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[クリニックインタビュー] 2009/06/05[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第22回
フェニックス メディカル クリニック
賀来宗明院長

患者さんとは”一会一生”

phoenix_01.jpg 台湾出身の私は、16歳の時に初めて日本に来ました。当初は日本語がまったくわからず、言いたいことを相手に伝えるのに、目を見て話すよりほかありませんでした。目で訴えて、真意を伝える。その頃身についたコミュニケーションの習慣は、今でも仕事にとても役立っています。
 医師を志したのは、人が好きだからです。ダメージを受けた患者さんの身体をもとに戻すため、一刻も早く疾患をみつけ可能な限り生きる希望を見いだし、患者さんと肩を並べて共に戦い、その治療の過程で喜びを分かち合ってきました。これが私の医療の信念です。医学部を出てから東大の産婦人科医局で受けた厳しい訓練は、今日の治療の基本となっています。医局での経験は、ひとつひとつ私の財産になりました。
 毎朝目覚めて思うことは三つあります。一つ目は、“今日出会える患者さんのために何をして差し上げられるか”。二つ目は、“今日も一日患者さんは私たちの医療に満足して下さるか”。三つ目は、“今日は昨日より少しでもいい医療ができるかどうか”です。

できることを尽くす医師でありたい

 医師の仕事は万国共通。医療には国籍の隔たりがありません。しかし、究極の治療現場では医療行為以外に、医師と患者を越え、人と人との対話が求められます。その時にどれだけ“言葉”を交わせるかというのが、もっとも大事な医療だと私は思います。医師の器は、そうした現場において表れるものと言えますね。
 いたわりや慈しみの心にも国籍は関係ありません。相手の力になりたい、という思いが一番大切です。医師は患者さんに医療を施すだけにとどまらず、心のこもった言葉を伝えるたった10秒、20秒を、惜しまずに口にしつづけることが必要ではないでしょうか。
 “できることを尽くす”ことは、とても重要。医師の平均寿命は他業種と比べ短いといいますが、それでもいいじゃないですか。例えば、ろうそくは火を灯されると輝くかわりに、短くもなってゆく。火が灯されなければ短くなることもないけれど、輝く機会も永久に訪れません。自分の人生のろうそくを持っているなら、それを使って人のために輝こう、周りを照らそうという気持ちを持ち続けたいと思います。奉仕と犠牲、それが医師の基本だと私は考えています。
 “よい医者”を測る基準には、患者さんが「いつ行っても必ずいる医者」という観点があります。私にとって人との出会いは一期一会ではなくて、一会一生です。一度ご縁ができたら一生関わりたい。私はこのような気持ちで患者さんに接しています。日曜日は休診日ですが、手術を受ける患者さんも多く、本当は自分で手術も執刀したいですが、それはかなわないので、せめて術前後の激励にと思い、一日に4~5箇所の病院を日曜日はいつも回っています。できることを尽くす。私にとっての医師の仕事というのは、ひたすらにその繰り返しですね。

本当のホスピタリティとは

 この仕事をしていていつも思うのは、“信念があれば、道ができる”ということ。 “桃李不言、下自成蹊”と故事にあるように、一生懸命でいい技術があれば、おのずと患者さんが集まってきます。患者さんの痛みや喜びを常に感じ取れる医師として、また、患者さんの本当の味方として、病気に立ち向かいたいというのも私の信念です。
 クリニックの方針としても、私たちは“日本で一番患者さんに優しいクリニックを目指します”と掲げています。でもこれは、信念を越えて“誓い”の意味合いが強いですね。信念は失っても咎められることがありませんが、誓いは破ってはならないほど重いものでしょう?このフレーズはスタッフの目に付くところに掲示していて、いつでも意識できるようにしています。
 日本一の優しさを常に心がけて行動していれば、患者さんに本当のホスピタリティを提供できます。また、ホスピタリティや優しさというのは、雰囲気や見た目ではなくて、高いレベルの医療を提供することだと思うのです。具合の悪い患者さんに長時間お待ちいただく際には、横になる場所を用意するとか、患者さんに「次は○階へどうぞ」と口頭で言って済ますのではなく、スタッフがきちんとご案内するとか、そういう目配り、気配りを繰り返すと同時に、医療レベルを向上させるために必要な機器は惜しまず導入していくことなどが、クリニックの患者さんに提供する「優しさ」だと私は考えます。最善と思われることにいつでも取り組む。これは医療人の義務ですね。

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待合室は美術作品が多数。院長の絵画作品が随所に飾られ、待つ人の目を楽しませている。花は開院時からの患者さんが季節ごとに生けてくれている。

