[クリニックインタビュー] 2009/08/21[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第30回
両国眼科クリニック
内野美樹院長

顕微鏡下手術の魅力に惹かれて

ryogoku01.jpg 私は父の仕事の関係で3歳から8歳までをフィリピンで育ったんです。そこで貧しいために満足に医療を受けられない人たちの姿を見る機会があり、その人たちを助けたいと思ったことが、私が医者になる最初の目標でした。国境なき医師団に入って、世界中の人を救いたいという夢があったんですね。でも中学校、高校ではバスケットボールに夢中になって、将来は体育の先生になりたいと思うようになっていました。
 そしてもう一度、医者になりたいという思いが復活したのは大学受験のときです。私の親友が医師を目指していたんですね。その姿を見ていて、私もかつての夢を思い出し、一緒に医学部を受験する決心をしたんです。
 大学6年生のときに顕微鏡下手術――マイクロサージェリーの面白さというのを体験して、眼科に進みました。白内障など、眼科の手術ってミリ単位の世界なんですよ。肉眼で手術するのは不可能です。それが顕微鏡を使うことによって、20cmから30cmくらいものを扱う感じになるんです。だから非常に細かいものを扱っているのに、感覚としてはとてもダイナミック。そういうところに魅力を感じました。

患者満足度一位の実績を活かして

ryogoku02.jpg この両国眼科クリニックは慶應義塾大学医学部眼科学教室教授の坪田一男先生がグループ開業という形で開きました。私にとっては「ボス」のような方です(笑)。彼は両国出身なんですね。それで大学病院だとあまりにも待ち時間がかかるので、地元の人々にもっと身近な眼科を作ろうということで始められました。そのうち院長をやってらっしゃった先生が自分のクリニックを開業することになり、その前年度、慶應大学の大学病院で行っている「患者満足度調査」で一位だった私が、坪田先生に院長後任として指名されました。慶應大学病院眼科では約2週間の調査機関のみ医者全員にナンバーが振り分けられ、診察内容、態度、診察の質、待ち時間などを患者さんがチェックして得点化されるんです。
 院長後任の話がでた頃の私は産休中。まだ2ヶ月か3ヶ月の赤ちゃんを抱えていたので、迷いはありましたが、以前から私の旦那がここで診療のお手伝いさせていただいるというご縁もあったので、お引き受けすることにしました。
ryogoku03.jpg こういう経緯ですから、他の開業医のお医者さんとは少し変わっているかもしれませんね。私が院長になったときには、すでに施設、機材、スタッフなどがすべて揃っていたのは楽だったと思います。ただそれを私自身のスタイルで運営するためには努力が必要でしたね。例えば患者さんは目を患っているのですから、院内で転んだりすることのないよう、待合室から診察室に移動するときに、かならずスタッフがつきそうように徹底したり、待ち時間を少なくするために、診察中に私が話した病名や治療薬をすべてパソコンに入力しておいてもらうというようなことです。そうした自分の求めている形をスタッフのひとりひとりにお願いするのが、一番大変だったかもしれないですね。

「人と人」として接する医療が大好き

ryogoku05.jpg 院長に就任してから3年が経ち、スタッフからの意見を取り入れたりもしながら、今では大学病院にいた頃よりも、さらに患者さんに満足してもらうために、自分の理想的なシステムで運営できるようになっていると思います。私たちは検査の流れや事務業務を極力効率化することで、待ち時間を少なくしていますし、大学病院のように決められた薬や治療しか使うことができないということがなく、新しいものがよりよいと思えば、自分の力で取り入れることができます。日帰りで角膜移植術や白内障手術ができるだけの技術や設備も整ってますし、医療の質的にも私は大学病院に劣っていないんじゃないかと思っています。

ryogoku04.jpgマイクロサージェリーの機器

 診察にあたって心がけているのは、患者さんの不安や困っていることをきちんと受け止めて、それをひとつひとつ丁寧に解決してあげようということ。患者さんは診察室では緊張してしまって、症状などを上手く伝えられない人もいますよね。でも待ち時間を少なくするためには診察時間に限りがあります。ですから私たちは患者さんが診察室に入る前に、スタッフによる問診を行って、患者さんの状態をできるだけ把握するようにしています。ちょっとしたことでも、気軽に診察を受けていただいて「今日は眼科に行ってよかったな」と思ってもらえると嬉しいです。
 音楽をやっている患者さんから「今度コンサートに来てください」とパンフレットを持ってきてくださったり、ご自宅でとれた紫蘇や、手作りの煮豆をいただいたりすることがあるんですよ。大学病院ではどうしても「医者と患者」という関係に終始してしまいますが、そういった「人と人」として接することができる下町の雰囲気が大好きです。

プライベートは子供中心

 趣味は料理と、最近は絵画の鑑賞に凝っています。村上隆さんが率いているカイカイキキというアーティスト集団がありまして、そのなかでも坂千夏という方が好きなんです。学生時代はバスケに夢中でしたし、サーフィンやアウトドアも好きでしたが、今はスポーツはやらなくなってしまいました。マイクロサージェリーの手術は両手両足を使うんですね。足もフットペダルの操作をするんです。休日にスポーツをして怪我をしてしまったら、手術ができなくなってしまいますから。
 健康法は良く食べてよく寝ること。子供と一緒に夜9時半には寝てしまう(笑)。子供は3歳と1歳の2人います。医者と医者の夫婦なので、自宅でも医療の話がでてくることはあるんですが、私たちが子供たちと会える時間は朝と夜のわずかな時間なので、その時間だけは、医者ではなくパパとママでいようと心がけています。クリニックや患者さんの話がしたいときは、子供たちが眠ってからするようにしています。学会で国内や海外に行くときも、子供たちを連れて行って、できるだけ長い時間一緒にいられるように心がけています。私生活では本当に子供中心ですね。
 実は以前は取材のお話はすべてお断りしていたんですよ。最初は周囲からの「どんどん表にでるようにしなさい」という勧めに従った形でしたが、最近は自分でも積極的にお引き受けするようにしています。子供たちが大きくなったときに、私の出ている記事などを見て「お母さんはこういう仕事をしていたんだ」とわかってもらえたら、すごく嬉しいと思います。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

両国眼科クリニック

医院ホームページ:http://www.ryogoku.or.jp/
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外光の入る明るい待合室。角膜移植、白内障の手術は日帰りで行えるとのこと。JR総武線両国駅東口より徒歩3分。詳しい道順はクリニックホームページから。

診療科目

眼科手術全般、眼科外来診療全般、コンタクトレンズの処方と定期検査

内野美樹(うちの・みき)院長略歴

内野美樹院長

平成13年山梨大学医学部卒業、慶應大学眼科学教室入局。
立川共済病院及び国立埼玉病院を経て、平成15年より慶應大助手となる。
専門はドライアイと白内障手術。



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