[クリニックインタビュー] 2015/12/11[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医のお医者さん。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

田中宏明・内科胃腸科クリニック 田中宏明院長

医療従事者の多い環境で育ち、医師の道へ

 私の実家は薬局で、祖母の代では漢方薬局を営んでいました。他にも開業医のおじがいたりと、医療従事者が多い環境の中で育ちました。また、父の実家は大分県湯布院の近くで、そこから少し離れた湯平温泉という有名な温泉街がある所です。そこの温泉は飲用にもできるので、住民の方がよく坂道を上って泉源までお湯をくみに行くんです。そのせいかどうかはわかりませんが、ここに住む多く人がすごくお肌がきれいで筋肉質かつ寿命も長い。そういった人たちを子どもの頃から見ていて「健康って大事だな」と思っていたんです。と同時に、病気にならないためにはどうしたらいいのかということに興味がわき、医師を目指しました。

アミノ酸の研究をきっかけに腸内環境の重要性を認識

 大学では消化器疾患を研究し、大学院ではアミノ酸バランスを変化させることで「がんウイルス」の働きを抑える研究をしていました。その研究を通し、まず人が健康を保つにはアミノ酸をはじめとする栄養素のバランスが大切だということを、細胞レベルで学びました。そうするうちに、細胞の集合体である人間の体もきっと同じに違いないと考え、人間が病気になるのは正しい体の使い方をしていないからではないか、多くの病気は腸内環境に起因しているのではないかと考えました。それで、そうした観点から病歴や診察所見と胃腸の内視鏡所見を有機的に結びつけ、腸内環境改善の方法を長年に渡って模索していました。そして、このようなコンセプトで診療するには開業するしかないということでクリニックを開設したわけです。
※腫瘍形成にかかわるウイルスのこと。現在まで6種類のウイルスに発がん性があると評価されている。

綿密な問診と内視鏡を駆使

 実際、胃の調子が悪くて胃腸科を受診したけれど、なかなか治らないという人は多いと思います。そうした場合、患者さんが胃の調子が悪いと訴えても、本当に胃が原因なのかどうかわかりません。ですから、私はまず、患者さんにいろいろな質問をします。延々と睡眠の質まで聞いて、正しい体の使い方をしていない部分を探っていく。これが私の診療の一番のポイントです。また、東洋医学的な見地から肌の状態や目、歩き方、臭いまでよく注意を払い、舌診も行います。これだけで予測がつくことも多いです。
 他にも、食生活では小麦粉製品が多いとか、野菜の取り方が少ないとか、突き詰めていくといろいろと出てきます。ただ、こうしたことはとてもプライベートなことなので、聞くのになかなか難しい面もありますが、そこまで踏み込んでいくときちんとした診療や、処方薬の減量にもつながることが多いのです。
 それから当院では、大腸検査を年間約800~900件しています。通常、大腸カメラは便潜血検査で陽性が出たら行うものですが、便潜血検査では見逃してしまう病気もあります。ですから、当院では、お通じの調子がよくない方にも大腸カメラをお勧めしています。大腸カメラですと、便潜血検査で拾えなかったがんやポリープ、大腸メラノーシスという腸の表面の黒い色素沈着や、腸壁の一部が外側に袋状に膨らむ憩室という病気なども発見できるからです。私はそうしたことも含めて、腸内環境を改善できるよう手助けしたいと考えています。

他のエキスパートとの連携と啓蒙でより良い診療を

 昨今、私が10年以上前から実践してきた内容が、腸内細菌学の進歩によって具現化されてきたことを心より嬉しく思っています。今後はさらに、腸内環境の改善が健康に役立つことを啓蒙したいと思います。
 また、現在の医療の場では歯科や耳鼻科との連携が少ないと思います。そもそも消化器科の医師は食道から下を診るのが専門なので、その欠落した部分を補ってくれるエキスパートが歯科と耳鼻科の先生といえます。ですから、特に歯科の先生と連携をして、お皿から口に入ってお尻まで全部一つながりでの診療ができたらと考えています。

健康のために楽しく笑えるプライベートを

 私自身も健康には気を使っていて、医療用サプリメントを利用したり、軽い糖質制限もしています。食事にも気をつけていますが、お酒もけっこう飲みます(笑)。それに、健康のためには楽しく笑うことも大事。休日は楽しい友達とゴルフをして笑って過ごしたり、おいしい食事をしたり、車で温泉に行ったりします。長期の休みがあると家族で旅行にも行きますね。語学が好きで英語通訳をしたこともありますし、シャンソンコンクール出場の経験もあります。他にも、Facebookつながりでシャンパンパーティを定期的に開催しているんですよ。こんなふうに、忙しくてもある程度元気なのは、「笑い」がもたらす免疫力の向上を意識し、それに努めているからかなと思います。
 読者の方には、正しい体の使い方をしていれば病気のリスクを下げられることをお伝えしたいです。具体的には、呼吸や腸内環境、姿勢に気を付けることです。一時的にはお薬で症状を治すことはできますが、呼吸、腸内環境、姿勢を正せばばいろいろな病気にかからずに済むということですね。

取材・文/後藤 玲(Rei Goto)
医療系を中心にWEB、紙媒体で執筆。健康、料理、お菓子作りなど生活全般における執筆も得意とする。病院取材の他、一般企業への取材活動も行っている。

田中宏明・内科胃腸科クリニック

医院ホームページ:http://hiroaki-clinic.jp/

福岡市地下鉄七隈線「七隈駅」より徒歩15分、西鉄バス「片江小学校前」より 徒歩1分。福大通りから一本入った閑静な場所にあるクリニック。高い天井の待合室は広々としており、処置室はプライバシーにも配慮されています。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、胃腸科

田中宏明(たなか・ひろあき)院長略歴
1981年 九州大学医学部卒業、第二内科消化器研究室
1984年 九州大学生体防御医学研究所、九州中央病院内科医長、江頭病院内科部長
1994年 田中宏明・内科胃腸科クリニック開業



この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。