。子供心に「おかしい、なんでこんな急に」と思いましたね。命のはかなさに実感ない年頃ですから、まるで大好きな伯父さんを見殺しにされた感覚でした。これが私を医療に目覚めさせるきっかけとなりました。
 中学2年生の時には、既に医者になろうと決めていましたね。家族はもちろん、親戚筋にも医師などいない商売人の家でしたから、普通なら家を継ぐべき立場ですが、父に相談したらOKをしてくれました。
 ただ医学部に入ると、どうも自分は普通に医者になる人達とは違うぞということが分かってきました。医学部の同級生はほとんどが医者の子ですから、家業を継ぐために医学部に来ているわけです。つまりゴールは決まっていて、そこへの切符を得るために6年間も職業訓練校に通っているようなものです。あまり楽しそうな顔に見えなかった。
 一方、私にとって医師免許は手段でした。「この手段を用いてどんな人生を送ろうか? このツールで自分は人様に何を提供できるのか?」そんなワクワク感を持っていたのを憶えています。

クリエイティブさに惹かれ形成外科医に

 研修先は形成外科を選びました。理由は「無から有を作る」分野に見えたからです。内科や外科では、診療体系が確立されています。つまり、疾患を鑑別した後は、予め決められているガイドラインに従って治療するのが普通です。「名医」とはそれを上手に進める人のことであり、例えば外科医でいうと決まった手術を「より短い時間で、より小出血で」出来る人です。
 ところが形成外科だと、処置を行う前に症例ごとにデザインを考えなければなりません。部位や傷の形は勿論、患者さんの要望、年齢、性別、生活などの特徴に応じ、どんなアプローチで臨むのかを工夫します。切り口の形状や縫い方、皮弁(ひべん)といって他の部位から皮膚を移動したり、モザイク型に貼り付けて見た目が修復されやすく植皮をしたり、クリエイティブな発想が求められるのです。この選択肢の多さが、「自由」が好きな私の性分と合っていました。

さらに面白い分野「麻酔」に出会った

 ところがその後、「麻酔」というもっと面白い分野に出会いました。形成外科医は手術をしますから、麻酔科にも半年間だけ研修に行っておけ、と言われ、聖隷浜松病院に赴任しました。この病院は当時、全国で5本の指に入るほど手術件数が多く、年間6000例ほどこなしていました。この数だと麻酔医は5-10人必要な規模ですが、私を含めて3人しかいませんでした。ハードワークでしたね、でも燃えていました。麻酔医というと、厳しく辛い仕事というイメージがあるかと思います。確かに、患者に面と向かって感謝されることはない縁の下の仕事ですし、緊急手術で駆り出されるし、10時間の手術でも一番最初から最後まで患者の容態を見ていなければいけません。
 何が面白かったかというと、麻酔の意外なクリエイティブ性です。麻酔医の特徴は、全ての科の手術に付き合うことです。乳腺でも整形でも脳神経外科でも、麻酔医がいないと手術は始まりません。普通、乳腺外科と整形外科の間には交流がありませんが、私は「おい、こんな時に、乳腺外科医はこんな方法で対処してたぞ」と整形外科医に科を超えてアドバイスできるのです。「え、そんな機器があるのか?」「ちょっと出してみてくれ、使ってみたい!」なんてことが重なり、そのうち術中に「何かいい方法を教えてくれ」と相談されるようになりました。
 もう一つは、執刀医が自分の客だと分かったことですね。医師によって当然個性や癖がありますから、それにあわせた麻酔管理を先取りして行うようになると、外科医とパートナーで一緒に手術をしていく感覚になるんですね。手術の内容もよく分かるし、楽しくなりました。
 そして症例数が多いのは、研究に有利でした。私達はハードワークをこなしながらも次々と論文発表したり、新しい麻酔管理装置をメーカーと共同開発しました。たった3人の小さい科でしたが、「麻酔といえば聖隷浜松」と言われるまでになり、その実績もあって、当時の上司・小久保荘太郎先生は同病院の副院長となりました。嬉しかったですね。麻酔の面白さにのめりこんで、気が付いたら半年間の予定が20年になっていました。(笑)

「笑顔で年齢を重ねる」医療を提供し続けたい

 その後、開業を志すようになった私は、持ち前の自由発想で「開業するなら、他の人がやらないことをしよう」と考えました。自分の得意分野で、かつ自由診療(保険外診療)を組み合わせて、他のクリニックが提供できない高度な医療サービスを提供しよう、と。「ペインクリニック」を中心に患者さんに「効果」を感じて頂きやすい治療を複数用意していくというビジョンは、ある程度最初から決まっていましたね。
 私の人生で最も縁が深くなった浜松で開業するのは自然な流れでした。かつて住宅展示場だったこの地を見た時、草ぼうぼうで荒れ果てていたのですが、入口のアプローチから一段上がった瞬間にフッと空気が変わるのを感じて「コレだ」と決めました。普通、病院は白い壁に囲まれた、無機質なものですよね。そんな環境では気持ちが萎えてしまいます。緑に囲まれた「公園のようにリラックスできる空間」で、身も心も癒して頂きたい、それが当院のコンセプトです。こんなスタイルのクリニックは全国でもあまり例がありませんから、開業当初は戸惑ってまごまごしている患者さんもいらっしゃいました。(笑)
 でもね、私は患者さんに言うんです。「人生は一人に1回だけ。私達は、その自分の人生を一日一日食べているわけです。毎日食べる一日なら、おいしくしませんか?」と。年齢とともに身体のあちこちに変化が起きてきますが、それを無理に抑えようとするのではなく、その変化を受け入れて、微笑みながら年齢と寄り添って生きていこうではありませんか。そんなスマイルエイジングという過ごし方を、医療の面からお手伝いしていきたいと考えています。保険診療を基本としつつ、静岡県内ではここでしか受けられないような自費診療の施術など、患者さんが選択できるアプローチをなるべく多く用意していきたいと思っています。

取材・文/QLife

四ツ池メディカルヴィレッジ

医院ホームページ:http://yotsuike.me/

浜松駅から車で15分の郊外型住宅地のなかにある。詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

ペインクリニック/痛み専門外来、耳鼻科/鼻専門外来、皮膚科/ニキビ外来、お肌外来、オーダーメイド健診、サプリメント外来

吉井徹哉(よしい・てつや)院長略歴
1985年 聖マリアンナ医科大学卒業
1985年 聖マリアンナ医科大学 形成外科入局
1986年 聖隷浜松病院形成外科
1987年~2001年 聖隷浜松病院麻酔科
2001年 NTT東日本 関東メディカルセンターペインクリニック科メインスタッフ
2003年聖隷浜松病院 ペインクリニック科 創設
~2005年 聖隷浜松病院麻酔科 主任医長
2005年 耳鼻咽喉科サージセンター 理事
2007年 サージセンター名古屋 院長
2009年 四ツ池メディカルヴィレッジ 創設


■所属・資格他
日本臨床麻酔学会員、日本ペインクリニック学会員、日本耳鼻咽喉科学会員、日本抗加齢医学会員、麻酔指導医、ペインクリニック専門医


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