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[医療人] 2013/12/25[水]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第157回
すえおかこどもクリニック
末岡裕文院長

難病の子どもたちに直面して

「今日も、受診に来た男の子からキャラメルの差し入れをもらったんですよ」とうれしそうに話す末岡院長。ニックネームは吸入器の前に開業当初からあるクマのおもちゃにちなんで「クマさん先生」

 なぜ医師という道を選んだのか。身内に医療関係の人がいたわけでもないし、これといったきっかけもありません。野球の好きな、普通の少年だったと思います。ただ、人間というものに対して興味を持っていました。身体や頭脳、心理もそうですね。「ひと」って面白いな、不思議だなと思っていました。
 小樽で高校時代まで過ごし、札幌医科大学に入学しました。卒業して大学病院の小児科に進んだのは、染色体異常など先天性の病気を持って生まれてきた子どもの手助けをしたいと思ったからです。
 大学病院の小児科では、神経班、心臓班、血液班、感染症や新生児を含めたジェネラル班などといったグループをローテーションで回ります。僕が最初に行ったのは神経班で、受け持ったのは先天性のSMA(脊髄性筋委縮症)という難病、それも重症型の赤ちゃんでした。呼吸障害で酸素が必要になり、容態もいつ変わるか分からない。先輩の先生と相談しながら治療を行っていましたが、正直なところ、新人だった僕の力量を超えていました。自分の無力さを思い知らされ、「小児神経だけは自分は絶対に行かないぞ」と、その時は思ったんですよ。
 しかし、その後も脳性まひやてんかんなどの子どもと関わることが多かった。そのうち、僕自身もキャリアを積んで、できることが増えていきました。子どもが亡くなる場面もたくさん経験してきたけれど、元気になる子どももいる。走り回れるまでにはなれなくても、ゆっくりと子どもが成長していくのを見るのは本当にうれしいものです。病院にいても、子どもたちは楽しい、うれしいといった感情を僕たちに見せてくれる、それも毎日の小さな喜びでした。病気や障がいを持っていても楽しく生きることが大事で、それはどの人間も変わりません。そうしているうちに、いつしか障がいを持つ子どもに対する強い思い入れを持つようになっていきました。

激務の小児センターで得たもの


スタッフはカウンターからソファに出向いて患者さんの会計を行うなど積極的に動いている。帰る時も子ども1人1人に手を振っていた

 大学病院で鍛えられた後、小樽市にあった北海道立小児総合保健センター(現・北海道立子ども総合医療・療育センター)に勤めました。そこには、難治性の病気や障がいを持つたくさんの子どもたちが入院していました。『義男の空』という漫画のモデルにもなった、症状の難しい小児に年間300以上の手術を行っていた高橋義男先生もいらっしゃいました。
 センターでは本当に貴重な体験をしました。染色体異常などによる生まれつきの病気を持つ子ども、また仮死状態で生まれてきて障がいを持ってしまう子ども。入院している子どもの半数は新生児で、センターに緊急搬送されてきます。患者さんによっては、どのように容態が変わるか分からないので看護師はつきっきり、僕もすぐ対応できるように控えていました。センターのそばに僕の家はあったけれども、3日間帰れないことだってありました。自分のロッカーには必ず着替えと非常食を常備していたものです。
 この間に医学的にも、人間としてもさまざまなことを学びました。教科書や本では決して分からないことを身に付けることができた、僕の深いところで基礎となっている体験だと思います。

時間がかかっても、まずは子どもに聞く


点滴などの間にも子どもが飽きないよう、ベッドにはアニメのビデオを置いている。「割とテープを寄付してもらえるんですよね」

 その後も神経や発達に関わりのある医療機関に勤めた後、2002年に「すえおかこどもクリニック」を開設しました。
 大切にしているのは「患者さん本人である子ども自身に聞く医療」です。腹痛なら「どこが痛いの?」「どんなふうに痛いの?」と聞いて、指さしてもらったり答えてもらったりします。小さな子どもだと「うーん」と迷ったり、言葉がたどたどしかったりするけれども、本人と話すことって非常に重要だと思うんですよ。薬の飲み方についても、子どもの目を見て教えます。「このお薬は苦いけれども、飲めばこういうふうに良くなるから飲もうね」と。たいていの子どもは、きちんと説明をすれば分かってくれる。こういったことが、実は大切だと思います。
 また、当院では予約制で、診察・相談に時間を必要とするお子さんやご家族のための外来を週2回実施しています。午前の最後の枠なので、ゆっくりと時間をかけてお話ができます。内容はおねしょの相談から、発達までいろいろですね。僕ができるところは何回か来てもらって対応しますし、専門医につなぐべきと思ったら連携している医療機関を紹介しています。

