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[クリニックインタビュー] 2016/02/26[金]

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患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医のお医者さん。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

松瀬医院 松瀬観翁院長

「いまここにある」ことを大切に

 富山で小児科内科を運営していた祖父の代から、三代続く医師の家系です。現在の場所(横浜市金沢区)に開業したのは父ですが、父からは、医師になるよう特に勧められた記憶はありません。いつの間にか医療の道を選択していた感じです。子どものころから宗教、哲学に興味があり、中学生の頃には『チベット死者の書』を愛読するほどでした。宗教と哲学は世界を科学と別角度で眺める視点の一つとして、大切なものだと今でも考えています。
 マクロビオティックの大家・大森英桜先生に師事し、中医学、鍼灸から人相、手相学、西洋占星術以外の占いや八卦まで、幅広く学んでいきました。医師会に所属しながらもどこか異端の存在のようで、「先生のやっていることは何なのですか?」と質問されることも多々あります(笑)。私のなかではすべて世界の真理を追究するうえで、意味を共有する概念ですが、理解されていないと感じることも正直ありますね。
 中医学の考え方では「気」が巡ることで全身の状態がよくなるとされていますが、この「気」は自分自身が目の前にあるものごとに納得して「腑に落ちた」瞬間にこそ巡るもの。今目の前にあるものに満足できない人、常によそに気移りした状態の人では、「気」を巡らせることも難しいでしょう。私自身、「いまここにある」ということを大切に、日々目の前の患者さんと向き合っています。

病気と向き合う患者自身を手助けする立場で

 現在、中医学に基づく漢方治療を実践し、「病鍼連携神奈川」というネットワークに参加して鍼灸との連携もとっていますが、すべてのきっかけとなったのはマクロビオティック、いわゆる食事療法です。
 現代医学は人間に本来備わっている自然治癒力を抑えてでも、科学の力で病気を治療しようとします。しかし、自然治癒力なしには病気を治せないことは明らかで、これに対抗するような治療は、大きな矛盾をはらんでいると言えるでしょう。この自然治癒力を引き出す治療こそ食物療法であり、マクロビオティックだと私は考えています。医療と食事はその源において同じであるとする「医食同源」や、身体(身)と環境(土)は不可分で、大地に調和し、土地の実りを摂り入れてこそ人は健康に暮らせるという「身土不二」という考え方があるように、食べ物による病気治療は昔からあり目新しいものではありませんが、私は食事療法にこそ、医学のあるべき道を見ています。
 食養生には体質を知ることが欠かせません。自身の体と向き合い、自分に不必要なものをそぎ落としていく「引き算」の考え方が食養生の基本です。マクロビオティックから中医学、鍼灸と興味の赴くままに学んできましたが、それらの本質が目指すものは共通です。「医学」ではなく「患者」本位の医療、つまり人が中心にある治療です。

病気と向き合う患者自身を手助けする立場で

 当院が標榜しているのは内科、小児科ですが、メンタルヘルスエキスパート産業医として地域産業保健センターと連携し、メンタル不調の方の復職面談なども担当している関係からか、心療内科分野での診療を希望される患者さんも多数いらっしゃいます。小児のチック、思春期のうつ状態などのご相談を受けることもよくあります。そうしたメンタル不調の患者さんに、病気との向き合いかたをお伝えすることはできますが、患者さんに代わって病気と向き合うことはできません。患者さんご自身が病気とその原因に向き合うことによってはじめて、精神の不調を快方へと向かわせることができると考えています。
 精神不調の治療においても、中心にあるのは患者さん自身です。われわれ医師にできることは、患者さんが目を背けてしまっている病気の本当の姿と、その原因と向き合うことの手助けをするだけ。それ自身と向き合わない限り、どんな良薬を口にしても、病が消え去ることはないのです。
 西洋医学に加え、中医学に基づく漢方治療、鍼灸、マクロビオティックと、当院では患者さんが病気と向き合う手助けをするツールは、幅広くご用意しているつもりです。

縁ある人に誠心誠意向き合うのみ

 診療に際して最も大切にしていることは、「患者を癒す」「患者を助ける」などと思い上がらないということです。「医師は癒す人、患者は癒される人」という視点は、医師の進歩を妨げる悪影響しかないと思うのです。日々進化する西洋医学や、長い歴史を持つ中医学、鍼灸などの治療方法では、医師一人の一生ですべてを身につけることは難しく、一生勉強が必要です。治療によって人助けをしているなどという自惚れは、勉強への意欲を削いでしまうと私は考えています。
 当院を訪れる患者さんは、縁あって治療にいらっしゃるもの。そうした縁ある人に、その瞬間の私にとっての誠心誠意で向き合うことこそ、目指すべきゴールだと思っています。「病気を治してやる」とか「人助けをしよう」と考えることなく、また、差別や区別をすることなく、すべての患者さんに平等に対応することを心がけています。

取材・文/岡田 幸子(Sachiko Okada)
フリーエディター・フリーライター。女性誌編集部より独立後、医療、健康、美容から生活、教育に至るまで、おもに女性に関わる幅広い分野の情報を取り扱う。

松瀬医院

医院ホームページ:http://www.matsuse-iin.com/index.html

京急本線「能見台」、「京急富岡」の各駅より徒歩20分。横浜市金沢区富岡西に広がる住宅街のなか、「富岡第5公園」近く。先代から続く、地域に愛される医院です。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、小児科

松瀬観翁(まつせ・かんおう)院長略歴
1985年 金沢医科大学卒業
1999年 松瀬医院院長



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