[クリニックインタビュー] 2009/07/31[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第28回
あじさい診療所
笠原三津子院長

自分の手で手術し治すことが、外科医のやりがい

ajisai_01.jpg 自分自身ではあまりきっかけを意識したことはありませんが、医師を目指したのは、いとこや祖父の兄弟など、親戚に医師が多かったことが影響したとは思います。今思うと、小さい頃から両親や祖母に、医師になるよう刷り込みをされていたのかもしれませんね。それでも小学生くらいの頃は、まだ将来の職種についての具体的なイメージがほとんどなくて、「アナウンサーになってみたいな」など漠然と考えていました。高校生のころには、文系ではなく理系の勉強がしたいと心に決めていたので、そこから自然な流れで薬学や医学を志すようになりました。
 大学の5、6年目に各科の臨床実習があって、そこで一通りの科をまわるんですが、そのとき私が一番惹かれたのが外科でした。当時の私には、自分の手で手術をして病気を治すというのが、直接的でやりがいがあると思ったのです。

きっかけは上司のテレビ出演

ajisai_04.jpg 医師になった当初は消化器外科・乳腺外科の両方に携わっていました。駿河台日大病院に勤務しているころ、私の上司が乳がんの専門家としてテレビで紹介され、全国から乳がんの患者さんが殺到するようになったんですね。そのため私も毎日たくさんの乳がんの患者さんに接するようになりました。そのなかで患者さんたちの、女医さんに診てもらいたいというニーズも理解するようになりましたし、私自身も乳がんの患者さんの力になることにやりがいを感じるようになりました。乳腺外科を中心にやっていこうと思うようになったのは、あのテレビでの紹介が大きなきっかけですね。
 自分の診療所を持とうと思ったのは、父の影響がとても大きいですね。父は小さいながらも自分の会社を持っていて、75歳の今でも現役で働いています。病院の定年が60歳くらいとすると、定年後に再就職先を探すよりは、自分の医院を持ってしまったほうが、自分のペースで長く自由に働いていけると思ったんです。もっと慎重に計画をたてる人だったら、かえって診療所を作るなんて無謀なことはできなかったと思います。私は楽観的なんですよね(笑)。養わなくてはならない家族もいないので、自分さえ食べていければ、なんとかなるかなと思ってはじめてしまいました。

地域の皆さんに信頼される医師でありたい

ajisai_03.jpg 診療所を開設するにあたって考えたのは、できるだけ患者さんにとって親しみやすく居心地のいい場所にしたいということでした。診療所の名前は最初に「花の名前にしよう」と思ったんです。それも日本らしい花。誰でも知っている身近な花ということであじさいを選びました。
 あじさいの花言葉でよく知られているのは“移り気”なので、あまり良い言葉ではないと反対する友人もいましたが、“強い愛情”とか“元気な女性”とか良い意味の花言葉もあるので、私はそちらだけ見ることにしたんです。しかも「あじさい」は50音順の名簿やインターネットの検索で、最初のほうに出てくるので気に入っています(笑)。
 内装やインテリアも自分で選びました。とくに気に入ってるのは天井に使った壁紙です。壁紙を見に行ったときにたくさん並んでいるなかから「これいい!」とすぐに目にとまったんですが、これをこのまま壁に貼ったら、ちょっとしつこい。それで天井に使ったらちょうどよくはまってくれたんです。ときどき患者さんにも褒めていただけて、我ながらこれはヒットでした。
 患者さんに対して気をつけているのは、専門用語などを分かりやすく伝えることと、なるべく明るく接することです。私はこの町で生まれ育ったので、地域の皆さんに信頼される医師でありたいと思っています。男性女性にかかわらず、風邪やきり傷など、ささいなことでも気軽に訪れることができるような、診療所にしていきたいですね。

スキーと音楽でリフレッシュ

ajisai_02.jpg 特別に身体のためにしていることはありませんが、病気らしい病気をしたことがないのは、趣味のスキーで身体が鍛えられているからかもしれません。学生時代は10月くらいからシーズンが始まって、冬の間はもちろん、ゴールデンウィークもこえて、7月・8月は立山連峰のあたりまで、年に40日くらい行ってましたね。今でも年末年始には必ず行きます。
 それと音楽が好きなのでコンサートに行くのも楽しみです。ユーミン(松任谷由実)とか、マッキー(槇原敬之)とか好きですね。でも病院に勤めていた頃は仕事が不規則だったので、何ヶ月も前にチケットを買っていても、当日行けなくなることが多かったんです。友だちと2人で行く約束をして私が急に行けなくなったら申し訳ないので、必ず3人以上と約束するようにしていました。最近は急患もありませんし、土日もシフトを組んで休みが取れるようになりました。
 実はこの診療所を開設してから自分のお給料を出したことないんです。ずっと無給(笑)。実家に住んでいて家賃や食費がかからないから、なんとかなっている状態ですね。だから収入だけを考えれば、病院に勤務していたほうがずっと楽だったんですが、「一生この状態が続くわけじゃない」と思って頑張っています。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

あじさい診療所

医院ホームページ:http://www.ajisai-clinic.net/
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ベージュのインテリアと花柄の天井が優しい雰囲気。東急池上線荏原中延駅から徒歩5分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

乳腺疾患、胃腸疾患、肛門疾患、一般外科疾患、一般内科

笠原三津子(かさはら・みつこ)院長略歴

笠原三津子院長

平成6年3月 日本大学医学部卒業
同年より日本大学第3外科学教室にて研修
平成13年 日本大学医学部大学院卒業
日大板橋病院、駿河台日大病院、光が丘病院、その他の病院に勤務
平成20年 あじさい診療所開設

■所属学会など
日本外科学会認定専門医、日本消化器外科学会会員、日本癌治療学会会員、日本乳癌学会会員、検診マンモグラフィー読影認定医


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