新型インフル・パニックの時に触れた優しさ

家庭的な雰囲気を感じるクリニック。患者さんにも名前で呼び掛けている。「だって、名前で呼ばれるとうれしいじゃないですか」と末岡院長

 クリニックで心掛けていることは「笑顔」です。疲れた顔をしていたら、患者さんも元気をなくしちゃいますから。
 4年前、こんなことがありました。新型インフルエンザが流行した時のことです。確保したワクチンがあっという間に予約でなくなってしまい、その後の電話や来院した人には、ひたすらスタッフが謝り続ける日々でした。
 そんな中で「お昼は食べましたか?皆さんも大変でしょう」と、あるお母さんがケーキを差し入れてくれたのです。その方のお子さんには、ワクチンの数が足りずに予防接種をお受けできないと電話でもお断りをしたにもかかわらずです。当時は鳴り続ける電話を取り、ひたすら謝り続ける婦長の声も枯れていました。そんなところを気遣ってくれたんでしょうか。婦長をはじめ、私たちも涙が出ましたね。「よし、誠心誠意で対応しよう!」と。そういった経験を経て、僕たちも強くなっている気がします。

笑児科で行こう!

ホスピタルクラウンのKちゃんとスタッフ。子どもたちも大喜びだが「実は、僕がいちばん見たいんですよ」と末岡院長

 うちが目指すのは「待合室だけで8割ぐらい治った気になっちゃう安心感のあるクリニック」。たとえば、ホスピタル・クラウンの「Kちゃん」こと大棟耕介さんにも、クリニックに3回ほど訪問してもらっています。Kちゃんが来ると、注射で泣いていた子どもが笑顔になる。笑いって本当に大切だなあと思って、異業種の方と交換する名刺には「笑児科(しょうにか)」と入れました。クリスマスのシーズンには僕やスタッフもサンタの衣装で患者さんと接します。最初は患者さんに怒られないかな?あきれられないかな?と思ったけれども、これがお子さんにも親御さんにもたいへん好評で、毎年の恒例行事になっています。

子どもの笑顔が自分の喜び

診察デスクには、子どもたちからもらった物や受診に来て喜びそうな物を置いている。旅行先で買ってきたら、既に同じような物があったことも

 僕はよく笑う方だと思いますが、スタッフには「よく泣くよね」とも言われています。乳幼児の頃はよく熱を出していたお子さんが、入学式の日にランドセルを背負って元気な姿を見せに来てくれる。「こんなに大きくなって」と、つい涙が出ますね。また、注射を受けたお子さんが「私、大きくなったらここで働いていいですか」「僕、子どものお医者さんになりたいんです」と言ってくれたこともあります。僕はもう、感動して泣いちゃって。「君が来るまで、あと20年は頑張るからね」と答えました。
 長男はこの春、僕と同じ小児科医の道に進んでくれました。次男も、ホームステイ先で糖尿病の女の子と知り合ってから「僕も医者になる」と医学部へ。決して勧めたわけではないのですが、やはり父親としてはうれしいものです。
 仕事やプライベートで旅行に出掛けても、お土産に選ぶのは「クリニックに置いたら子どもたちが喜びそうだな」と思うものばかり。子どもの楽しそうな顔を見るのが、僕のやりがいであり、喜びなんですよね。

取材・文/高橋明子(たかはし・あきこ)
東京の業界紙や編集プロダクション勤務を経て、札幌移住を機にフリー。各種雑誌や書籍、ウェブサイトで地域情報や人物、住宅などの取材を行う。

医療法人社団 すえおかこどもクリニック

医院ホームページ:http://www.sueoka-kodomo-clinic.com/

JR千歳線上野幌(かみのっぽろ)駅より北海道中央バス、新札幌駅よりJR北海道バスで停留所「ライブヒルズ南」下車徒歩1分、「メディカルビル平岡公園東」1階。駐車場あり。
クリニックは、小学校の隣、メディカルビルの1階にある。第1、第2駐車場があるので車でも安心。感染の疑いがある患者は別室に直行できるように配慮されている玄関。待合室には、待ち時間も楽しめるように絵本や塗り絵、パズル、スタッフ手作りの折り紙ゴマなどを用意している。プレイスペースもある。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

小児科

末岡裕文(すえおか・ひろふみ)院長略歴
1989年 札幌医科大学卒業
同年 札幌医大小児科入局
北海道立小児総合保健センター(現・同子ども総合医療・療育センター「コドモックル」)、留萌市立総合病院、札幌市発達医療センター、国立療養所八雲病院、帯広病院、小樽病院小児科医長を経て
2002年7月 すえおかこどもクリニック開設


■所属・資格他
日本小児科学会認定医、日本小児神経学会認定医、日本小児アレルギー学会所属


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