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[クリニックインタビュー] 2009/07/10[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第26回
私のクリニック目白
平田雅子院長

皮膚を通してその人のすべてを診たい

hirata_01.jpg 私が医師になったのは産婦人科医だった父の影響が大きいです。うちは1階が外来、2階が手術室と病室、3階も半分が病室で、もう半分と4階が住居だったので、子供の頃から、1日中忙しく働いている父の姿を見て育つうちに、とくに何がきっかけということもなく、自然に医者になることを目指していました。
 皮膚科を選んだのは、大学を卒業する時期になってから。今でも患者さんに「皮膚は内臓の鏡」とお話していますが、その人の身体の内側の状態や、生活環境がすべて現れる臓器なんですよ。皮膚が弱い人はたいがい内臓も疲れていますね。顔や手は誰にでも見えるところなので、一番にきれいにしてあげたいと思います。
 それと、皮膚科というのは大掛かりな設備や機材がなくても、ルーペさえあればできる仕事なのです。自分の目で見て、手で触れて、匂いを感じて診断する。塗り薬にしても、2種類を順番に塗るのと、混ぜて塗るのとでは効果が違う。混ぜる比率によっても違う。そういうところに興味をもちました。そのころ、小児外科の素晴らしい先生に出会ったので、そちらに進むことも考えましたが、「いずれ結婚して子供を持っても、皮膚科ならば全身をみながら長く仕事を続けられるのではないか」と思い決定しました。当時から、結婚しても一生仕事を続ける気でいましたから。

手術を経験して

hirata_02.jpg 大きな転機になったのは大学病院に勤めていた30代の頃、子宮内膜症で手術をしたことです。その頃は毎日忙しくて、食事もまともにとれない状況でした。私は高校生の頃から生理痛が重く、父に中用量ピルを処方してもらっていたくらいだったんですが、少しよくなって中断しているうちに、ますますひどくなって、研修医の頃、同じ病院の医師に急遽診てもらうことに。その際、「生理痛は病気じゃないんだから、痛み止め飲んでおくしかないですよ」と言われ、診察を受けることから遠のいてしまいました。痛み止めを飲んで無理を続けていたら、ある日外出先で倒れてしまって、ようやく病院に行ったらもう手術するしかないと言われたんです。
 それが、運が悪かったのか、技術的なことなのか、状態が悪くなり、気がついたときには体中に管が繋がってて身動きもできない状態。電話の受話器を持ち上げることもできないくらい、身体が弱ってしまって、このまま普通の生活ができなくなってしまうんじゃないかという恐怖を感じましたね。そのときに小学校4年生の息子のことが頭に浮かんで「私が倒れても医者の代わりはいるけど、お母さんの代わりはいない!」と思い、それからは一転して、自分の身体をとても大事にするようになりました。
 私と同じように身体の不調を抱えながら、無理をしている女性たちの力になりたいと考えるようになったのも、この経験がきっかけです。働き盛りの女の人は、みんな忙しくて疲れていますよね。だからこそ、家庭でも会社でも、女性を元気にしていくことで世の中が上手くまわっていくのでは?と思います。

