第176回 一人ひとりに合った「楽しい出産」を
[クリニックインタビュー] 2015/02/27[金]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第176回
井上産婦人科クリニック
井上武司理事長
父の意思と病院を継いで

今の病院は、元々父の病院でした。産婦人科医として多くの命を取り上げる父の姿を、幼い頃から見ていた影響で、私もごく自然と医師の道、産婦人科医の道を志すようになりました。大学卒業後は大学病院の産婦人科で20年ほど勤務していました。当時は病院を継ぐつもりはなく、父も特に跡を継ぐことに関しては何も言いませんでした。ですがやはり地域の人々に貢献してきた父の意思を継ごうと決意し、開業へ至りました。
産科は緊急性も高く、何より命を預かる仕事です。「お母様も赤ちゃんも元気に退院してもらうこと」は当たり前。でも、それを当たり前にするためには、医師や助産師、看護師たちの責任感が強くなければできません。正直に言うと業務はかなりハードです。私自身プライベートで旅行に行ったことはほとんどありません。4名の常勤産婦人科医、十数名の助産師、十数名の看護師という個人開業医院としては多いスタッフ数を揃え、夜中でも産婦人科医が2名勤務しているのは、どんな時間でも緊急の患者さんに対応するためです。万全の態勢を整えることで、「いつでも安全なお産ができる医院」を心がけています。
出産の喜びを感じてほしい

初めての出産は分からないことばかりで、「お産=痛いもの」と捉えてしまったり、出産が近づくにつれて不安を抱いてしまったりする方も珍しくありません。ですが、私は赤ちゃんとの出会いであるお産をもっと楽しんでほしいと思っています。そのために、模擬出産や音楽に合わせた呼吸法の練習をおすすめしています。お産はその流れによって呼吸法も変わります。「この状態ならこういう呼吸、これくらいになったらこんな呼吸に切り替えましょう」など、お産の一連の流れを妊娠中からイメージトレーニングをすることで本番の時に慌てることなく、心身ともにリラックスした状態でお産に臨めるようになります。
昔は痛みに耐えることが美徳と思われがちでしたが、時代とともに患者さんのニーズも変わってきています。出産は赤ちゃんの人生の出発点となる大切な瞬間です。妊婦さんたちのお産に対するマイナスなイメージを取り除き、一人ひとりに合わせた分娩法を一緒に考え、安心して赤ちゃんとの出会いを楽しんでもらえるよう日々心がけています。
出産から産後の育児や子どもの成長まで、見守り続ける楽しみ

私はよりよいお産だけではなく、退院後の赤ちゃんやお母様方のサポートにも力を入れています。併設の小児科では生まれてきた赤ちゃんの成長の様子が見ることができ、20年以上続けている専門家の育児講演会にはたくさんの保護者の方に参加していただいています。そこでもよく話に出てくるのが、赤ちゃんは3歳までが一番大切な時期だということです。どういう精神状態で育ったか、守られ、可愛がられて育ったと感じることが重要です。自我ができて親の言うことを聞かなくなってくる年齢ではありますが、怒って叩くなどもってのほか。何かあったら抱いてあげなさいと専門家の方々は口を揃えて言います。また、ママサークルもずっと昔から続けています。お母様方のストレスや悩みを少しでも解消できる場になれば、と思っています。
毎日仕事が楽しいと感じています。元気な産声を上げた赤ちゃんがお母様と退院するのを見送り、ママサークルや小児科でその後の成長を見ることができる。これは、私たちにとってこの上ない喜びです。母子ともに心も体も健康に育ってくれること。それをお手伝いし続けていくことが、これからも変わらない目標であり、私の楽しみでもあります。
フリーライター。大手企業で、旅行・スクール関連の原稿作成に携わり、その後経験を活かしフリーに。独立後はWEBサイトを中心に、医療、旅行、求人などの取材、執筆を行っているほか、着物着付師、手作りアクセサリーのデザイナーとしても活動する、2児の子を持つママライター。
井上産婦人科クリニック
医院ホームページ:http://www.inoue.or.jp/

JR学研都市線住道駅下車、徒歩約4分。改札を左方向(北側)に出てスロープを下り、すぐ進んだ信号の真正面にあります。
広々とした待ち合いスペースや、シャワートイレ付個室、フレンチや懐石料理が食べられるレストランも充実。
詳しい道案内は医院ホームページから。
診療科目
産婦人科、小児科
井上武司(いのうえ・たけし)理事長略歴

1973年 関西医科大学附属病院 産科婦人科 助手
1975年 関西医科大学附属男山病院 産科婦人科 医長
1982年 井上産婦人科 開業 院長
1990年 医療法人 井上産婦人科クリニック 理事長
■所属・資格他
日本産婦人科学会 認定医、母体保護法 指定医
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