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[クリニックインタビュー] 2009/10/02[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第36回
こばやし歯科クリニック
小林裕直院長

人の嫌がる仕事をやろう

kobayashi_dental01.jpg このクリニックを開設したのは1999年、大学を卒業してから6年目です。歯科医は卒業後2~3年で開業する人もいらっしゃるので、特に早いほうではないと思います。それだけの歯科医が開業しているので、特に都市部では歯科医院の数が過剰といってもいいくらいです。その一方で人口の減少など、さまざまな要因で患者さんが減っているので、歯科医にとっては厳しい時代だと、僕が学生時代のころから言われていました。しかし僕自身は、そうした状況のなかでも、患者さんが心から満足できる医院であれば生き残っていけると思っていましたから、開業することに対して不安はありませんでした。
 開業するためには、まず場所を探しました。お年寄りの事を考えて建物の1階であること、駅の近くであることを条件に探していましたが、都内の駅周辺のほとんどは、すでに歯科医院があるのです。この場所は、当時すでに歯科医として開業していた友人が見つけて、紹介してくれました。このあたりは僕自身も車でよく通りがかって馴染みがあったので、すぐに決めました。
 そうは言っても周辺には地元に根付いた古くからの歯科医院があったので、新参者の僕が、はたして受け入れてもらえるだろうか、、、と言う不安もありました。そこで、とにかく患者さんに来てもらおうと僕が考えたのは「他の歯科医が嫌がる仕事をやらなくてはいけない」ということで、日曜日と平日夜9時迄の診療をすることにしたんです。今の世の中、歯医者に行くからといって、そうそう会社を抜け出したり休んだりすることはできないですよね。夜の9時まで開いていれば、会社で残業をしてからでも間に合います。最初のうちは、平日昼間の時間帯よりも夜間と日曜日のスケジュールが予約でいっぱいという状況でした。それが1年ほどたつうちに、平日の昼間も予約が入るようになりました。診療時間が都合がいいということばかりではなく、治療内容も評価していただけた結果だと思い、嬉しかったですね。
 「人の嫌がる仕事を率先してする」ということと「ありがとう、ごめんなさいの言葉を大切にする」ということは病院のスタッフにも常に伝えています。スタッフ同士でお互い助け合って、気持ちよく働くのが何よりです。たとえ個人としてどんなに仕事が速くて優秀でも、それは時計のなかの歯車がひとつだけものすごい勢いで回転しているようなもので、それによって周囲の歯車の動きが乱れてしまうようでは困ります。チームワークが上手くいっていれば、クリニック全体が穏やかな雰囲気になりますし、患者さんにもそれは伝わりますからね。

患者さんを自分の家族だと思う

スタッフの笑顔も患者さんの信頼を得るために大切な要素。スタッフの笑顔も患者さんの信頼を得るために大切な要素。

 僕は兵庫県の出身で、父は内科の開業医でした。親戚にも医者が多かったので、何がきっかけということもなく、いつの間にか自分も医者になると思っていました。物心ついた頃には、医者は人々のお役に立てるすばらしい仕事だと、ごく自然に考えるようになっていたので、特に周囲から強制されることもなかったですし、反発を感じたこともありませんでした。ただ、高校生の頃はミュージシャンを目指してバンドを組んだりしていました。医大へも進学せず、数年は別の仕事をしていたんです。
 しかし僕が19歳のときに父が亡くなり、父の病院も人手に渡り、いよいよ真剣に将来のことを考えなくてはいけないときになって、やっぱり医者になりたいという気持ちがよみがえってきたんです。子供の頃から憧れていた職業ですし、僕自身には少しも「後を継げ」などと言ったことのなかった父が、内心ではそれを望んでいたらしいということを父亡き後、母から聞いて、その想いに応えたいと思ったんです。さまざまな事情があって、父の病院をそのまま引き継ぐことはできませんでしたが、僕は物を作ったり手先の細かい作業をするのが好きなので、内科より歯科医のほうが合っていると思っています。
 父はよく「病は気から」という言葉を使っていました。それは医者の知識や技術だけが病気を治すのではなく、患者さんが医師を信頼して心から受け入れることによって、より効果的な治療ができるという意味です。自分が医療の現場に立つようになって、その言葉を実感するようになりました。いろいろな医師や病院を見てきて、その治療は本当に患者さんのためになっているのか? この病院で患者さんは気持ちよく治療を受けられるだろうか?と疑問に思うことが少なくありませんでした。ですから、自分のクリニックでは待合室や診察室の内装、受付やスタッフの対応なども含めて、治療以外のところも患者さんに信頼してもらえるように、「患者さんを自分や自分の家族だと思って診る」ということを念頭において診療にあたっています。
 尊敬している医師はUCLA歯周病科教授のヘンリータケイ先生です。昨年受講した明海・朝日大学とUCLAによるインプラント歯周病コースで教えを受けたのですが、この方は歯周病科の世界的権威であるにもかかわらず、温厚で人間的にもほんとうに尊敬のできる人格者です。経験や知識、技術に大きな差がある僕たち受講者に対しても、質問や意見に熱心に耳を傾け、真剣に応えてくれました。医師としてだけではなく、すばらしい教育者だと思いましたね。宴の席でお話させていただいた際に、しっかり僕の目を見つめて言ってくださった「You know you don’t know(自分が無知であるということを知りなさい。そして常に謙虚に学ぶ姿勢を忘れないことです。)」という言葉は、これからもずっと大事にしていきたいです。