医療は世界共通言語

 以前より日本以外に台湾で教鞭を執る機会も少なからずあります。卒業間近の医学生に、臨床や基礎研究など、自分が学んできたことをできるだけ伝えるようにしています。
 また、昨年台北医学大学の医学生たち50人を東大に招き、学術交流の機会を設けました。彼らはコーラス部でもあるため、その時、交流の一環として、東大病院の外来待合室の椅子を半分片づけ、入院患者さんたちに歌をプレゼントすることにしました。聴衆の患者さんには「これから歌うのは、今後社会に出て、医学の道を歩む学生たちです。歌声で病を少しでも癒してください」と話し、学生たちには「真の医療とは注射や治療だけではなくて、患者さんの不安を取り除く温かさですよ」と伝え、合唱してもらいました。
 館内放送でお知らせしましたので、入院中の患者さんたちが車椅子やストレッチャーでみなさん聴きに来てくださいました。なんだかとても感動してくれた方も多く、言葉の壁なんて関係ないんだな、と医学生にも患者さんにも実感してもらえたと思います。
 浮世で大事なのは縁と情。同じ時代に生まれた人間同士、縁も情も互いに伝え合って、生きていけるのがいいですね。

患者さんとの思い出が宝物

 不妊治療で診ていた患者さんが妊娠し、他院で出産したあと、退院日すぐに自宅に戻らず、先にクリニックに立ち寄ってくれることが多く、そんな時はとても嬉しいです。生まれたばかりの赤ちゃんとお母さんと、一緒に写真を撮るのですが、それがもう何千枚にもなりました。なににも換えがたい私の宝物ですね。いずれ引退してからは、その写真を眺めて余生を送りたいと思っています。老後の楽しみですね。
 また、ご家族の受診などをきっかけに付き添ってきた若い人が、医学部や看護学部などを目指すことになったと言ってくださることも多く、とても感慨深く思っています。実際に、「希望の学部に受かったので、将来はここで賀来先生と一緒に働きたい」と言いに来てくれることもあり、今年も何人もの方にそう言っていただきました。若い世代が「いつか一緒に働きたい、同じ夢を見たい」なんて言ってくれると、泣きそうになりますね。これだけ広い地球でたまたま出会って、次世代医療を共に取り組むことを約束する。素晴らしいことではないでしょうか。確固たる信念を原点にもつ人は強いですから、こうした若人と共に医療現場で働く日も、きっと近いことでしょう。

取材・文/戸谷妃湖(とたに ひこ)
広告代理店のコピーライターを経て、現在フリーライターとしてロンドン・北京・東京の三都市を基点に活動。被虐待児童におけるトラウマティック・ストレス学、および漢方による精神疾患アプローチに関する研究をライフワークにしている。

フェニックス メディカル クリニック

医院ホームページ:http://www.phoenix.gr.jp/index.html

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エレベーターも2基完備。東京メトロ副都心線「北参道駅」2番出口スグ。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目・設備

内科・外科・産婦人科・循環器科・消化器科・呼吸器科・整形外科・アレルギー科・眼科
*専門外来:糖尿病外来・呼吸器外来・整形外科外来・婦人科腫瘍外来・胎児スクリーニング外来・乳腺外来
*人間ドック・生活習慣病健診・主婦健診・定期健診

賀来宗明(かく・むねあき)院長略歴

賀来宗明院長

1978年 米国・ハーバード大学留学
1979年 英国・オックスフォード大学留学
1983年 東邦大学医学部卒業
1984年 東京大学医学部附属病院産婦人科医局入局
1990年 東京大学 文部教官/日本産婦人科学会 認定医
1991年 東京都教職員互助会三楽病院 医長
1992年 東京大学医学博士学位取得/遠東癌センター副院長/
      実践大学生活応用科学系 助教授
1993年 台北医学大学産婦人科 助教授
1994年 フェニックス健診センター 院長/郭クリニック 院長
1999年 日本病院会人間ドック認定指定医/フェニックス メディカル クリニック 院長
2000年 帝京大学医学部 非常勤講師
2005年 実践大学民生学院 教授
2006年 オキシデンタルミンドロナショナルカレッジ 名誉教授

■現職
医療法人社団鳳凰会フェニックス メディカル クリニック理事長・院長/東京大学医学博士/東京大学医学部産婦人科医師/遠東癌センター副院長/帝京大学医学部非常勤講師/台北医学大学産婦人科助教授/実践大学民生学院教授

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