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[クリニックインタビュー] 2009/09/04[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第32回
大川こども&内科クリニック
大川洋二院長

医師になることばかりを考えていた子供時代

ookawakodomo01.jpg 医者を目指したのは、病気の人たちを早く楽にしてあげたい、そういった気持ちからかなぁ。もうずいぶん小さい頃からですね。小学校低学年くらいだったかな。僕は生まれは九州ですが、3歳の頃からこの近辺に住んでいます。実は父は歯科医で、父の医院もこの場所にあったんですよ。父の影響で、医療に携わりたいと思うようになりましたが、歯科医よりも全身を診る医者になりたいと思ったので、医学部に進みました。医者以外の職業は考えたことがありませんでしたねぇ。どうやったら医者になれるのか、そればかりを考えていましたよ。
 父は毎日朝の4時ごろから、夜の11頃まで働いてました。このクリニックも原則、年中無休。日曜・祭日も開いています。父を見て医者が休みなく働くのは当たり前だと思っていたので、僕も同じスタイルを実行しているだけですね。
 大学に入った時点では脳外科に行こうかとかいうことも考えましたが、やがて技術を長く使えるのは内科だな、と思うようになりました。そして、お医者さんというのは皆、病気を治して患者さんを元気にする仕事だけれども、子供や赤ちゃんはそれから、50年も100年近くも人生が続くわけですよ。自分が元気になるお手伝いをした患者さんが、その先もずっと活躍されるというのは嬉しいことだなと考えて、大学を卒業する頃には小児科医になる決心をしていました。

高度先進医療に携わり

ookawakodomo02.jpg 医師になって10年目ぐらいの時に、大学からのローテーションで中野総合病院小児科の医長を務めました。当時、小児科としては画期的だったと思うのですが、365日当直の医師を置くなどを実行して、一年で患者さんの数が倍以上に増えました。やはり病院は24時間休みなく患者さんを受け入れるのが当たり前なんですよ。ほとんどの人はそういう熱意を持って医師になります。そうじゃない人は医師に向いてない。ただ、残念なことに劣悪な労働環境や低賃金のせいで、その熱意が低下してしまうこともあるんですね。社会ではお医者さんはみんなお金があると言われることが多いけれど、勤務医の給料なんてとんでもなく安いですからね。中野の病院でも当直医を増やすために、給料を上げるよう院長にかけあったりして、医師の待遇を改善する努力もしていました。僕が熱意を失わなかったのは……鈍感だからかな(笑)。
 大学病院では免疫不全症や癌の研究をしていましたから、北海道や九州など全国から来る患者さんを診察していました。アメリカのコロラド大学では癌遺伝子の研究で、これらは全部関連しています。お子さんの亡くなる原因で一番多いのは不慮の事故ですが、2番目は癌です。小児科医で癌を研究している医師は非常に多いです。自分のクリニックを開設しようと思ったのは、大学病院を辞める2年くらい前ですね。優秀な研究者がたくさん出てきたので、ここは彼らに任せて大丈夫だろうと思ったんですね。

「自然に治る力」の邪魔をしない医療を

夢のあるイラストが一面に描かれた待合室の壁。夢のあるイラストが一面に描かれた待合室の壁。

 クリニックを開設して今年で10年になります。小児科として建物を作り直すときに工夫したのは、まず院内感染を防ぐために、感染症の患者さんの専用出入り口と待合室を作ったことです。さらに病気の人と、(予防接種での来院など)病気ではない人を分けるために、待合室を3つ作りました。空気清浄機もしっかりしたものを設置しています。
 開設した頃も特に苦労というのは感じなかったですねぇ。苦労というよりも、大学病院に勤めていた頃とは、診る病気が違うので、いかに患者さんの身になって治療をするかというのを学ばせてもらいました。というのは、大学病院にくる患者さんは、なんとかしないと亡くなってしまう患者さんばかりだったのが、開業すると自然に治る病気の患者さんが多くなるんです。ですから、子供たちの持ってる病気を治す力を邪魔しないように治療をするというのが一番ポイントになってくるんです。すなわち無駄な薬は出さない。無駄な薬の大部分は抗生剤です。世の中には必要のない方に抗生剤を出す先生もいらっしゃるようです。
 人間の身体は細菌と共存しています。免疫の働きには腸の細菌が重要な役割をしているのですが、無駄な抗生剤を使うと、その細菌までいなくなって抵抗力がなくなります。それから、本来なら少しずつ体に入り込んだ時に、免疫によって自然に駆除されるはずの細菌が、不要な抗生剤を使うことによって、薬のきかない耐性菌になってしまう。また、体の中の細菌がなくなることでアレルギー疾患になりやすい。そういった理由で、僕はできるだけ抗生剤は使わないようにしています。その方針で続けてきて、患者さんが減ってないところを見ると、自分のやっている医療は間違ってないんじゃないかと思いますね。

子供たちの心もケアするために

診察室の机にたくさんかざられている絵や工作は子供たちからのプレゼント。診察室の机にたくさんかざられている絵や工作は
子供たちからのプレゼント。

 今は子供さんの感染症、インフルエンザを治すことに全力をあげています。病院のなかには、感染症の患者さんの治療拒否するところもありますが、僕はどんな患者さんも分け隔てなく受け入れるというのが基本方針です。
 それから不登校とか多動とか自閉症だとか、そういった子供たちを何とか救いあげたいという思いがあります。そこで週に3回は1人あたり30分くらいかけて診察する「じっくり外来」というのを設けて、僕のほかに臨床心理士さんと一緒に、心の病気にかかった子供たちの精神的なバックアップに取り組んでいます。
 自分自身の健康のためには毎日昼休みに多摩川の土手を走っていますよ。1日10キロくらい走ります。僕は陸上部出身なので、先週も卒業高校のOB戦で1500メートル走に参加してきました。ハーフマラソンもやりますし、東京マラソンも出たいんだけど、あれはいつも抽選で撥ねられる(笑)。走ることで体を鍛えるだけではなく、ストレスの解消にもなってます。すごく神経を使う職種だから、わーっと肉体を動かしてくたくたになるほうが、精神的なバランスがとれるみたいですね。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

大川こども&内科クリニック

医院ホームページ:http://www.ocfc.jp/shinryo.html
ookawakodomo08.jpg ookawakodomo07.jpg ookawakodomo06.jpg
病気の子供を預かる病児保育室。部屋の隅々まで死角のないよう工夫が凝らされている。
東急多摩川線矢口渡駅前すぐ。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

小児科、内科、アレルギー科

大川洋二(おおかわ・ひろじ)院長略歴

大川洋二院長

昭和51年04月 東京医科歯科大学医学部小児科入局研修医
昭和61年01月 中野総合病院小児科医長
昭和62年10月 東京医科歯科大学医学部小児科助手
平成02年04月 東京医科歯科大学医学部小児科講師
平成02年09月 アメリカコロラド大学小児科文部省在外研究員
平成04年02月 東京医科歯科大学医学部小児科助教授
平成06年04月 東京大学医科学研究所内科講師(兼任)
平成12年03月 大川こども&内科クリニック開設
平成20年05月 東京医科歯科大学医学部臨床教授

■役職等
東京医科歯科大学医学部臨床教授、東邦大学医学部客員講師、日本小児科学会 代議員、臨床血液学会評議員、日本小児血液学会評議員、日本小児がん学会評議員、日本小児科医会編集委員長、東京小児科医会理事(広報担当)、日本クリニクラウン協会理事



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