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[クリニックインタビュー] 2015/10/09[金]

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患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医のお医者さん。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

千里ペインクリニック 松永美佳子理事長

怪我を機に、医師の道へ

 小さい頃から動物が好きで、獣医になりたいと思っていました。高校に入ってからはバスケットに夢中になり、実業団入りを目指していましたが、高校3年生の春、練習中に膝の靭帯を切る大怪我をし、夢を諦めざるを得ませんでした。精神的なストレスなどが重なって胃潰瘍になり、学校も休みがちになってしまいました。
 卒業時になってようやく気持ちが落ち着いた時に、怪我をして痛みや辛さを経験したことで、人を診る医師になりたいと思い、2浪して医学部へ進学しました。卒業後は内科へ入局しましたが、2年目は救命センターへ配属され、1年間救急を学びました。その後、救命センターでの麻酔経験を生かして麻酔科へ勤務することになりました。
 その後、勤務した病院は最先端の治療をする病院でしたが、手術や集中治療などを行った後、残念ながら回復せずに亡くなってしまう多くの高齢者と出会いました。また、積極的治療が終われば病院の中でも、今で言う「緩和ケア」の行なわれない末期がんの患者さんの現実を目の当たりにしました。肉体的、精神的な痛みを伴う患者さんにとって家での生活は簡単ではなく、介護するご家族にも負担がかかります。そうした患者さんにこそ医療が必要なのに、積極的治療が効果なくなれば、その痛みをケアされることもなく、不安が強くて自宅に帰れない多くのがん患者さんたち。そこに矛盾を感じずにはいられませんでした。そのようながん患者さんが安心して自宅で過ごせるように、訪問する医療をしてみたらどうだろうと思い、在宅ホスピスとペインクリニックを専門とするクリニックを開業しました。

「ホスピス型賃貸マンション」という新しいかたち

 当院へはさまざまな痛みを抱えている患者さんが来ます。他院からの紹介もありますが、まだまだペインクリニック自体の認知度が低いため、早期治療ができない場合もあります。症状によっては初期治療ができなかったために痛みが長引き、時には一生取れないこともあります。痛みは、日常生活に大きな支障をきたします。痛みが原因で普段通りの生活ができなくなり、高齢者では寝たきりになるケースも少なくありません。痛みを取り除き、ADL(=日常生活動作:食事や排せつ、入浴など、日常生活を送るうえで、必要最低限な動作のこと)やQOL(=生活の質)を保つのが私の仕事です。

アマニカスの室内

 これまで1,000例以上がん患者さんのご自宅へ訪問を行ってきましたが、老々介護や独居老人の家庭が多いことに驚きました。自分で生活しているときは、問題ありませんが、症状が悪化し、介護が必要になると、老々介護や独居では、介護破たんを起こします。がんの末期はさまざまな症状を起こすため、ご家族の精神的負担も大きく、最期をご自宅で迎えることは大変なことでした。
 2011年の暮れ、そんな人たちのために「アマニカス」という名称の「ホスピス型の賃貸マンション」を建設しました。アマニカスというのはサンスクリット語で「平安なる場所」という意味です。1階が病院、2階と3階が居住スペースになっており、24時間体制でクリニックに連絡が取れ対応ができるようになっているので、介護破たんを起こしたがん患者さんやがんではなくても痛みでお困りの方、通院が困難な人や独り暮らしで困っている人にも安心して過ごしてもらえるのではないかと思っています。病院ではないので、夜中の出入りやペット、お酒やタバコも自由。ここで痛みを取りながら、別の病院で治療を受けることもできます。患者さん一人ひとりに合わせて、その人らしく楽しく過ごしてもらうことを大切にしています。

全スタッフが、患者さんをもてなす心を忘れずに

地下にあるライブハウス

 日々の診察では、患者さんの目線に立った医療を提供することを心がけ、その人にとって何が一番いいのかを考えています。また、病気は精神的な悩みも伴うため、専門スタッフによる心理的なサポートは欠かせません。さらに、医師や看護師はもちろん事務スタッフが、患者さんとその家族の話をよく聞くようにしています。病気の人にはちょっとしたことでも大きな影響を与えてしまうことがありますから、全スタッフが「患者さんをもてなす」という気持ちを忘れずに接するようにしています。往診や診察で忙しい毎日ですが、患者さんの痛みをとって喜ばれることが嬉しいです。
 私は医師であり経営者でもあるため、仕事が頭から離れることはありません。3匹の犬がそんな私の心を癒してくれます。休みの日には趣味のゴルフや社交ダンス、ドラムを習ってリフレッシュしています。音楽も好きで、毎月病院の地下にあるライブハウスでプロによるジャズライブを開いています。一般の人はもちろん、患者さんも見に来て、私たちスタッフと一緒に楽しんでいますよ。スタッフも患者さんも、自分らしく楽しく過ごせること、そんな場所をこれからも作り続けていきたいと思っています。

取材・文/佐藤裕子(Yuko Sato)
フリーライター。大手企業で、旅行・スクール関連の原稿作成に携わり、その後経験を活かしフリーに。独立後はWEBサイトを中心に、医療、旅行、求人などの取材、執筆を行っているほか、着物着付師、手作りアクセサリーのデザイナーとしても活動する、2児の子を持つママライター。

千里ペインクリニック

医院ホームページ:http://www.senri-pain.jp/home.html

大阪モノレール少路駅から徒歩1分。レンガ造りのキレイな建物とガーデニングが目印で、受付には3匹のセラピー犬が出迎えてくれます。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

麻酔科

松永美佳子(まつなが・みかこ)理事長略歴
1991年 大阪大学医学部卒業
1992年 大阪府立千里救命救急センター勤務
1993年 箕面市立病院麻酔科勤務
1994年 大阪大学医学部附属病院集中治療部勤務
1995年 大阪大学医学部附属病院麻酔科勤務
1996年 阪南中央病院麻酔科勤務
1999年 市立豊中病院麻酔科勤務
2002年 大阪北ホームケアクリニック勤務
2004年 NTT東日本関東病院ペインクリニック科研修
2004年6月 千里ペインクリニック 院長


■所属・資格他
日本麻酔学会専門医、日本ペインクリニック学会専門医


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