第27回 生命誕生の根源に関わりたい
[クリニックインタビュー] 2009/07/17[金]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第27回
とくおかレディースクリニック
徳岡晋院長
生命誕生の根源に関わりたい
私は医者を主人公にしたドラマや漫画に憧れ、「人の役に立ちたい」と思って医者を目指すようになりました。中学生のころです。人間の生と死に関わる、やりがいのある仕事というところにも魅力を感じました。フィクションの世界では、外科がとりあげられることが多かったので、私も最初は外科医になりたいと思っていました。
大学で産婦人科の勉強を始めたのは、癌の治療からお産まで、他の科に比べて幅広い勉強ができるところがいいと思ったからです。それにさまざまな専門のなかでも、“誕生”をあずかるのは産婦人科だけですから。母校である防衛医科大学の永田一郎前教授、古谷健一現教授という二人の恩師の薫陶によるところも大きかったです。その後、さらに細かい専門課程に進む段階で、生殖内分泌の研究を選び、やがて生命誕生の根源にまで関わる不妊治療に専門的に携わるようになりました。
不妊治療の成功のために

ラボ=培養室。受精卵を預かる「当院で最も神聖な場所」と言われる部屋がココ。

「卵子」を取り出すための採卵針。


このクリニックを開いて3年7ヶ月がたちます。今では不妊治療の患者さんが大半ですが、開設当初は不妊症の患者さんはほとんどいませんでした。それまで勤めていた木場公園クリニックは、完全に不妊症専門でしたから、その違いに愕然としましたね。みなさん雑誌やインターネットなどで実績を調べて病院を選びますし、長くても2年以内に結果がでなければ、他の病院に移ってしまいます。不妊症の治療は、妊娠できるかできないかという結果がすべてなんです。
不妊症の治療には、年齢が非常に重要です。マスコミで有名人の不妊治療が話題になるときは、たいがい「高年齢で出産できた」という点がクローズアップされますが、それで簡単なことだと誤解されるのが心配ですね。その人たちはおそらく相当な時間や費用をかけていると思いますよ。女性の場合、35歳を過ぎると原因不明の不妊症が格段に増えます。今は結婚しても仕事を続ける女性が多いですが、妊娠・出産については早いほうがいいというのは事実です。そのためには社会のサポートも欠かせませんけどね。
短期間で結果を出すには、男性側の診察も必要。先に女性がさまざまな検査を受けて、異常なしという結果が出てから、あらためて男性の検査を始めるというパターンがよくありますが、それでは時間がもったいない。的確な治療をするためにも、できるだけご夫婦一緒に検査を受け始めてほしいです。最近はブライダルチェックを受ける男性も増えてきましたね。
医師としての喜びを感じる時は、やはり患者さんが無事にご懐妊されたときです。不妊治療は生命の根源に関わる、とてもやりがいのある仕事。胚培養士など医師以外にも必要とされる業種がありますから、もっとこの道を目指す人が増えてほしいですね。患者さんそれぞれの人生に役立つばかりではなく、社会貢献にも繋がるのが不妊症治療です。日本では少子化が問題になっていますし、やはり赤ちゃんが生まれること、子供が元気で育つことが、社会を豊かにしていくと思います。
患者さんを想ってのスタッフ育成
不妊症の治療にくる患者さんはみなさん切実な気持ちを抱えていますから、どうしても気軽に病院に訪れるというわけにはいかないですよね。内診台に上がることには抵抗があるでしょうし、「痛いことをされるんじゃないか」というような恐怖感もあると思います。そこで、治療の実績を上げると同時に、そういった不安をやわらげて、できるだけ敷居の低い、入りやすい医院にしたいと考えました。内装もピンクを基調にして、柔らかく優しいイメージにしています。診察にあたっては、患者さんそれぞれの希望に沿った治療ができるように、またストレスや不安を少なくできるようにコミュニケーションを大切にしています。
患者さんの人数は、一番多い金曜日で150人くらい。他の曜日は100人くらいです。やはり忙しいですから、スタッフ全員のチームワークがとても大事です。卵を扱う胚培養士、医療事務スタッフ、看護師、臨床検査技師にいたるまで、それぞれがそれぞれの働きをしてくれないと、とてもやっていけません。患者さんから、医師だけではなく、スタッフの対応が良かったと言われるように、そこはとても気をつけています。
患者さんが増えれば、どうしても私自身が1人の患者さんにさける時間は減ってしまいます。その分、他のスタッフの役割が重要になります。正確な知識を身につけるよう、患者さんの気持ちを汲み取ってお話できるよう、しっかりとした教育指導をして常にトレーニングするように努めています。
家族のサポートのおかげで今がある
ぜんぜん健康維持には関係ないんですが、趣味は映画鑑賞です。家でDVDを見ることもあれば、家内と映画館に出かけることもあります。邦画が多いですね。監督や俳優で選ぶというよりは、そのとき話題になっているものや、内容紹介を見て選んでいます。あとはたいそうなものではないですが、ガーデニングをしています。このように、自分の健康のために取り立ててやっていることはないんですけれども、なぜか院長になってからは風邪をひかなくなりました(笑)。
振り返れば、クリニックを開設してからの困難な時期に、クリニックのマネージメントを担当するマネージャー兼事務長でもある家内はよくサポートしてくれました。共働きですから、子供もずいぶん我慢してくれて、大人になったと思います。そうしたことで家族の団結は強くなりましたよね。
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。
とくおかレディースクリニック
医院ホームページ:http://www.tokuoka-ladies.com/

二人目を希望して、子供連れで通院する患者さんのためのキッズルームも。東急東横線「都立大学駅」近く。目黒通りの交差点を渡ってすぐ。詳しい道案内は医院ホームページから。
診療科目
内科・産婦人科・不妊症治療(男女)
徳岡晋(とくおか・すすむ)院長略歴
昭和63年 防衛医科大学校附属病院にて臨床研修
平成2年 自衛隊中央病院(三宿)産婦人科勤務
平成5年 日本産婦人科学会認定医取得
平成7年 防衛医科大学校医学研究科(医学博士取得課程)入学
平成11年 『子宮内膜症における腹腔内免疫環境の検討』にて学位(医学博士)取得
平成12年 木場公園クリニック (不妊症専門) 勤務
平成17年11月1日 とくおかレディースクリニック開設
■所属学会
日本産婦人科学会(専門医) 、日本生殖医学会 、日本受精着床学会 、日本内分泌学会、エンドメトリオーシス研究会
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