自分の歯で美味しく食事ができるというゴールを目指して

kobayashi_dental04.jpg 患者さんが何か問題を抱えてクリニックを訪れるところがスタート、それ以上は治療の必要がないというところがゴールとすると、その間にはたくさんの道があります。しかしそのなかで、最短の道は実はいくつもないんですね。たとえば患者さんによっては「どうしても歯を抜きたくない」「神経は残して欲しい」「頻繁に診療を受けるのは面倒」など、さまざまな要望があります。しかし抜かなければいけない歯を残しておいては、他の歯にまで悪影響を与えるなど、患者さんの要望を受け入れることでかえってゴールから遠ざかるケースもあるのです。そういったときに、患者さんの考えを頭から否定するのではなく、ひとつずつ丁寧に説得して、その患者さんにとって最適な治療法を納得してもらえるように努めています。
 ほとんどの患者さんは、しっかり説明をすれば分かってくださいますし、その結果にも満足してもらえています。しかし、ときにはどんなに説明しても、こちらの治療方針を納得してもらえないこともあります。それで患者さんが他の病院に行くことになっても、それは仕方のないことだと思っています。僕たちには「本当に患者さんのためになる治療をしたい」という軸があります。診療方針に納得していただけない患者さんの言うなりになってしまっては、その軸がぶれてしまいます。僕のクリニックを訪れた100%の患者さんに満足してもらいたいと思っていますが、現実にはなかなか難しいところです。それだけに、こちらを信用して治療を受けてくれて、「食事が美味しくできるようになった」「痛みがすっかりなくなった」と笑顔で喜んでいただけるのは、本当に嬉しく、歯科医になって良かったとしみじみ思います。
 患者さんへの説明といえば、最近よく耳にする外国へのインプラントツアーは、そういう意味でかなり問題があるのではないかと思っています。確かに韓国などでは、日本の半額でできるそうですが、言葉の通じない外国で、たとえ通訳がいたとしても、十分なコミュニケーションができるとは思えませんし、アフターケアも万全とは言えないのではないでしょうか。

ブログを通じて患者さんに親しんでもらいたい

kobayashi_dental03.jpg 趣味はゴルフです。学生時代からサーフィンが好きで、海ばかり行ってましたが、さすがに体力的なこともあり、ケガをして診療に支障をきたしては問題なので、最近は海へ行く回数もめっきり減りました。ゴルフ場に行くのは月に2~3回ですね。仕事に支障がでない程度に(笑)地元の方や他の様々な業種の方とラウンドすることも多く、その殆どが自分よりも年配の方なので、仕事や家庭の事など、会話を通じてそこから得ることも多く、非常に有意義な時間でもあります。それと、昔バンドをやっていたのでギターは今でも弾くことがあります。8歳になる娘がピアノを習っているので、たまに家でセッションを楽しんでいますよ。
 2年ほど前からクリニックのホームページでブログを書くようになりました。それまで、日記もつけたことがなかったし、文章を書く習慣などなかったのですが、始めてみたらはまりましたね。話題は日常的なことがほとんどです。たまには医療のことや政治や社会ネタもありますが、基本的には家族と出かけた話や、美味しいお店に行ったことなど。ホームページを見にくる人は、「ここの病院はどんな先生がいるんだろう?」と考えていると思うんです。ブログを通じて僕の人となりを少しでも知ってもらい、気軽にクリニックを訪れていただきたい。クリニックに訪れる前の段階から、歯科に対しての敷居を低くしたいと思っています。患者さんから「ブログを見た」とか「面白かった」と言ってもらえるととても嬉しくなりますね。
 このクリニックも、もう少しで移転する予定です。移転先はすぐ目の前で今は工事の最中。「北区で歯医者に行くならここ」と認知されるくらいにしていきたいと思っています。一般歯科、インプラント、矯正、など歯に関することなら子供からお年寄りまですべての人に頼ってもらえるクリニックが目標ですね。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

こばやし歯科クリニック

医院ホームページ:http://www.yujikai.com/
kobayashi_dental_b03.jpg kobayashi_dental_b01.jpg kobayashi_dental_b02.jpg
診察の椅子はパーティションで仕切られ、開放的かつ隣の人が気にならないように工夫。待合室と受付。広くはないけれど、隅々まで清潔で温かみのあるインテリアになっている。
都電荒川線、梶原駅徒歩1分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

歯科、インプラント、矯正歯科、歯科口腔外科、小児歯科

小林裕直(こばやし・ひろなお)院長略歴

小林裕直院長

1994年 日本大学歯学部 卒業
1999年 こばやし歯科クリニック開設
2001年 医療法人社団裕慈会設立、宮の前歯科クリニック開設

■所属学会他
日本顎咬合学会会員、日本口腔インプラント学会会員、日本歯科保存学会会員、Camlog Academy会員



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