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新規会員登録(無料) ログイン第25回 「よく聞き、よく見て、よく話す」医者でありたい
[クリニックインタビュー] 2009/06/26[金]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第25回
藤間産婦人科医院
藤間芳郎院長
「よく聞き、よく見て、よく話す」医者でありたい
産婦人科医だった私の父は、亡くなるまでの40年近く、ここ弥生町でずっと開業医をしていました。そんな父の姿を見て育ったことが、医師をめざすきっかけになりました。それに、医者という職業は、確実に人助けができます。つまり医者というのは、“絶対的な価値のある仕事”だと感じていたんです。
「医者は病気を治してあげる存在」と捉える人もいますが、私は「治してあげる」というのは違うと思っています。この仕事には「患者さんが助かる方向へ導く」という要素の方が強く、病気を治すのは医者ではなくて、どこまでいっても患者さんご自身。
色々な仕事が世の中にはありますが、医者は「人助けをする仕事のひとつ」に過ぎません。ですから私は患者さんの話をよく聞き、患者さんのことをよく見て、そして納得してもらえるまでよく話す医者でありたいといつも考えています。
フロイト、ユングに興味をもって
高校生の頃は、精神科医になりたいと漠然と思っていました。フロイトやユングの本を読み、心理分析に興味をもっていましたので、大学も半ばを終えるまでは、産婦人科医になろうという考えをほとんど抱いていませんでした。
ある時、精神病院に実習で訪れた際、自分のイメージしていた精神科医とのギャップに驚き、実際の現場では精神分析ばかりやっているわけでもないんだということを知って、とてもショックを受けました。そこから精神科医ではなくて、産婦人科になるということを具体的に考え始めたんです。
父は自分の子どもを、比較的大変な産婦人科医に敢えてさせようとは思っていなかったようです。感染症のリスクもあり、裁判になる可能性も低くない。赤ちゃんの誕生に関われることを思っても、夢のようなことばかりとはいきません。表立っては反対していて、でも、実際私があとを継ぐことになった時には、とても嬉しそうにしていました。本音では自分と同じ道を、歩んでほしかったのでしょうね。
私としても、人の気持ちを推し測るという側面で精神分析の知識を活用することもできていますし、この道に来てよかったと感じています。
不妊治療をどこで受けるか
当院では不妊治療にも取り組んでいます。産婦人科の大きな特徴である、“病気でない人を対象とする”点の象徴的なところですね。特に不妊治療の患者さんは健康体であることが多く、病気を治すのではなく、新しい命を迎えるために通院し、そして喜びとともに帰って行くことになります。体外受精が成功した方に喜んでいただけると、やっぱりこちらも嬉しいですし、やりがいを感じます。
もとはと言えば、内分泌に関心を抱いてアメリカに留学したんです。そこでホルモンの基礎的な研究をしていて、もっとも関連の深い不妊症について専門的に取り組んだのが、現在の不妊症治療につながっています。できればいっそう力を入れたいところですが、ここは長いこと地域のみなさまに、町医者として利用されている医院です。不妊治療の患者さんだけでなく、小児科にかかるお子さんや、一般内科にかかる男性なども多くお見えになります。不妊症の治療を受ける方は、そういう待合室がつらく感じられることも当然ありますので、「負担を感じられるようなら、不妊専門クリニックに行くこともできますよ」という風に、最初にお伝えしています。病気でなくとも病院に長く通っていると、どうしても心労から体調を崩すことがありますから。
不妊治療の専門クリニックは、都内ではだいぶ増えてきました。治療法、治療フローなどはある程度決まっているところもあり、大勢の患者さんを効率的に診ていけるようです。
一方、当院のようなところでは、治療の内容や目的をすべて理解していただくまで相談に乗り、説明をします。納得してから治療を受けてもらいたい、そんな気持ちがありますね。特別な治療に特化しているわけではありませんので、まさに「よく聞き、よく見て、よく話す」ということの繰り返しです。
本来なら、診療報酬の中に“傾聴”が含まれた方が、日本の医療は向上すると思うんです。年を取ったベテランのお医者さんが聴診器を当てて診断しても診療報酬はゼロ、新米医師がろくに患者さんの方を見ず、機械を使えば点数が生じる。これが、「ちゃんと診ない」医療の蔓延を助けてしまったわけです。
いい医者探しは大変だと思いますが、不妊治療に臨まれる患者さんは「自分の悩みにきちんと対処してくれる医師かどうか」という観点をもち、長期にわたる治療をうまく乗り越えてほしいと思います。
からだを配慮するために
医者の不養生そのままに、産婦人科医は病みやすい(笑)。父も50前後で体調を崩しましたし、私は健康には気をつけています。
なにかにつけてクヨクヨしても仕方がないので、落ち込みそうな時はよく動くことがポイントです。私は調布から片道12kmの道のりを、毎日自転車で通勤しています。乗らないと調子が悪くなってくるくらい、いい運動になりますね。梅雨の時期は大変ですが、春や秋はとてもいいですよ。
せっかく、ある程度自分のスケジュール管理が利く開業医の立場なので、食生活にも気をつけて、暴飲暴食は避けています。料理をつくるのも好きで、和食からイタリアンまでなんでもつくりますよ。外食は家庭でつくるものと比べて、同じメニューでもカロリーが高いですから、健康に気をつけたい方なら避けた方がいいですね。
材料からこだわる料理の時間は、食材や自分と向き合い、無心でいられる貴重な時間。同じ理由で、DIYも好きです。棚とか倉庫とか、頼まれたらなんでも作っちゃいます(笑)。
広告代理店のコピーライターを経て、現在フリーライターとしてロンドン・北京・東京の三都市を基点に活動。被虐待児童におけるトラウマティック・ストレス学、および漢方による精神疾患アプローチに関する研究をライフワークにしている。
藤間産婦人科医院
医院ホームページ:http://www.toma-clinic.jp/index.htm
子どもの目の高さに、たくさんのかわいらしいマグネット。これがあれば母親の診察中も静かに遊んでいてくれる。受付には週変わりで花が生けられている。この週はなんとパイナップル。都営大江戸線「西新宿5丁目(清水橋)駅」から徒歩5分。スロープ完備。詳しい道案内は医院ホームページから。
診療科目
*産婦人科
生殖内分泌(不妊症、月経異常)、思春期異常、更年期障害・ホルモン補充療法、子宮内膜症・子宮筋腫のホルモン治療、月経異常、避妊指導、膣炎、性感染症、妊婦健診、人工妊娠中絶、子宮がん・乳がん検診、内視鏡検査・手術
*小児科
一般小児科診療(感染症・湿疹等)、乳児健診ほか
*内科
一般内科診療(感染症・胃炎・湿疹等)、高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病ほか
藤間芳郎(とうま・よしろう)院長略歴
平成3年3月 昭和大学大学院医学研究科外科系産婦人科学修了
平成5年4月 医学博士取得
平成5年6月~
平成7年8月 HAUPTMAN-WOODWARD Medical Research Institute, Inc.(ニューヨーク州バッファロー)に留学
平成12年4月 藤間産婦人科医院 開業
■現職
藤間産婦人科医院長/昭和大学医学部産婦人科学教室兼任講師
■主な学会活動
日本生殖医学会 庶務担当幹事/東京産婦人科医会社会保険担当常務理事/日本産科婦人科学会会員、産婦人科専門医/日本産婦人科医会会員、母体保護法指定医/日本生殖医学会生殖医療指導医/日本受精着床学会会員/日本哺乳動物卵子学会会員/日本内分泌学会会員 など
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