理想の診察所を目指して

hirata_03.jpg このクリニックを開設する前に務めていた診療所では1日に2~300人、多いときには7~800人も診察していたんですよ。当然1人の患者さんに割ける時間は短くて、そのなかで精一杯のことはしてきましたが、もっとゆとりをもって診て差し上げたいという気持ちがずっとありました。
 それに、待合室でも診察室でも、患者さんのプライバシーが筒抜けの病院って少なくありませんよね。「ハイ、これは水虫の薬、これはおしりの薬ですよ」なんて、他の患者さんにも聞こえるところで言われたりするのは、私だったらすごく嫌です。さらに、検査のために1日中病院にいて、その結果を聞きに行くために、また仕事を休まなきゃいけないものつらいです。検査の結果も「大丈夫ですよ」の一言じゃなくて、なにがどう大丈夫なのか、内容をきちんと説明してもらいたいですよね。自分がされたら嫌なこと、してほしいことを考えて、自分の診療所でそれを実現しようと思いました。
 今は患者さんひとりひとりにしっかり向き合う姿勢を。皮膚のトラブルは、ほとんど生活習慣を変えることで治ります。食べるもの、顔や身体の洗い方、タオルや身に着けるものの選び方、汗の対策はどうするか、そういったものをきちんとコントロールできれば、頻繁に病院にくる必要もなくなります。
 将来は皮膚で困って病院にくる人が減ってくれるといいですね。病院に通う時間は少ないほうがよいですよね。私は自分が病気になって手術したり入院していたことは残念だったと思っています。最初の時点で適切な診断を受けられて、きちんと診察を続けていれば、お腹を3回も切ることはなかったんじゃないかという思いはあります。他の人には、こんな痛い思いをしてほしくはないですね。
 皮膚のどこかが痒かったり痛かったり、何かができていたりすると、それだけでいろいろなことに消極的になってしまいますよね。でも少し頑張って習慣を変えることで、絶対によくなるので、病院を上手く利用してほしいです。

食事がすべての基本

 病気で倒れてからは、私も食べるものに気を配るようになり、今では料理が趣味になっています。食材は身体に良いものを扱っている宅配業者を利用して、スーパーは使わなくなりました。料理って、材料を切りながら、揚げ物をしながら、洗い物をしながらというように、平行していろんな作業をしますよね。そのうえ料理をしながら洗濯機を回したり、電話にでたり……。そうやって一度にわーっと頭を動かすのが気分転換にもいいみたい。健康のためには、きちんとした食事を、家族と笑いながら食べることですね。
 そして女性は身体を冷やさないこと。私は冷房で冷えすぎないように、机の下にヒーターを入れたり、少しでも寒いと思ったらすぐに着るものを1枚増やすようにしています。冷たいものを飲むのを控えたり、身体を温める効果のある食材を選ぶのも大事。
 これからは子どもや赤ちゃんをもっと診たいと思ってます。皮膚のトラブルは大人になってからでも十分に対処できますが、やっぱり小さい頃からのケアによってトラブルのできにくい肌になります。子供の皮膚を守るための知識をお母さんたちに知ってもらうためのイベントなどをしてみたいです。
 患者さんのなかには、ずっとアトピーが酷くて、何人ものお医者さんにかかっても治らなかったのに、今では薬を使わずに普通の生活ができて、お化粧もできるようになった人たちがいるんです。たまたま治る時期に出会っただけかもしれませんが、私を信用していただき、水だけで顔を洗うとか、食事に気をつけるとか、そういうことを頑張って実行していくうちによくなっていったんですね。皮膚科の仕事は、よくなったことが誰の目にも見えるので、患者さんと一緒に喜べるのが嬉しいですよ。「病気は治ったけど、また来てもいいですか?」とか「先生と話すと元気になる」と言ってもらえると本当に嬉しいです。
 これからも、皮膚を通してその人のすべてを診る医者でありたいと思ってます。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

私のクリニック目白

医院ホームページ:http://www.watashino.jp/
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広々とした待合室。いたるところに素敵なフラワーアレンジメントが飾られていて、落ち着いたなかにも華やかさが感じられる。場所は山手線目白駅に隣接したホテルメッツの1階。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

皮膚科・婦人科・内科・アレルギー科・心療内科・カウンセリング・健康診断

平田雅子(ひらた・まさこ)院長略歴

平田雅子院長

日本大学医学部卒業
東京医科大学病院勤務
東京医科大学八王子医療センター勤務
永山クリニック副院長
2003年「私のクリニック目白」開設

■所属ほか
NPO法人女性医療ネットワーク理事、医学博士、日本医師会産業医、豊島区理事会医師

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