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[クリニックインタビュー] 2009/08/28[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第31回
北綾瀬皮膚科
山尾浩行院長

銀行員から医師の道へ

kitaayase01.jpg 医者というのは仕事に迷いがありません。つまり、勉強して知識を得て、患者さんを治すという目的がはっきりしている。私は医者になる前に、大学の経済学部を卒業して銀行に就職したんです。そこで数年働いているうちに、仕事へのモチベーションを失ってしまった。与えられる仕事にやりがいを感じられなかったり、取引の過程で損をするお客さんを見ているうちに、自分が誰のために、何のために仕事をしているか分からなくなってしまったんです。それにくらべて、医者の場合は、知識や技術面のトレーニングを積んで、自分自身を向上させることが、そのまま患者さんのためになる、というところに惹かれました。
 そこでいったん故郷の広島に帰り、医者になるための勉強を始めました。他の学部を卒業してから医学部に入りなおすという人はけっこういるんですよ。ただ、そのほとんどは理系の出身者で、私のように文系からの転向は珍しかったですね。大変ではありましたが、まだ20代で若かったからやりとげることができたんだと思います。
 大学の同窓会に行くと、いろいろな科で働いている先生たちに会いますでしょ。そこでそれぞれが自分の分野の最前線で頑張っているのを見ると、やっぱり医者はすごくいい仕事だと思いますね。

地域医療だからできること

kitaayase02.jpg 皮膚科に進むことを決めたのは、大学を卒業して医局に入るときです。学生時代にベッドサイドトレーニングでいろんな科をまわりまして、興味をもちました。皮膚科の面白いところは病理検査ですね。普通は患者さんがきたら、臨床の先生による診断があり、その後に細胞を採って病理検査専門の先生が病気を確定するんです。ところが皮膚科の場合は、臨床の先生が病理検査もできなくてはいけない。臨床と病理が一体になっているところが面白いと思います。
 いくつかの病院で勤務しているうちに、やがて自分のクリニックを開設して地域医療に力を入れたいと思うようになりました。当院に訪れる患者さんはバランスがとれてると思います。お子さんがたくさんいらして、若い人もいて、お年を召したかたもいらっしゃる。診察の内容はごく普通の皮膚科ですよ。湿疹とかイボとかアトピーとか皮膚感染症とかですね。
 それから小手術を行っていますので、手術患者さんも多いです。粉瘤、ほくろ(色素性母斑)、巻き爪などは簡単な手術で治療できるのですが、近隣の皮膚科ではあまりされていないようです。大病院の皮膚科で一番近いところは、慈恵医大青砥病院、尾久の東京女子医大東医療センターでかなりはなれていますし、忙しい患者さんにとって診療時間の短いそして待ち時間の長い大病院にいくのは負担でしょう。勤務医の先生も激務でしょうし、当院では予約を入れてさっと手術しますから、その点では役に立っているのではないでしょうか。

大切なのは患者さんの疑問を感じ取ること

 診察のときには非常に分かりやすく説明することを心がけています。病院に行って、お医者さんの話を聞いても、自分の疑問点がはっきりしないことがあるじゃないですか。患者さんが聞きたいと思っていることに対して、答えがズレていたり説明がわかりにくいことがある。そういうことのないように、患者さんが何を聞きたいのか、何を不安に思っているのかをよく感じとって、それに対してわかりやすく説明するようにしています。
 皮膚科の開業医での診療は、基本的に軽い病気が多いです。命にかかわるような病気はあまりない。ところがまれに、入院して検査治療が必要な重症の患者さんも必ずいます。そういう症状をすばやく見抜いてスムーズに専門病院に紹介し、無事に治療できたときは嬉しいです。
 難しいのは、臨床診断つまり経験を積んだ目で見ても診断の迷う腫瘍、疾患のときで、実は皮膚科ではよくあることです。切除して細胞を調べる病理検査をするのですが、それを当院でするか、あるいは最初から専門病院に紹介するか迷うことはよくあります。うちで手術をし、病理検査をしたところ、少し悪性のものであわてて拡大切除したというケースもありまして、いまでははっきりしないものは専門病院に紹介するように徹底しています。

高齢化社会を見据えて

 自分自身の健康維持のためにはゴルフやスポーツクラブなどの運動と、あとは体重維持に気をつけています。健康のためには車も使わないほうがいいんですが、自宅からクリニックまで電車をつかうと、えらく時間がかかってしまうので、ついつい自動車通勤になってしまいます。同年代の医者と話をすると、たいがい運動不足を気にしていますよね(笑)。
 最近、よく考えているのは、どうしたら診察の待ち時間を短縮できるかということです。予約制を取り入れたり、試行錯誤しています。
 また、今後クリニックで力を入れていきたいのが、高齢の方のフットケアー。糖尿病の患者さんは水虫が引き金になって潰瘍や壊疽になることがあります。また、たこや魚の目、巻き爪が痛くて歩くのが難しくなったり、静脈瘤や外反拇趾などを専門クリニックへ紹介するなど皮膚科でケアーできることはたくさんあります。この近辺もこれからどんどん高齢化が進んでいくでしょうから、必要なことだと思っています。例えば、若い方には想像できないかもしれませんが、年をとると自分で足の爪を切るのも困難になるんです。一緒に暮らしている家族もなかなか目の届かない部分ですから、それで困っている人はたくさんいます。そういうときに足の爪を切るだけでもいいので、気軽に来院してもらえればフットケアーのスタートになって患者さんのQOLを高めることができるでしょうね。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

北綾瀬皮膚科

医院ホームページ:http://www.kitaayase-hifuka.com/
kitaayase05.jpg kitaayase03.jpg.jpg kitaayase04.jpg
グリーンを基調にした、さわやかな待合室。診察室の片隅には山尾院長のお嬢さんが描いたパパの似顔絵も。
千代田線北綾瀬駅より徒歩2分。詳しい道順は医院ホームページから。

診療科目

一般皮膚科、皮膚科小手術、美容皮膚科

山尾浩行(やまお・ひろゆき)院長略歴

山尾浩行院長

広島大学医学部卒業
東京大学医学部皮膚科学教室
日赤医療センター勤務
虎ノ門病院皮膚科にきび外来非常勤などを経て開業



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